ANALYSIS

米国の「核の傘」、韓国から信頼を失いつつある理由

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韓国が自国の核兵器を持ちたい訳、米国の「核の傘」の信頼は

ソウル(CNN) あちらが持っているのだから、こちらにも必要だ。

それが自国の核兵器開発を望む韓国人の根本的な言い分だ。自分たちの身は自分たちで守る。好戦的な北の隣国はすでに事実上の核保有国となり、国の指導者の金正恩(キムジョンウン)総書記が核兵器備蓄の「飛躍的な増加」を宣言している。

これに対する反論は想定される結果をふまえたもので、長らく韓国が核に向かうのを阻止してきた。核を開発すれば米韓関係にひびが入るだけでなく、制裁を招いて韓国の原子力発電の利用を止めざるを得ない可能性もある。言うまでもなく、この地域で軍拡競争が引き起こされることはほぼ避けられないだろう。

だが、韓国世論が付いている側は変わってきているようだ。

10年前、韓国の核兵器保有を求める声は非主流派で、メディアでもまともに取り上げられることはほとんどなかった。だが今日では議論の中心になっている。

最近の世論調査によると、韓国人の多数が自国の核兵器計画を持つことを支持している。以前はこうした意見に目もくれなかった著名知識人も、軒並み立場を変えている。韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領でさえ、こうした意見を口にしている。

いったい何が起きたのか?

米韓合同演習で発射されるミサイル=2022年5月25日/South Korean Defense Ministry/Getty Images
米韓合同演習で発射されるミサイル=2022年5月25日/South Korean Defense Ministry/Getty Images

長年の問いと新たな答え

支持派にとっては、「米国政府は核戦争の際、サンフランシスコを犠牲にしてソウルを選ぶだろうか?」という長年の問いに対する答えが、韓国の核開発ということになる。

韓国は現在、核の傘も含む米国の「拡大抑止戦略」の下にある。つまり韓国が攻撃された場合、米国は支援に駆け付ける義務がある。

一部の人々にとって、これは安心材料として申し分ない。だがそうした「支援」が具体的にどういった形で行われるかについては、いまひとつはっきりしていない。長年の問いが示しているように、報復として米国領土に核攻撃が行われる可能性を突きつけられれば、米国が自国の関与を制限する無理からぬ理由となるだろう。

おそらく、そうした問いは口にしないのが得策だ。韓国世宗研究所のチオン・シオンチャン氏の言葉を借りれば、「韓国が核を保有すれば、北朝鮮の攻撃に自分たちで対処できる。そうなれば米国が関わるべき理由はない」

これまでずっと信じ切っていた米国の保護に、韓国が疑問を抱くようになったのには他にも理由がある。その中でもとくに大きな存在がドナルド・トランプ氏だ。前米大統領は軍事費を理由に、韓国に駐留する2万8500人の米軍兵士を撤退させる意向を隠そうともせず、そもそも米国がなぜ韓国を守らなければならないのかと疑問を呈した。すでにトランプ氏は2024年大統領選への出馬を表明していることから、こうした問題は今も韓国国民の頭に大きく残っている。

「米国は以前ほど信用されていない」と、カーネギー国際平和基金のアンキット・パンダ氏も言う。「たとえバイデン政権が歴代政権と同じようにふるまい、しかるべき安心感を韓国に発信したとしても……次期米政権が韓国に対して再び態度を変える可能性を、政策担当者は頭の片隅に置いておかねばならないだろう」

だが、信頼の喪失はトランプ氏の発言だけにとどまらない。

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