2018年10月30日
種付け情報2018 - 日本軽種馬協会編
「種付け情報2018」シリーズ第五弾は日本軽種馬協会。例によって静内、七戸、九州の各種馬場をまとめて紹介していきます。今年から新加入となった*ザファクターが160頭を超える牝馬を集めたおかげで総数では前年度より大きく種付け数を伸ばすことに成功しましたが、昨年から供用されている*マクフィと*クリエイターIIをはじめ大半の種牡馬が前年比減となっており、あまり景気が良さそうな印象は受けませんね。200万円前後の種付け料というのも*シニスターミニスターあたりの急上昇株や社台の中堅クラスが付けられる価格であり、あまりお得感がないのも原因でしょうか。
<日本軽種馬協会 静内種馬場>
新種牡馬*ザファクターが種付け数トップに立った。同馬は War Front 産駒の米国産馬で、マリブSなどダート7ハロンのGIを2勝した。同父の*アメリカンペイトリオットもダーレーで150頭を超える牝馬を集めており、ここにきてにわかに活気づいている系統となっているが、残念ながら単年リース契約で今年度限りの供用となる。来年から同父のデクラレーションオブウォーが種牡馬入りするのも完全にこの流れに乗ったものだろうが、果たしてどこまで。
昨年新種牡馬として140頭以上の牝馬を集めた*マクフィは何とか100頭はキープしたものの、前年比で3割近くの大幅減となった。父が欧州で Galileo に次ぐ勢力を誇る Dubawi で、自身もマイルGIを2勝、種牡馬としてもすでに複数のGIウイナーを出すなど血統・実績ともに申し分ない種牡馬だが、近年*ハービンジャー以外に成功種牡馬が出ていない欧州系血統に220万円という種付け料がやはりネックか。
来年日本での産駒がデビューする*エスケンデレヤはほぼ昨年と変わらずだったが、初年度が115頭だったことを考えると苦しい状況が続いているといわざるを得ない。父は Giant's Causeway で、自身は米GIウッドメモリアルS勝ちの実績があるが、同じ Storm Cat でもじわじわと勢力を拡大しつつある*ヘネシーと違って今一つ系統としての需要に欠ける感は否めない。
昨年は日本初の Tapit 産駒としてまずまずの牝馬を集めた*クリエイターIIだったが、今年は半数以下に減らす結果となった。ベルモントSなどGI2勝とはいえ初勝利は3歳になってから、GI実績も10ハロン以上ということで基本的にあまり人気になるタイプではない上、今年からより日本向きの血統の*ラニが50万円で種牡馬入りしており(118頭に種付け)、完全に需要を食われた形となっている。
クラシックウイナーの父*バゴも減少。昨年はコマノインパルスが京成杯を制した後の繁殖シーズンで何とか50頭を超えたが、目立った活躍馬が出なかった今年はさすがに牝馬を集めるのに苦労している。ただ、今年の2歳馬にOPアイビーSを32秒台の豪脚で制したクロノジェネシスが出ており、これが重賞クラス、あるいはクラシックでも活躍するようならかつての100頭台復帰もあり得るだろうか。
輸入直後は130頭を超える牝馬を集めたものの、米国での産駒が全く走らず種付け数を大幅に減らし、さらに日本でデビューした産駒も予想通りの結果に終わっている*ケープブランコはなぜか産駒年度から種付け数を増やした。ここまで2歳世代で勝ち上がったのは単勝200倍のテイエムアカリオーだけで、いくら欧・米でチャンピオンクラスの成績を残したとはいえ現状50万円くらいが相場ではないだろうか。
相変わらず2歳戦では好調で、古馬になっても意外としぶとく活躍する*ヨハネスブルグだが、さほど安くない種付け料と受胎率が5割程度と低いのがネックとなって種付け数が伸びてこない。今年の米クラシック三冠馬 Justify をはじめ多数の活躍馬を出しながら早世した Scat Daddy の父でもあるが、一向にその産駒たちが繁殖馬として重宝されるような兆候はない。
2004年の高松宮記念勝ち馬サニングデールはついに種付け数が1頭に。とはいえここでなければとっくの昔に廃用となっていてもおかしくないだけに、結果的に同馬にとってはJBBA入りして良かったと言えるかもしれない。ここから巻き返す可能性はゼロに等しいだろうが、今のところ唯一のJRA現役馬ワイナルダムは今年10回走って着外は2度だけと堅実に走っており、ぜひオープンまで出世してほしいところ。
久々に九州種馬場から戻ってきた*ストラヴィンスキーだったが、種付け数はわずか1頭。九州種馬場では年間20頭前後の牝馬を集めていたから、22歳の高齢種牡馬をわざわざ遠路はるばる移動させた甲斐がなかったというところだが、来年の種牡馬ラインナップに同馬の名前はなく、年齢的にもどうやらこれで種牡馬引退となるようだ。
