AMEMAN17826009_TP_V (1)

あれはいつだったか、確か自分が中学生のときだったと思うが、日曜日の夜、ベッドに寝そべってテレビを見ているときだった。 
CMになったので、今までの体勢を変えて、うぅ~んと伸びをした際、なんとはなしに、部屋の端に置いてある日本人形の方に目をやった。 

日本人形は透明のケースの中に入っているのだが、蛍光灯の光が反射し、部屋の中を写し込んでいる。 
ベッドに横になる自分の姿も写っている。 

しかし、同時に、ありえないものが一緒に写りこんでいた。

伸びの姿勢のまま、固まってしまった。人間、ああいうときって動けないんだね。 
ありえないことが起きている現実について理解しようと、脳がフル稼働している。 

数秒後、ハッと我に返り、目を逸らす。どうせ、幽霊の正体見たり・・・的な見間違えだろうと思った。 
もう一度、ケースに目をやった。 

やっぱり、ソレは写っていた。。。

ソレははっきりとした犬の顔だった。 

チロ・・・俺は独り言のように呟いた。 

俺がまだ小さい頃、うちには犬がいたらしい。親とチロが散歩している後を俺がついていく、という場面をビデオで見たことがある。 
だけど、チロは、ある日の朝、えさに農薬を投げ込まれて死んでいた。 

そうか、会いにきてくれたのか、チロ。一粒の水滴が俺の頬を伝う。俺は泣いていた。 

そして、そっと、人形ケースの角度を変えた。もうそこにチロはいなかった。