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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ビートルズが敬愛してやまなかったリトル・リチャード(269)

Rock Legend Little Richard Dead at 87 | lovebscott.com

1 悲しい知らせ

突然の訃報に驚きました。2020年5月8日、偉大なロックンローラーであるリトル・リチャードが87歳でこの世を去ったのです。彼は、ビートルズだけでなくローリング・ストーンズなど世界中のロックミュージシャンたちに多大な影響を与えました。1950年代を代表する偉大なロックンローラーの一人でした。

ビートルズのメンバーの中でもポール・マッカートニーは、リトル・リチャードの熱烈なファンで、彼のハイトーン・ヴォイスに憧れ、自らもリチャードのような声を出したいとアーリー・ビートルズ時代から盛んにカヴァーしていました。「Long Tall Sally」は、彼の十八番でコンサートでも良く演奏していました。


The Beatles - Long Tall Sally - Live

今回は、予定を変更してリトル・リチャードとはどんなアーティストだったのか、そして、彼とビートルズとの関係について語りたいと思います。

 

2 ロックン・ロールにショーマンシップを持ち込んだ

(1)奇抜なヘアスタイルと衣装

jimmarshallphoto𝐇𝐚𝐩𝐩𝐲 𝐁𝐢𝐫𝐭𝐡𝐝𝐚𝐲 𝐋𝐢𝐭𝐭𝐥𝐞 𝐑𝐢𝐜𝐡𝐚𝐫𝐝⁣

リトル・リチャードは、子どもの頃から音楽的才能に恵まれており、仕事をしながらプロの歌手として歌い続けましたが、長い間鳴かず飛ばずでした。それでも諦めずに音楽活動を続け、1955年にリリースしたシングル「Tutti Frutti」が大ヒットして、一躍スターダムにのし上がりました。

彼の熱狂的なリズムとワイルドでエネルギッシュで突飛なステージ・パフォーマンスは、世代を超えてロッカーたちに影響を与えました。ピアノに背を向けたり、片足を上げたりして弾くなんて、まるでアクロバットみたいな演奏でした。

リチャードは、あらゆる意味でロックンロールの先駆者でした。ロックの世界で最初に奇想天外な衣装やヘアスタイルをステージに持ち込み、大胆なセックスアピールで1950年代の観客を驚愕させたのです。

Little Richard 1971 | Little Richard: Rare Photos of Rock and Roll’s Original Wild Man | LIFE.com

しかし、派手なステージパフォーマンスだけでは、彼が人種を越えて多くのファンに愛されたことを説明できません。アーノルド・ショーは、「The Rockin' '50s」で「彼は、荒々しく狂ったように歌い、ロックンロールの限界を外へ向けて拡大させたのだ。彼は、自分が動くことで興奮していた。髪の毛を高く盛り上げたポンパドールと目の覚めるような衣装でショーマンシップのロイヤルだった。」と表しました。

 

(2)リズム&ブルースからロックンロールを独立させた

また、ピープル誌は、次のように書いています。「彼は、ゴスペルとそれに似つかわしくない性的表現をポピュラー音楽に持ち込んだ。そうして、黒人のリズム&ブルースをロックン・ロールへと変化させた功績については、彼以上に称賛に値するパフォーマーはいない。」

また、Dave Given Rock 'n' Roll Stars Handbookは、「ロックン・ロールに意味、深みを与えることで彼は、その後の他の偉大なアーティストのキャリアにインスピレーションを与えた。」と評価しています。ジェイムズ・ブラウンエルヴィス・プレスリージーン・ヴィンセントジェリー・リー・ルイス、ジョー・テックスなどですね。

リトル・リチャードは、ゴスペルやブルースの源泉を深く掘り下げ、命を懸けているかのように猛烈にピアノを叩き、叫んだことでエネルギー・レヴェルを数段上げ、それまでに人々が聴いたことのある音楽とは全く違うものを生み出したのです。

