2018年10月18日
懐かしの種牡馬辞典 - ヒシアケボノ
懐かしの種牡馬辞典、第三十一弾は*ヒシアケボノ。アケボノの名が示す通りとにかく巨漢馬として知られた馬で、最高時の馬体重は優に580キロを超え、スプリンターズS勝利時の560キロは今なおGI勝ち馬の最高馬体重として記録に残っています。今でこそ600キロを軽く超える馬もたまに出てくるようにはなりましたが、当時としては580キロでも破格の馬体で、特にピークを過ぎた晩年はその馬体重ばかりが注目されていたように思います。フェアリーSを勝ったクラウンロゼの母父でもあり、400キロそこそこしかなかったロサードから500キロ近いクラウンロゼが出たのもこの*ヒシアケボノのおかげでしょう。
*ヒシアケボノ
米国産 1992年生 黒鹿毛 父系:ウッドマン系
父 Woodman は愛GIIIアングルシーSなど2歳時に3連勝を飾った馬で、種牡馬として英1000ギニーなどGI3勝の Bosra Sham 、プリークネスSなどGI3勝の *ティンバーカントリー、米二冠馬*ハンセル、仏2000ギニーなどGI2勝の*ヘクタープロテクターなどを出して成功した。日本にも多数の産駒が種牡馬として繋養されたが、*ティンバーカントリー産駒のアドマイヤドンが辛うじて何頭かの現役馬を走らせている程度でほとんど父系としては残っていない。
母 Mysteries は英国未勝利。10.5FのGIIIミュージドラSで3着に入っている。母としてはほかにジュライCなど欧州のGIを2勝した*アグネスワールドを出している。また、孫の代に英GIクイーンアンSの勝ち馬 Dubai Destination 、ジャックルマロワ賞などGI2勝の Librettist が出るなど、なかなか優秀な牝系である。
祖母 Phydilla はフランスのマイルGIIIクインシー賞などを勝った馬で、母としては目立った産駒は出していないが3代孫の代にローズSを勝ち、秋華賞でも2着に入ったブロードストリートを出している。
<競走成績> ※競走名は新年齢に統一
デビュー当初はマイル戦やダートを使われていたが、芝スプリントに切り替わった3歳7月の未勝利戦でいきなり後続に2秒以上の差をつける大差勝ちを収めると、怒涛の4連勝でオープン入りを果たした。オープン入りしてからは距離延長もこなし、スワンSをレコードで制して重賞初制覇を飾ると、暮れのスプリンターズSも制し、この年芝1200m5戦5勝で文句なしの最優秀短距離馬に選ばれた。古馬になっても期待されたが、増え続ける馬体重とは裏腹に競走成績は下降の一途をたどり、結局4歳以降は一度も勝ち星をあげることはできなかった。
<供用実績>
引退後はJBBAの胆振種馬場にて種牡馬入り。晩年は惨敗続きであったが、600キロに迫ろうかという雄大な馬体に優秀な血統、さらに40万円という安価な種付け料もあって初年度は70頭を超える牝馬を集めることに成功した。ただ、その後は右肩下がりに減少を続け、産駒デビュー後の2002年には種付け料が減額され、千葉の下総種馬場に移動となった。それでも種付け数は下げ止まらず、さらに下総種馬場の閉鎖に伴って東大農学部附属牧場に移動して種牡馬を続けていたが、最後まで目立った活躍馬を出すことはできなかった。
<主な産駒> 2426戦190勝 54810.5万円 AEI:0.44 ※平地のみ
Woodman (USA) 1983
|*ヒシアケボノ (USA) 1992
| |セトノアケボノ 1999 39戦2勝
| | ・中央で2勝
| |ヒシアスカ 1999 51戦4勝 Dam
| | | ・中央で4勝
| | |クラウンロゼ 2010 (ロサード) 22戦4勝 Dam
| | | ・フェアリーS(GIII) ・アネモネS(OP)
| |セトノグリーン 2001 30戦5勝
| | (2着) ・摂津盃(園田)
| |オオヒメ 2004 46戦3勝 Dam
| | ・中央で3勝
| |ピアニシモタッチの2009 2009
| | ・不出走 ・東大農学部産
140頭近い産駒を残しながらオープン入りした産駒は1頭もおらず、重賞に出走したのもセトノアケボノ1頭のみで、デイリー杯2歳S6着が最高だった。稼ぎ頭だったヒシアスカは最高で534キロ、オオヒメはその名の通り最高で550キロとその雄大な馬体はある程度産駒には遺伝したようだが、残念ながらその競走成績まで伝わることはなかった。なお、東大農学部で生産されたピアニシモタッチの2009は母が In the Wings 産駒の米国産馬という血統だったが、残念ながら競走馬としてデビューすることはできなかった。
