それぞれの最終楽章・親としてのがん患者(7)
国立がん研究センター中央病院緩和医療科 小嶋リベカさん
家族と何げない、しかしかけがえのない日常を重ねたいと願い、病院でつらい治療やリハビリを続ける患者さんがいます。
40代の母親Gさんは肺がんが見つかった時点で手術ができない状態でした。薬物療法を続けたものの1年後に転移が見つかり、症状を緩和するために入院しました。
Gさんはすでに呼吸が苦しそうで、夫婦で相談に来ました。10歳の一人娘に「がんである」「簡単には治らないと言われ、入院が長引く」「家事などで代わりにお願いすることがある。分からなければいつでもメールで尋ねてくれていい」と伝えていました。娘は「2分の1成人式にママにも出てもらえるの」と聞いたといいます。
相談の中でGさんは、「一番の望みは、娘に毎日『行ってらっしゃい』『お帰りなさい』を言ってあげられること」「死ぬのは怖くない。でも今死ぬわけにはいかない。せめて娘が成人するまでは」と訴えました。長い沈黙の後「10歳の娘が親を亡くす気持ちが分かりません。娘に何を残したらいいでしょうか」と絞り出すように尋ねてきました。
母と娘は日頃から交換日記を…
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