<日本軽種馬協会 七戸種馬場>
*アルデバランIIは種付け料の減額の効果があったか、数少ないプラス種牡馬となった。今年もダンスディレクターが高松宮記念で4着に入っているほか、レジーナフォルテがアイビスサマーダッシュで4着に入り、2歳世代でもイッツクールがOPききょうSを勝っているなど種付け料を考えれば十分健闘している。来年はさらに10万円減額されるということで、さらに種付け料を増やす可能性は十分ありそう。
初年度は100頭を超える牝馬を集めた*デビッドジュニアだったが、今年は昨年と変わらず3頭と低調。中央の平地戦で最後に勝ち星をあげたのがもう5年以上も前の話ではこの数字も致し方なしだが、父が同じ*タップダンスシチーが早々に種牡馬引退となったことを考えると、よそならとっくに廃用になっていてもおかしくはない。
<日本軽種馬協会 九州種馬場>
静内種馬場がら移動してきた*ケイムホームは種付け料の減額もあり、昨年比で倍の牝馬が集まった。最近はかつてほど産駒が重賞を賑わせているようなことはないが、今年はわざわざ北海道に*ケイムホームを種付けに行って生まれたカシノティーダが九州産限定のひまわり賞を制しており、芝ダート兼用タイプなので九州ならまだまだ覇権を握る可能性はあるだろう。
昨年は七戸から九州に移動して30頭近い牝馬を集めた*スクワートルスクワートだったが、今年は*ケイムホームの移動もあって大きく種付け数を減らした。かつて九州で供用されていた時には2頭のひまわり賞勝ち馬を出しており、それなりに適性は高いと思われるが、さすがに今年20歳になった種牡馬に大きな期待はかけづらいか。
なお、昨年まで繋養されていた*アラムシャーと*ダンツシアトルはともに種牡馬引退となっている。
種牡馬名 | 生年 | 種付 | 前年比 | 種付料 | 備考 |
*ザファクター | 2008 | 166 | − | 200万 | 新種牡馬 |
*マクフィ | 2007 | 107 | ▼35 | 220万 | |
*エスケンデレヤ | 2007 | 41 | ▼4 | 150万 | |
*クリエイターII | 2013 | 38 | ▼47 | 200万 | |
*バゴ | 2001 | 37 | ▼14 | 80万 | |
*ケープブランコ | 2007 | 32 | ▲6 | 200万 | |
*ヨハネスブルグ | 1999 | 31 | ▼3 | 180万 | |
サニングデール | 1999 | 1 | ▼2 | 10万 | |
*ストラヴィンスキー | 1996 | 1 | ▼14 | 10万 |
新種牡馬*ザファクターが種付け数トップに立った。同馬は War Front 産駒の米国産馬で、マリブSなどダート7ハロンのGIを2勝した。同父の*アメリカンペイトリオットもダーレーで150頭を超える牝馬を集めており、ここにきてにわかに活気づいている系統となっているが、残念ながら単年リース契約で今年度限りの供用となる。来年から同父のデクラレーションオブウォーが種牡馬入りするのも完全にこの流れに乗ったものだろうが、果たしてどこまで。
昨年新種牡馬として140頭以上の牝馬を集めた*マクフィは何とか100頭はキープしたものの、前年比で3割近くの大幅減となった。父が欧州で Galileo に次ぐ勢力を誇る Dubawi で、自身もマイルGIを2勝、種牡馬としてもすでに複数のGIウイナーを出すなど血統・実績ともに申し分ない種牡馬だが、近年*ハービンジャー以外に成功種牡馬が出ていない欧州系血統に220万円という種付け料がやはりネックか。
来年日本での産駒がデビューする*エスケンデレヤはほぼ昨年と変わらずだったが、初年度が115頭だったことを考えると苦しい状況が続いているといわざるを得ない。父は Giant's Causeway で、自身は米GIウッドメモリアルS勝ちの実績があるが、同じ Storm Cat でもじわじわと勢力を拡大しつつある*ヘネシーと違って今一つ系統としての需要に欠ける感は否めない。
昨年は日本初の Tapit 産駒としてまずまずの牝馬を集めた*クリエイターIIだったが、今年は半数以下に減らす結果となった。ベルモントSなどGI2勝とはいえ初勝利は3歳になってから、GI実績も10ハロン以上ということで基本的にあまり人気になるタイプではない上、今年からより日本向きの血統の*ラニが50万円で種牡馬入りしており(118頭に種付け)、完全に需要を食われた形となっている。