繁殖入りした牝馬は4頭。このうち、前述のオオヒメは産駒を残さないまま廃用となった。母父として残した産駒はわずか6頭だけだったが、ここからフェアリーSを勝ったクラウンロゼを出したのは立派である。そのクラウンロゼもアネモネSの後は長らくスランプが続いたが、引退レースとなった6歳時の準オープン戦で見事勝利をあげており、無事に繁殖入りすることができた。初年度はルーラーシップの牡馬が生まれるなど繁殖馬としてそこそこ期待されているようで、この先*ヒシアケボノならびに希少なロサードの血が残るような活躍を期待したい。
同時期に活躍していたマル外スプリンターでいえば*タイキシャトルや*マイネルラヴあたりは種牡馬としても大いに人気を博し、それなりの結果を残したが、*ヒシアケボノの属するウッドマン系はミスプロの中でも相当淘汰が進んでいる系統で、おそらく*ヒシアケボノが種牡馬として十分な評価を得ていたとしても現在まで父系が続いていた可能性は低いだろう。その血を引く産駒は少ないが、いずれ名実ともにビッグな産駒が出てきてほしいところ。
米国産 1992年生 黒鹿毛 父系:ウッドマン系
<血統構成> 5代内クロス : | Nasrullah 5×5 Glamour 4×5 |
Woodman USA 栗毛 1983 | Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | ||
*プレイメイト | Buckpasser | |
Instriguing | ||
Mysteries USA 鹿毛 1986 | Seattle Slew | Bold Reasoning |
My Charmer | ||
Phydilla | Lyphard | |
Godzilla |
父 Woodman は愛GIIIアングルシーSなど2歳時に3連勝を飾った馬で、種牡馬として英1000ギニーなどGI3勝の Bosra Sham 、プリークネスSなどGI3勝の *ティンバーカントリー、米二冠馬*ハンセル、仏2000ギニーなどGI2勝の*ヘクタープロテクターなどを出して成功した。日本にも多数の産駒が種牡馬として繋養されたが、*ティンバーカントリー産駒のアドマイヤドンが辛うじて何頭かの現役馬を走らせている程度でほとんど父系としては残っていない。
母 Mysteries は英国未勝利。10.5FのGIIIミュージドラSで3着に入っている。母としてはほかにジュライCなど欧州のGIを2勝した*アグネスワールドを出している。また、孫の代に英GIクイーンアンSの勝ち馬 Dubai Destination 、ジャックルマロワ賞などGI2勝の Librettist が出るなど、なかなか優秀な牝系である。
祖母 Phydilla はフランスのマイルGIIIクインシー賞などを勝った馬で、母としては目立った産駒は出していないが3代孫の代にローズSを勝ち、秋華賞でも2着に入ったブロードストリートを出している。
<競走成績> ※競走名は新年齢に統一
年 (歳) | 戦 | 勝 | 主な実績 |
1994年 (2歳) | 2 | 0 | |
1995年 (3歳) | 12 | 6 | 1着 スプリンターズS(GI) T1200 1着 スワンS(GII) T1400 1着 やまなみS(1500) T1200 1着 有明特別(900) T1200 1着 筑紫特別(500) T1200 1着 3歳未勝利戦 T1200 3着 マイルチャンピオンシップ(GI) T1600 3着 京王杯オータムH(GIII) T1600 |
1996年 (4歳) | 6 | 0 | 3着 高松宮杯(GI) T1200 3着 安田記念(GI) T1600 3着 シルクロードS(GIII) T1200 4着 スプリンターズS(GI) T1200 |
1997年 (5歳) | 10 | 0 | |
計 | 30 | 6 | 1995 最優秀短距離馬 |
デビュー当初はマイル戦やダートを使われていたが、芝スプリントに切り替わった3歳7月の未勝利戦でいきなり後続に2秒以上の差をつける大差勝ちを収めると、怒涛の4連勝でオープン入りを果たした。オープン入りしてからは距離延長もこなし、スワンSをレコードで制して重賞初制覇を飾ると、暮れのスプリンターズSも制し、この年芝1200m5戦5勝で文句なしの最優秀短距離馬に選ばれた。古馬になっても期待されたが、増え続ける馬体重とは裏腹に競走成績は下降の一途をたどり、結局4歳以降は一度も勝ち星をあげることはできなかった。
<供用実績>
年度 | 種付料 | 種付数 | 登録数 | 出走数 | 供用場所 |
1998 | 40万円 | 72 | 46 | 40 | JBBA胆振種馬場 |
1999 | 40万円 | 54 | 35 | 28 | 〃 |
2000 | 40万円 | 29 | 19 | 16 | 〃 |
2001 | 40万円 | 21 | 10 | 8 | 〃 |
2002 | 25万円 | 15 | 11 | 6 | JBBA下総種馬場 |
2003 | 20万円 | 9 | 6 | 5 | 〃 |
