サローネグループが挑むパスタ通販。高級レストランが見出した新たな勝機に迫る
横浜本店『サローネ2007』のほか、都内に4店舗(『サローネ トウキョウ』、『イル テアトリーノ ダ サローネ』、『ビオディナミコ』、『ロットチェント』)、大阪に1店舗(『クイントカント』)を展開するサローネグループ。それぞれ個性溢れる料理を提供し、予約が取れないイタリアンレストランとして人気を博している。
そんなサローネグループにも新型コロナウイルスによる影響が直撃。この厳しい状況の中で取り組んだのが通販によるパスタの販売だった。サローネグループの総料理長・樋口敬洋氏に『サローネ トウキョウ』で話を聞いた。
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総料理長自らパスタを手売りも…
『サローネ トウキョウ』は、2018年3月に、サローネグループの東京旗艦店として『東京ミッドタウン日比谷』にオープン。ところが、コロナ禍で『東京ミッドタウン日比谷』が4月8日から5月末まで休館。満足に厨房にも入れず、テイクアウトの販売もできなかった。
「何かしなければという危機感がつのり、営業自粛になる前日から『ロットチェント』(日本橋)の店頭を間借りして、トマトソースとパスタのセットを僕が手売りしました。とにかく動こう、その一念でした」
樋口総料理長自らが販売したパスタソースは、サローネグループが創業当初から作り続けてきたトマトソースだ。香味野菜を8時間炒め、真っ黒になったものをトマトの水煮と合わせ、さらに煮詰める。そのため、「これがトマトソースか」と驚くほどコクがある。パスタは低加水パスタフレスカ。数年前、サローネグループと老舗製麺所「浅草開化楼」が共同開発したものだ。
コロナ禍で手打ちの生パスタを販売したイタリアレストランも多い。ところが、生パスタは水分を多く含むため、麺がくっつき、団子状になったものもあった。方や、低加水パスタフレスカは加水率が30%。水分が少ないため、くっつきにくく、モチモチとした歯ごたえと歯切れの良さに特徴がある。
とはいえ、『サローネ トウキョウ』の顧客が、わざわざ『ロットチェント』まで買いに来てくれるはずもなかった。樋口総料理長が出張っても、1日に10個程度しか売れなかった。テイクアウトや通販に適した低加水パスタフレスカと特製パスタのソースをどう売るか。それが樋口総料理長の課題だった。
永島義国シェフが新たなソースを開発
樋口総料理長がパスタを店頭販売している間、『サローネ トウキョウ』の永島義国シェフが新しいソースの開発を急いでいた。
「永島シェフはイタリアで5年半修業しました。イタリア時代に作ってきたパスタソースのレシピをたくさん持っています。新しいソースの開発には、自分の想い出や技術をお客様にお伝えしたいという思いもあったようです」
4月12日、新製品が完成。シチリア風白身魚のラグーや本マグロのラグー、春野菜のクリームソースなど10種類の特製ソースだ。新しいパスタソースに加え、既存のトマトソースを、低加水パスタフレスカと一緒に販売することにした。
その後、トスカーナ風クリーミーミートソースも仲間入り。イタリア修業中、永島シェフが現地で一番美味しいと思ったミートソースだ。
「ミートソースは、永島シェフがトスカーナの山奥にあるレストランで教えてもらいました。牛肉の中挽きだけを使うので旨味もありますが、あっさりしています」
ベシャメルソースも加えることで、大人も子どもも楽しめるクリーミーなミートソースが誕生した。
「これまでうちのコース料理にはミートソースのパスタを組み込めませんでした。この機会に、たっぷりの赤ワインで仕上げた、永島シェフが大好きなミートソースも販売させていただくことにしました」