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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(196)異次元の作品「ホワイト・アルバム」の不思議な世界(その2)

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1 イーシャー・デモは和やかな雰囲気で制作された

テープでは、彼らは、時おりビートルズのローディーであるマル・エヴァンズ、広報担当のデレク・テイラーと会話しています。その様子からすると、お茶を入れたり、マリファナを吸っていたと思われます。インドに滞在している間はドラッグを断っていたのに、また手を出したんですね(^_^;)

リンゴは、他のメンバーが「The Continuing Story of Bungalow Bill」を大声で歌っていても、それを静かに聞いていました。加わらなかったというだけで、疎外されていたわけではありません。

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その場の雰囲気は和やかなものでした。ホワイト・アルバムを制作する時の険悪な雰囲気は微塵もなかったのです。

制作中の曲がいくつかありましたが、レコーディングで変更されたものもありました。ジョンの「Yer Blues」は、アルバムでは、「自殺」を連想させる内容になっていましたが、それよりはもう少し穏やかな作品でした。

ジョージの「Piggies」は、当初は、ベーコンではなくポークチョップを食べるという歌詞になっていました。また、彼は、マハリシから指導を受けた超越瞑想をヒントに「Sour Milk Sea」を歌いましたが、アルバムには収録されなかったので、リヴァプール以来の友人でプロミュージシャンのジャッキー・ロマックスに提供しました。

 

(1)超越瞑想からヒント

George Harrison in India 1968

ジョージは、ギターを持ってきておらず、ジョンのギターを借りて10分程度で制作したということです。また、ヒンズー教の経典を元に作成された絵画からタイトルを付けました。

彼は、この曲について、人が困難に直面した場合にそれに積極的に立ち向かったり、生活の質を向上させる手段として、瞑想が効果的であることを提唱したものだと語っています。

インドの思想を音楽に取り込んだジョージでしたが、6月までにはインドの古典音楽を放棄してロックミュージックに完全に回帰することに決めました。この曲についても、インドに滞在している間に制作したが、これはロックンロールとして制作したと語っています。

やがて、ビートルズは、マハリシとは縁を切ることになりましたが、彼から学んだ超越瞑想は無駄にはなりませんでした。余談ですが、超越瞑想は、現在でもアメリカ軍兵士が戦地で受けた体験を要因とするPTSDの治療に使われているそうです。

(2)アップル・コア社のプロデュース

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レコーディングでは、ロマックスのヴォーカルに加え、ジョージがアコースティック・ギターとリード・ギターのソロ、エリック・クラプトンがリード・ギター、ピアノがニッキー・ホプキンス、ベースがポール、ドラムはリンゴがそれぞれ担当するというありえないほどの超豪華メンバーでした。

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この曲は、ビートルズが自ら立ち上げたアップル・コア社からリリースされることが決まっていたので、メンバーも気合いが入っていたんでしょう。彼らは、自分たちの楽曲をリリースするだけではなく、会社として新しいミュージシャンをプロデュースすることにも力を入れていたのです。

ただ、バックバンドの気合いが入り過ぎて、メインヴォーカルのロマックスがちょっと影が薄くなっている感はありますが…(^_^;)

因みに社名の「Apple Corps」は、「アップル・コープス」ではなく「アップル・コア」と読むのが正しいんですが(厳密に言うと「コー」がより近い)、日本では長らくアップル・コープスと表記されてきました。スペルからするとそう読みたくなるのも無理はないですけどね(^_^;)

「Corps」は「軍団」とか「兵団」という意味で、アメリカの海兵隊も「the Marine Corps」と呼ばれています。発音が英語っぽくないのは、フランス語が由来だからです。なのでApple Corpsは「リンゴの兵団」というような意味になりますが、これはApple Core(リンゴの芯)に掛けたシャレです。

自分のデビュー曲をサポートしてもらったお礼に、ロマックスは、ビートルズの「Dear Prudence」のレコーディングの際に、クラプトンとともにバッキングヴォーカルに参加しました。

