今から大体4年前の話。

俺の家は東京のA区にあり、毎日車で都心部にある会社へ出かける。
帰りはいつも遅くなり、深夜の道を運転することも多い。

ある日いつもの帰り道の大通りを、夜遅く車で通っていると、服装からして少し年配の女らしき人物が、その大通り沿いにある、何かの店らしきところの前に立っていた。

顔を伏せているためどういう表情なのかさっぱりわからなかったが、道路側に体を向けて、首を極端に下へ向け、長い髪をダランと下げている様はどう見ても異様にしか見えなかった。

毎日というわけではないのだが、夜遅くにその道を通ると、同じ場所で同じ格好の女を見かけることがあり、そのたびに気味が悪いなと思っていた。

ある日、なんとなくコンビニの雑誌をぱらぱらと立ち読みしているとちょっとアンダーグラウンドな情報ばかり載っている雑誌の中に東京の心霊スポットについて詳しく紹介している記事があった。

そのうちの一つに、A区のNという町に女の霊が出るという話が紹介されていた。

「N駅周辺のビデオ屋の前に、深夜、殺された女の霊が出る」という噂話だった。

その雑誌の取材班は、現場検証を試み、N駅周辺で営業している全ビデオ屋を訪ねた結果、何も現れず、周辺住人にもそんな話は聞いたことがないと言われたそうだ。

結局、その話は真偽不明の単なる噂話だということで結論付けられていた。

数日後、いつも通っているその大通りを自転車で通ることがあった。
同じ区内だが、そこを通勤の車以外で通ったことは、それまではなかったと思う。

その時は付近に大型のショッピングセンターが出来たばかりだったので行ってみようと思い、初めてその大通りを自転車で走った。

あの女が立っていた場所にあった。
あの空家らしき場所はアダルトビデオ自販機が複数台設置されている無人のビデオ売り場だった。

N町を横切るその大通りを今も通るが、ここ2年くらいは、あの女を見かけていない。