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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その145)ジョン・レノンのヴォーカルの魅力について(その7)

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【2】パワフルな楽曲部門(続)

3 マネー(続)

ビートルズは、1962年1月1日のデッカ・レコーズのオーディションでもこの曲を演奏しました。

ビートルズの伝記作家であるマーク・ルイソンは、彼の著書「Tune In」で、ジョンのこの時におけるヴォーカルについて、次のように記述しています。

「『(ジョンは)狂った男のようにマネーを歌った。』と語った。これは、彼がいつものように激しくシャウトしたことを表現したと、一般的には受け取られるだろう。しかし、本当に彼は、普通の精神状態ではなかったのだ。

ジョンは、この曲を大声で歌うには程遠く、無難に歌い、ぼんやりした状態で無人地帯に着陸して終わった。

レノンのソウル、エッジ、そして激しさはどこへ行ってしまったのか?... このテイクでは、ジョン・レノンの生涯で一度だけ、彼が臆病者であったかのように聴こえる。そして、その音源は、今日ここに存在するのだ。」

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確かに、ジョンのヴォーカルにしてはちょっと腰が引けた感じがしますね。強気で鳴らした彼も、生まれて初めて本格的なスタジオでオーディションを受けて緊張し、いつもの実力を発揮できなかったのでしょう。

しかし、1963年7月18日にEMIでレコーディングした時は、ジョンは、自信満々で臨みました。ちょうどファースト・アルバムの「プリーズ・プリーズ・ミー」における「ツイスト・アンド・シャウト」と同じ役割を期待されたのです。

彼は、オリジナルのキーであるFをEに下げ、激しくシャウトしました。そこへポールとジョージがコーラスを重ね、まるで雷鳴のようなパワーを与えました。

ジョンは、エンディングで「I wanna be free!(自由になりたい)」と心の底から叫びました。実は、このフレーズを最初から入れていたわけではなく、1963年6月1日にパリのBBCスタジオでラジオの収録をした時に初めて入れたんです。

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何故、途中から入れたのかは分かりません。この頃、既にイギリスではビートルマニア現象が起きており、彼らは、金を稼げるようになったのと反比例して自由な時間がなくなっていきました。

ジョンは、本当は「金より自由をくれ!」と叫びたかったのでしょうか?

4 ドゥント・レット・ミー・ダウン

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またまた後期の曲に飛びます。ジョンのヨーコに対する熱い想いを曲にしたものです。彼は、この頃にはヨーコに心底惚れ込んでいたんですね。

彼の悲痛な叫びが聴こえます。ヘルプの時はまだ助けてと叫びながらも、何とか踏み止まっていましたが、この頃は本当に追い詰められていました。

一つにはヨーコが一筋縄ではいかない女性だったこと、もう一つは、彼が重度のヘロイン中毒に侵されていたことです。

ジョンは、1970年のローリングストーン誌のインタビューでこう語っています。「もし、自分が溺れていたら、誰かが先見の明で気付いてくれて、助けてくれたらとっても嬉しいな、なんて思わないだろ?助けてくれ〜って叫ぶはずさ。」

 

ジョンは、レコーディングの際にリンゴに対し、出だしで思いっきりシンバルを叩いてくれと要求しました。彼は、それで自分を奮い立たせ、激しくシャウトしようとしたんです。

ジョンのヴォーカルだけを分離して聴いてみると、彼の苦悩と弱々しさを感じることができます。シャウトは力強いけれども、それは、むしろ彼自身の悲痛な叫びでした。

この時の彼のヴォーカルは、プラスティック・オノ・バンドとして発表した「マザー」に通じるものがあります。特に、タイトル・フレーズを歌う時の心の底から振り絞るような声ですね。

ジョンは、ソロになってからも、常に自分のヴォーカル・スタイルを模索し続けました。1974年に発表した「ホワット・ユー・ガット」では、久しぶりにシャウトしています。 