2004 | 10.5万円 | 5 | 3 | 1 | 〃 |
2005 | 10.5万円 | 4 | 2 | 1 | 〃 |
2006 | 10万円 | 3 | 3 | 1 | 〃 |
2007 | 10万円 | 3 | 1 | 0 | 〃 |
2008 | 10万円 | 3 | 2 | 1 | 東京大学農学部附属牧場 |
計 | 218 | 138 | 107 | 勝ち馬数:64頭 |
引退後はJBBAの胆振種馬場にて種牡馬入り。晩年は惨敗続きであったが、600キロに迫ろうかという雄大な馬体に優秀な血統、さらに40万円という安価な種付け料もあって初年度は70頭を超える牝馬を集めることに成功した。ただ、その後は右肩下がりに減少を続け、産駒デビュー後の2002年には種付け料が減額され、千葉の下総種馬場に移動となった。それでも種付け数は下げ止まらず、さらに下総種馬場の閉鎖に伴って東大農学部附属牧場に移動して種牡馬を続けていたが、最後まで目立った活躍馬を出すことはできなかった。
<主な産駒> 2426戦190勝 54810.5万円 AEI:0.44 ※平地のみ
Woodman (USA) 1983
|*ヒシアケボノ (USA) 1992
| |セトノアケボノ 1999 39戦2勝
| | ・中央で2勝
| |ヒシアスカ 1999 51戦4勝 Dam
| | | ・中央で4勝
| | |クラウンロゼ 2010 (ロサード) 22戦4勝 Dam
| | | ・フェアリーS(GIII) ・アネモネS(OP)
| |セトノグリーン 2001 30戦5勝
| | (2着) ・摂津盃(園田)
| |オオヒメ 2004 46戦3勝 Dam
| | ・中央で3勝
| |ピアニシモタッチの2009 2009
| | ・不出走 ・東大農学部産
140頭近い産駒を残しながらオープン入りした産駒は1頭もおらず、重賞に出走したのもセトノアケボノ1頭のみで、デイリー杯2歳S6着が最高だった。稼ぎ頭だったヒシアスカは最高で534キロ、オオヒメはその名の通り最高で550キロとその雄大な馬体はある程度産駒には遺伝したようだが、残念ながらその競走成績まで伝わることはなかった。なお、東大農学部で生産されたピアニシモタッチの2009は母が In the Wings 産駒の米国産馬という血統だったが、残念ながら競走馬としてデビューすることはできなかった。
繁殖入りした牝馬は4頭。このうち、前述のオオヒメは産駒を残さないまま廃用となった。母父として残した産駒はわずか6頭だけだったが、ここからフェアリーSを勝ったクラウンロゼを出したのは立派である。そのクラウンロゼもアネモネSの後は長らくスランプが続いたが、引退レースとなった6歳時の準オープン戦で見事勝利をあげており、無事に繁殖入りすることができた。初年度はルーラーシップの牡馬が生まれるなど繁殖馬としてそこそこ期待されているようで、この先*ヒシアケボノならびに希少なロサードの血が残るような活躍を期待したい。
同時期に活躍していたマル外スプリンターでいえば*タイキシャトルや*マイネルラヴあたりは種牡馬としても大いに人気を博し、それなりの結果を残したが、*ヒシアケボノの属するウッドマン系はミスプロの中でも相当淘汰が進んでいる系統で、おそらく*ヒシアケボノが種牡馬として十分な評価を得ていたとしても現在まで父系が続いていた可能性は低いだろう。その血を引く産駒は少ないが、いずれ名実ともにビッグな産駒が出てきてほしいところ。
この記事へのコメント
1. Posted by 勝利植井 2018年10月19日 04:45
96年末の時点で引退させていたら、もう少し産駒が増えていたかも…。
2. Posted by ノエルザブレイヴ 2018年10月19日 22:53
ヒシアケボノは今話題のウマ娘にも抜擢されているのですがイメージモデルがアイドルマスターシンデレラガールズの大型アイドル諸星きらり嬢と思われる(声優も同じ)のが何となく腑に落ちる話だなと思います。
3. Posted by トップガン 2018年10月20日 16:24
馬格的にも血統的にもディープインパクトに合いそうですが・・・そもそも繁殖入りが4頭しかいなかったんですね
4. Posted by Organa 2018年10月20日 18:33
半弟アグネスワールドが日本ではGIを勝てず欧州でGIを2勝し、種牡馬としても海外でGIウイナーを出したように、ヒシアケボノも日本に来ず欧州あたりで走っていたらそれなりの種牡馬になっていたかもしれませんね。
5. Posted by ふくちゃん 2018年10月20日 20:15
確かにディープには合いそうですけど、早熟度がアップしちゃいそうな気もします😅
6. Posted by DEEPBLUE 2018年10月21日 22:12
ウッドマンとカーリアンは日本による大物産駒の乱獲が出た最後の事例という事になるのでしょうかね?