クラシックウイナーの父*バゴも減少。昨年はコマノインパルスが京成杯を制した後の繁殖シーズンで何とか50頭を超えたが、目立った活躍馬が出なかった今年はさすがに牝馬を集めるのに苦労している。ただ、今年の2歳馬にOPアイビーSを32秒台の豪脚で制したクロノジェネシスが出ており、これが重賞クラス、あるいはクラシックでも活躍するようならかつての100頭台復帰もあり得るだろうか。
輸入直後は130頭を超える牝馬を集めたものの、米国での産駒が全く走らず種付け数を大幅に減らし、さらに日本でデビューした産駒も予想通りの結果に終わっている*ケープブランコはなぜか産駒年度から種付け数を増やした。ここまで2歳世代で勝ち上がったのは単勝200倍のテイエムアカリオーだけで、いくら欧・米でチャンピオンクラスの成績を残したとはいえ現状50万円くらいが相場ではないだろうか。
相変わらず2歳戦では好調で、古馬になっても意外としぶとく活躍する*ヨハネスブルグだが、さほど安くない種付け料と受胎率が5割程度と低いのがネックとなって種付け数が伸びてこない。今年の米クラシック三冠馬 Justify をはじめ多数の活躍馬を出しながら早世した Scat Daddy の父でもあるが、一向にその産駒たちが繁殖馬として重宝されるような兆候はない。
2004年の高松宮記念勝ち馬サニングデールはついに種付け数が1頭に。とはいえここでなければとっくの昔に廃用となっていてもおかしくないだけに、結果的に同馬にとってはJBBA入りして良かったと言えるかもしれない。ここから巻き返す可能性はゼロに等しいだろうが、今のところ唯一のJRA現役馬ワイナルダムは今年10回走って着外は2度だけと堅実に走っており、ぜひオープンまで出世してほしいところ。
久々に九州種馬場から戻ってきた*ストラヴィンスキーだったが、種付け数はわずか1頭。九州種馬場では年間20頭前後の牝馬を集めていたから、22歳の高齢種牡馬をわざわざ遠路はるばる移動させた甲斐がなかったというところだが、来年の種牡馬ラインナップに同馬の名前はなく、年齢的にもどうやらこれで種牡馬引退となるようだ。
<日本軽種馬協会 七戸種馬場>
種牡馬名 | 生年 | 種付 | 前年比 | 種付料 | 備考 |
*アルデバランII | 1998 | 26 | ▲11 | 20万 | ▼10万 |
*デビッドジュニア | 2002 | 3 | 0 | 10万 |
*アルデバランIIは種付け料の減額の効果があったか、数少ないプラス種牡馬となった。今年もダンスディレクターが高松宮記念で4着に入っているほか、レジーナフォルテがアイビスサマーダッシュで4着に入り、2歳世代でもイッツクールがOPききょうSを勝っているなど種付け料を考えれば十分健闘している。来年はさらに10万円減額されるということで、さらに種付け料を増やす可能性は十分ありそう。
初年度は100頭を超える牝馬を集めた*デビッドジュニアだったが、今年は昨年と変わらず3頭と低調。中央の平地戦で最後に勝ち星をあげたのがもう5年以上も前の話ではこの数字も致し方なしだが、父が同じ*タップダンスシチーが早々に種牡馬引退となったことを考えると、よそならとっくに廃用になっていてもおかしくはない。
<日本軽種馬協会 九州種馬場>
種牡馬名 | 生年 | 種付 | 前年比 | 種付料 | 備考 |
*ケイムホーム | 1999 | 32 | ▲16 | 20万 | ▼30万 |
*スクワートルスクワート | 1998 | 8 | ▼20 | 10万 |
静内種馬場がら移動してきた*ケイムホームは種付け料の減額もあり、昨年比で倍の牝馬が集まった。最近はかつてほど産駒が重賞を賑わせているようなことはないが、今年はわざわざ北海道に*ケイムホームを種付けに行って生まれたカシノティーダが九州産限定のひまわり賞を制しており、芝ダート兼用タイプなので九州ならまだまだ覇権を握る可能性はあるだろう。
昨年は七戸から九州に移動して30頭近い牝馬を集めた*スクワートルスクワートだったが、今年は*ケイムホームの移動もあって大きく種付け数を減らした。かつて九州で供用されていた時には2頭のひまわり賞勝ち馬を出しており、それなりに適性は高いと思われるが、さすがに今年20歳になった種牡馬に大きな期待はかけづらいか。
なお、昨年まで繋養されていた*アラムシャーと*ダンツシアトルはともに種牡馬引退となっている。
この記事へのコメント
1. Posted by モンタレ 2018年10月30日 20:58
ヨハネスはなんでこんなに扱い悪いんだ? そこまで割高感早枯感はないと思うが。気性や体質面でよっぽど問題があるのか? アメリカて大物でるとその近親とかをすぐに買い戻しにくるイメージあるのにヨハネスにはそういう動きまったくないよね?