【3】しっとりとしたバラード部門

1 ビートルズのヴォーカルの魅力

さて、これまでとは一変して、しっとりとしたバラード部門です。ジョンは、ここでも素晴らしいヴォーカルを聴かせてくれます。

2 ジョンとポールの2人の天才ヴォーカリスト

ビートルズが未だに世界中のファンから愛され続けているのは、「様々なヴォーカルが楽しめること」も重要な要素ではないかと思います。

特に、ジョンとポールの2人は、ズバ抜けていますね。激しいロックンロールからしっとりとしたバラード、サイケデリックで幻想的な楽曲、オールドファッションタイプの楽曲など、ありとあらゆるジャンルの楽曲のリードヴォーカルができ、しかもコーラスまで抜群に上手いんです。

この2人に共通するのは、喉の強さです。どれだけ激しくシャウトしても喉を潰しません。しかも、シャウト一辺倒ではなく、しっとりとしたバラードまでできるんです。

シンガーやヴォーカリストにはそれぞれ個性があり、楽曲でヴォーカルを使い分けること自体がなかなか困難な課題ですし、失敗すればそれまで築いてきたステータスを一気に失うことになりかねません。しかし、彼らは、それを恐れずチャレンジし、難なくクリアしてしまっているのです。

ビートルズをいくら聴いても飽きないのは、こういったところに魅力を感じるからかもしれません。

 

ポールは、元々楽天的な性格だからかもしれませんが、悲しい歌詞の楽曲を歌っていても、リスナーは、そんなに深刻にはならないのです。どんなに辛くても苦しくても、「We can work it out(乗り越えられるさ)」というのが、彼の信条なのでしょう。

ところが、ジョンは、悲しい歌詞の楽曲を歌うとホントにしんみりとした、心の奥深くに染み入るような印象を受けます。それどころか、悲痛な叫びと取れる楽曲を歌っています。その辺りがこの2人の対照的なところですね。

以前にも書きましたが、ジョンの声は、少しザラついているんです。そのザラつき加減が、程よくリスナーの心に入り込んでその魂を揺さぶります。

彼は、声の美しさだけではなく、様々なテクニックを駆使して、ヴォーカルに磨きをかけています。例えば、ワザと微妙に譜面よりもタイミングを遅らせて歌うことで、より気だるいフィーリングを出したりするところなどですね。

それでは、個々の楽曲について分析していきましょう。

3 ガール

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ジョンのリードヴォーカルで、しっとりとしたバラードの代表格ともいえる曲です。歌詞の意味が分からなくても、あるいは分かればなおさら、その切なさに心を打たれない人はいないでしょう。

先程の説明のように、この楽曲の歌詞の冒頭で、ワザと歌い出すタイミングを遅らせて気だるい雰囲気を醸し出しています。♫Is there anybody〜のところですね。

この曲のヴォーカルの特徴は、何といっても、大きなブレス音、つまり息継ぎの音をワザとレコーディングしていることです。これは、ジョンがウットリとした感じを出したいと意図的に入れたものです。ビートルズとしては初の試みでした。リンゴも「この曲はスゴいよ。あのブレス音が特に良いね。」と語っています。

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しかし、こんな発想が良く出せましたね(^_^;)レコードだとリスナーがどうしても気になってしまうので、この当時のシンガーは、できるだけブレス音を入れないように気をつけたものです。

時代が変わり、現代ではデジタルで処理してブレス音を消したり、逆にそのままにしたり、自在に操れるようになっています。むしろ、効果を狙ってワザとブレス音を入れたりしてますね。

でも、この曲のリリース当時は、こんなにはっきりと分かるブレス音を入れるなんて、なかなか怖くてできませんよ(^_^;)彼らの大胆さ、そして、それをことごとく成功させてしまう天才振りには感嘆させられます。

この曲の解説は長くなりますので、今回は、ここまでにしておきます。

 

(参照文献)THE BEATLES MUSIC HISTORY 

(続く)

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