実話なので適当にフェイクも入れて投下。

何年か前に大学仲間数人で飲んでいたら、Aの近くで突然携帯の着信音がして、探るとちょうど椅子と椅子の間に挟まるようにスマホが落ちていて、それが鳴っていた。

誰の物でもなくて、どうやら前の客の落とし物らしく、それがまたしつこいくらい長時間鳴り続けていて、画面を見れば『おかん』。

「おかん・・・って、こいつの母親かよ~!www」と、思いっきりウケて、こっちも酒が入っているもんだから、Aが悪乗りして「もしもし、おかん?うん俺だよ」とスマホに出た。

俺たちも「おいおい!詐欺してんじゃねぇよww」と大笑いしていたが、最初半笑いで受けていAの表情が段々固まってきて、「あ、いえ・・・自分は違います。スマホが落ちていて・・・それで・・・いえ・・すみません・・・」と。

スマホを切ると、店の受付に預けに行って、戻ってきた時には何とも言えない表情をしていた。
そしてボソッと、「あのスマホの持ち主、たぶん死んだ。俺、もう帰るわ」と帰りかけるんで、俺たちも慌てて一緒に出た。

道々聞いてみると、スマホの主は同年代の下宿生で、どうやらさっき下宿先で倒れて病院で心肺停止だと、病院に付き添っていた友人から故郷のご両親に連絡があったらしい。

母親は信じられず、息子さんのスマホにかけたら、なぜかスマホがあんな所にあって、悪乗りしたAがなりすましで出てしまった。
Aが息子さん本人じゃないと判った時、お母さんは悲鳴を上げて号泣したとか。

今ではあの時の話は禁句というか、無責任だけどなんとなく俺たちの間では『無かった事』になっている。