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このレコードは、イギリスやアメリカでは成功しなかったものの、なぜかカナダではチャート29位まで上昇しました。商業ベースでは成功しませんでしたが、専門家からの評価は高かったのです。NMEのデレク・ジョンソンは「素晴らしいリズム&ブルースナンバー」、Record Worldは、四つ星を付け「ビートルズの新しい弟子によるハードロック」と高く評価しました。

不運だったのはリリースした時期が、「ヘイ・ジュード」やメアリー・ホプキンスの「悲しき天使」と被ってしまったことですね。

 

(3)この曲のタイトルを名前に使用したバンドがいた

1969年に結成された学生のアマチュアバンドが、「Sour Milk Sea」と名乗っていました。彼らは、それまで名乗っていた「Tomato City」というバンド名を、この曲にインスパイアされてタイトルと同じ名前に変更したのです。

このようにこの曲は、チャートでは成功しませんでしたが、一部のミュージシャンには確実に影響を与えたのです。

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1970年からこのバンドに加わたのが、フレディ・マーキュリーです。やがて彼は、他のメンバーとあの伝説のロックバンド「QUEEN」を結成したのです。

デビューしたばかりのQUEENは、専門家からは酷評されていました。しかし、日本の女性ファンが彼らの魅力にいち早く気づいていたのです。1975年、彼らが初めてジャパンツアーで羽田空港に降り立ったとき、2千人の女性ファンが出迎えていました。予想外の人気ぶりにメンバーのブライアン・メイは、「あの時は、違う惑星に来たかと思った。」と驚いたほどでした。

日本でブレイクした彼らは、やがて欧米でも認められ、トップアーティストへと駆け上がっていきました。Sour Milk SeaがそのままQUEENへと発展したわけではありませんが、一時的にもフレディが所属していたことは音楽史上に刻まれています。

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インスパイアされたといえば、ザ・ポリスのスティングは、ビートルズのデビュー曲「Love Me Do」を11歳で初めて聴き、その溶け合ったヴォーカルハーモニーと魅惑的なハーモニカに惹きつけられ、クラスメイトと一緒に圧倒的な、ほとんど霊的と言っていいほどの衝撃をうけたと語っています。

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アップテンポなロックンロールではなくミドルテンポの曲ですが、多感な少年たちの耳には、新しい時代の到来を告げるファンファーレに聴こえたのでしょう。この曲もチャートではトップ10に入れなかったのですが、その斬新さが分かる人には分かったんですね。

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(4)ジョージがコンポーザーとしての実力を証明した

上記の事実は、ジョージが既にこの時点でコンポーザーとしての実力をつけていたということを意味します。しかし、それでも彼の楽曲がアルバムに収録されたのは、2枚組のアルバムでも4曲に留まりました。それほどレノン=マッカートニーの壁は厚かったのです。

George Harrison The Beatles White Album sessions

ジョージは「このままビートルズに留まっていたら、自分の作品は日の目を見ないまま終わってしまう。」と焦燥感を抱いたかもしれません。彼がクラプトンだったら、この時点で脱退していたでしょう。しかし、控えめな性格だったジョージは、内心では不満を抱えながらも脱退はしませんでした。

もし、彼が脱退していたら、その時点でビートルズは解散し、その後の傑作アルバム「アビイ・ロード」は誕生しなかったでしょう。

書いておいて今さら言うのもなんですが、アルバムに収録されなかった曲でここまで書いた人っているのかな?好きですね~、私も(笑)

 

2 ビートルズの終わりの始まり?

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繰り返しますが、ビートルズがジョージのバンガローでテープにレコーディングしていた時は、とても和気あいあいとした雰囲気でした。ところが、アビイ・ロード・スタジオに彼らが集合してレコーディングを始めると、途端に険悪な雰囲気になってしまったのです。そのことは、当時のスタッフも認めています。

彼らがインドで制作した曲は大半が未完成でしたが、今までの彼らであれば、お互いに協力し合いながら完成度の高いものに近づけていったのです。ところが、このアルバムの制作の時は、そんな雰囲気ではありませんでした。

Sour Milk Seaだけでかなり字数をとっちゃいました。このシリーズ、長くなりそうな予感がします(^_^;) といっても、私は、アップルの広報担当じゃありませんので、念のため(笑)

 

(参照文献)DREAMING THE BEATLES, RollingStone

(続く)

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