2. Posted by 狂犬芭蕉 2018年10月30日 22:45
受胎率に難があるヨハネスブルグ、高齢もあってでしょうか、来季は原則30頭までの交配だそうです。
来季から供用のデクラレーションオブウォー、交配料は230万円だそうですが、同じWar Front産駒のアメリカンペイトリオットが出産後払いで150万円なのを考慮すると高いようにも思えます。
来季から供用のデクラレーションオブウォー、交配料は230万円だそうですが、同じWar Front産駒のアメリカンペイトリオットが出産後払いで150万円なのを考慮すると高いようにも思えます。
3. Posted by 高田隆史 2018年10月30日 23:31
ヨハネスブルグは勝ち馬率やAEIを考えると2016年以降の種付け数が少なすぎると思っていましたが、受胎率が低いいのですね。
JBISで見てみると、生産頭数/種付け頭数が、
2015 …… 52/99(53%)
2016 …… 27/50(54%)
では、確かに180万円の種付け頭数も考慮すると躊躇するのは当然かと思います。
あと毎年思うのですが、社台や他の種牡馬場に比べ日本軽種馬協会は種付け料が高すぎると思います。
マクフィは150万円前後、エスケンデレヤ、クリエイターII、ケープブランコは半額でも安すぎることはないかと思います。
JBISで見てみると、生産頭数/種付け頭数が、
2015 …… 52/99(53%)
2016 …… 27/50(54%)
では、確かに180万円の種付け頭数も考慮すると躊躇するのは当然かと思います。
あと毎年思うのですが、社台や他の種牡馬場に比べ日本軽種馬協会は種付け料が高すぎると思います。
マクフィは150万円前後、エスケンデレヤ、クリエイターII、ケープブランコは半額でも安すぎることはないかと思います。
4. Posted by にのみや 2018年10月31日 22:09
昔は「本来は高額な種牡馬を安値で付けさせ、市場原理を無視している」と言われた軽種馬農協が「高い」と言われるのは隔世の感があります。
5. Posted by コウジ 2018年11月01日 13:24
いつ読んでも勉強になります。
6. Posted by Organa 2018年11月01日 23:22
JBBAはなかなか需要と供給の見極めという意味では古い考え方を引き継いでいるような印象です。頑張って実績上位の種牡馬を連れてきて(しかもややトレンド外)、それなりの種付け料を取るという。
ウォーフロントが人気なら、デクラレーションオブウォーみたいな大物を高値で買ってくるより、実績そこそこで母系がより日本向きの種牡馬を安めに提供するほうがメリットが大きいでしょう。そういうことをすると民間圧迫となってしまうのかもしれませんが。
ウォーフロントが人気なら、デクラレーションオブウォーみたいな大物を高値で買ってくるより、実績そこそこで母系がより日本向きの種牡馬を安めに提供するほうがメリットが大きいでしょう。そういうことをすると民間圧迫となってしまうのかもしれませんが。
7. Posted by おりた 2018年11月01日 23:42
ヨハネスブルグは年齢と体調で、30頭に申し込みをそもそも絞っているそうです。
8. Posted by TRATS 2018年11月02日 23:53
マクフィには期待してます。ガリレオ系でもそろそろ成功種牡馬が出ていいはず。
9. Posted by TRATS 2018年11月02日 23:55
↑間違えました。ドバウィ系でした
10. Posted by ノエルザブレイヴ 2019年02月17日 15:51
インティが怒涛の7連勝でダートでてっぺんを獲ったことで果たしてケイムホームは九州でどうなるのでしょうか。
11. Posted by Organa 2019年02月17日 21:23
民間ならすぐにでも北海道に移して急遽種付け料もアップさせるところなのでしょうが、JBBAですからね。もしかすると九州供用で100頭越えということもありえるかもしれません。