平安時代頃の話。
その頃この一帯に魔物が出没したらしい。

まあ鬼なんだろうが、これが中々凄まじい奴で、雷鳴轟かせながら暗雲と共に現れて女子供を攫い貪り食うような奴だったんだそうだ。

堪りかねた村民は郡司を通じて朝廷に使いを送った。
なんとかしてかの魔鬼を鎮めてもらいたいと。

そうして、朝廷から命を受けたとある高名な僧正と武士がその村へとやってきた。
僧正は村に着くと、しかるべき場所を選定して御堂を築き、朝廷から預かってきた神鏡を前に七日七晩の調伏祈祷を始めた。

調伏成就の近づいた七日目の晩、突如として僧正の眼前に黒雲が巻き起こり、雷鳴と共にくだんの魔鬼が現れた。

鬼の目的は神鏡だった。
この神鏡は代々朝廷に伝わるもので、非常に強力な破邪の力を持っていたという。

鬼はこの神鏡を破壊し、僧正の命を奪うことですることで調伏を失敗させようとしたらしい。

正直、そんな神鏡触るのも危ないと思うんだが・・・まあそれだけ強力な奴だったんだろうな。

僧正はそれまで七日と六晩不眠不休で調伏の祈祷に専念してきたから咄嗟のことに動きが遅れた。
僧正の首に魔鬼の鉤爪が迫る。

と、そのとき。

それまで外で見張りをしていた武士が御堂の扉を蹴破って中へ入り、僧正と魔鬼の間に割って入った。
魔鬼も突然のことに一瞬ひるんだらしく、とっさに鉤爪のついた手を引っ込めた。

武士はここぞとばかりに魔鬼に詰め寄ってその頭に生えた角をつかみ、根元からぼきりと折り取った。
その瞬間、魔鬼は阿鼻叫喚の咆哮を残して煙と消え去ってしまったという。

で、俺の地元には今でもこの退治された魔鬼を祀った神社がある。
一応鎮守ってことにはなってるが、境内社・・・というかほぼ同じ大きさの隣接する社で退治した武士も祀ってる辺り、単なる封じ込めくさいんだよなあ。