音が大きくなったので、ああ、ここだ。と思った。
と、こんな感じでだいたいの場所を突き止めるまでは、以前に起こった時にも成功していたので、
次にやることもいつもどおり決まっていた。
手を伸ばして、部屋の灯りを消す。
と、いつもならここで、辺りをつけた場所の暗がりに、闇の濃い場所が見える。
当然この時も見えた。が、何かいつもと違う?
左目だけちょっとよく見える。
さっきまで目薬で目がしょぼしょぼするので、左目だけ閉じていたのだが、
灯りを消すときに左手を伸ばしたついでに、閉じていた目を開いていた。
そのせいで、左目だけ暗闇に慣れていたようで、同じ暗闇でもそっち側だけクリアに見えるようだった。
ああ、と思って右目を閉じる。と、例の暗がりが少しはっきりした。
暗がりの上の方に、白い点が2つ。人の白目の部分だと分かった。
うっすらとだが、形で、黒目が自分の方を向いているのを意識して、ぎょっとした。
そして、うずくまり、無言で目だけを向けているその様子から、直感的に相手が手足を縛られて、口を塞がれているのを感じた。
寝息のようなゆっくりとした呼吸音は、鼻からしか呼吸ができず、縛られて、身動きの取れない状態にされた人間が、
パニックを起こさないように、意識してゆっくりと鼻呼吸しているからなんだというのが分かった。
時間が経つと、やはり人影はゆっくりかすれて消えていった。
なぜ、その人影が自分のところに現れるのかは未だにわからない。
それが縛られ、口を塞がれた人影だと分かってから、何日かたっているが、その後自宅であの呼吸音を聞いたことはない。
でも、来週からまた、出張になるので、そうすればまた、あれが出てくるだろうと思ってる。
その時は、今度は灯りをつけたまま両目を閉じてよく目を暗闇に慣らしてから、灯りを消してみようかと思っている。
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