男性の育休取得率「85%」目指す、しかし父親は及び腰 日本

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新宿駅へ向かって歩く会社員ら=3月16日/Stanislav Kogiku/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

新宿駅へ向かって歩く会社員ら=3月16日/Stanislav Kogiku/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

香港(CNN) 父親に肩車されて満面の笑みを浮かべる子ども、紅葉に囲まれた公園を散歩する親子――それが日本の「イクメン」の典型的なイメージだ。

イクメンとは、日本語の「育児(子どもの世話)」と「イケメン(かっこいい男性)」をかけあわせた言葉だ。

日本の当局はこの10年、悪名高い長時間労働への対策としてイクメンという言葉を周知してきた。長時間労働はワーカホリックな父親から家族との時間を奪い、専業主婦にキャリアの道を閉ざすだけでなく、出生率を世界低水準に押し下げる要因となっている。

こうした状況を打開するラストチャンスを逃すまいと、岸田文雄首相は先ごろ、児童手当の拡充をはじめ、現在14%の男性社員の育児休暇取得率を2025年度までに50%、30年度までに85%に引き上げることを目指すなど、数々の政策を発表した。

だが世界第3位の経済大国である日本は長い間、少子高齢化に悩まされており、首相の計画で本当に状況が変わるのか国内では懐疑的な声もあがっている。

若者の労働問題に取り組む「POSSE」の岩橋誠氏は、政府の計画は善意によるものだとしながらも、日本人男性の多くは雇用主が反発する可能性を恐れて育児休暇を取れずにいると語った。

21年に国会で可決された法案では、日本人男性は様々な形で4週間まで育休を取ることができるほか、賃金の最大80%が支給されることになっている。

だが岩橋氏によれば、こうした法律にもかかわらず、男性は育休を取ったら昇進に響くのではないか、あるいは責任の軽い別の役職に配属されるのではないかという不安をいまだに抱いているという。

日本では男女を問わず育休を取る社員への差別は違法とされているが、なかでも契約社員はとくに弱い立場にいると岩橋氏は言う。

いずれにせよ、男性の育休に多少手を加えたところで、出生率の低下に大きな変化はないだろうと岩橋氏は付け加えた。

明治大学経済学教授の加藤久和氏によれば、この数年で大企業は以前よりも男性の育休に寛容になってきたものの、中小企業はまだまだ乗り気ではないという。

加藤氏によれば、中小企業は育児休暇によって労働者不足といった問題に直面するのを恐れており、それが将来的に育休取得を希望する若い父親にプレッシャーとなっているという。

岸田首相も記者会見でこうした懸念を認め、中小企業向けの手当を検討すると約束した。詳細は6月の骨太の方針で発表される予定だ。

企業に育休取得の状況について開示を促し、取得率上昇を目指す計画も明らかにした。

「ラストチャンス」

日本の出生数は22年、統計を開始した1899年から初めて80万人を下回った。日本政府は少子化の傾向が新たな局面を迎えたことに警戒感を募らせている。

岸田首相は「これから6年から7年が少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだ」と警告した。

香港科技大学で公共政策と社会科学を教えるスチュアート・ギーテルバステン教授は、出生率低下は根強い文化的要因の現れである場合が多く、政策変更に対する反発を招く可能性が高いと注意を促した。そうした要因は、労働文化から性別に対する姿勢まで多岐にわたるという。

「男性の育休取得率を上げることは間違いなく政策として正しい。多くの男性と(女性にも)プラスの結果をもたらすのは確かだろう。だが世間に広がる文化的な規範や姿勢が変わらない限り、マクロレベルでの影響は限定的になりかねない」(ギーテルバステン教授)

6月に結婚予定のコラナ・リキさん(26)は、家庭を持つ上での最大の懸念に生活費の高さがあると述べた。

都心で日本の総合企業大手のエンジニアとして働くコラナさんは、比較的賃金が高い方だと自認しているが、現在は横浜で実家暮らしをしている。

結婚後は両親の家を出るつもりだが、東京の家賃が高いため、やはり横浜にとどまるしかなさそうだという。

米国コンサルティング会社マーサーの生活費調査によると、外国人駐在員の生活費で見た場合、日本は世界9位だった。

コラナさんによれば、子どもが2人ほしいが、もっと効果的な政策が出てくれば3人目以降も考えるという。

日本では、女性が生殖可能期間に産む子どもの人数に相当する「出生率」は1.3にまで落ち込んだ。人口の安定維持に必要な2.1からは程遠い数字だ。

専門家もずいぶん前から指摘している通り、若者の間では悲観的な考えが広まり、仕事や景気低迷のプレッシャーで将来に確信が持てなくなっている。

岸田首相は、若者労働者の賃上げや経済支援を拡充する市場改革を計画していると述べた。またフリーランスや自営業者への支援導入も約束し、児童手当や教育、住宅への支援を拡充すると語った。

経済学教授の加藤氏は、新たな政策だけでは日本の人口問題は解決できないだろうと感じている。

だが育休促進については希望の光も見える。

加藤氏は、家族政策の改善だけでなく、ジェンダー平等にもつながる良い提案だと思うと述べた。

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