ロック史家のリッチー・ウンターバーガーは、こう語っています。「彼は、R&Bからハイパワーなロックンロールという似て非なるものへとヴォルテージを上げる上で重要な役割を果たした。」

これらの評価を踏まえると、「リトル・リチャードがR&Bにゴスペルの要素を加え、より強力なロックン・ロールへと変化させて新たなジャンルを形成した。」といえるかもしれません。

(3)次の世代に大きな影響を与えた

リチャードの影響は、第一世代の50年代のロッカーたちだけにとどまりませんでした。ビートルズローリング・ストーンズを含む第二世代の60年代のブリティッシュ・インベイジョンの多くのグループも彼を師匠として見ていました。

タイム誌のジェイ・コックスは、リチャードは「悪魔のような力のロックで爆発させた。彼は、暗黒の力に取り付かれているように見えた。くだらない歌のように聴こえたが、しかし、そのビートは、不純なもののどこかにある神出鬼没な快楽をほのめかしているようだった。」と語っています。

ミック・ジャガー、プリンスらのステージ上でのセックス・アピールも、多分にリチャードの影響を受けているといっていいでしょう。

3 恵まれなかった少年時代

1932年12月5日、ジョージア州メイコンでリチャード・ウェイン・ペニマンとして生まれたリトル・リチャードは、12人兄弟の1人で、近くの教会でゴスペルを歌っていました。しかし、父親は、息子が音楽に関心を持っていることを気に入らず、ゲイであることを毛嫌いして、彼が13歳の時にメイコンの白人の家庭に養子に出してしまいました。

しかし、彼の音楽への関心が薄れることはありませんでした。少年時代の友人の一人は、後にソウル界の大御所となったオーティス・レディングで、ペニマンは、メイコン市公会堂の売店で働いていた時にR&B、ブルース、カントリーを聴きました。

彼は、ティック・トック・クラブで演奏し、地元のタレント・ショーで優勝した後、1951年にRCAと初のレコード契約を結び、その時に「リトル・リチャード」と名乗ったのです。彼がそう名乗るようになったのは15歳の時です。

彼の名字を「ペニーマン」と読み間違える人々に嫌気がさしていたこともあり、当時、R&Bやブルースの世界で活躍していたリトル・エスター(エスター・フィリップス)やリトル・ミルトン(ミルトン・ジェイムズ・キャンベル)らにあやかって、自分のファースト・ネームの前に「リトル」をつけました。

話が脱線しますが、エスター・フィリップスは、ビートルズの「And I Love Her」を「And I Love Him」と変えてカヴァーしました。


Esther Phillips - And I Love Him

彼の特徴的なピアノ・スタイルは、サウス・カロライナ州のR&B歌手でありピアニストでもあるエスケリータから学んだもので、ヘアスタイルも彼をマネて髪を盛り上げたポンパドールにしました。いや、リチャード師匠、まんまパクってますやん(^_^;) 

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4 ド派手なロックン・ロールの開祖

(1)やっとチャンスが訪れた

リチャードは、長い間、下積み生活を続けていましたが、やがて、ロサンゼルスのスペシャルティ・レコーズのプロデューサーであったアート・ループの目に止まりました。彼は、レイ・チャールズのようなサウンドを持つアフリカ系アメリカ人の歌手を探していたのです。

彼は、ニューオリンズにリチャードを招待したのですが、テープ録音の休憩中にリチャードは、印象的なスキャット「Wop-Bop-A-Loo-Bop、A-Lop-Bam-Boom」が含まれている「Tutti Frutti」を披露しました。

ループは、その曲に魅了され、性的な意味が含まれているオリジナルの歌詞を書き直すよう指示し、1955年のクリスマス直前にこの曲をリリースしました。それは、12月の終わりまでにチャートの21位にランクインしました。ついに、彼の才能が認められたのです。


Little Richard - Tutti Frutti (1956)

 

(2)ド派手なパフォーマンス

Little Richard

それまで多くの白人の若者たちは、黒人がブレーキを外して歌っているのを聴いたことがありませんでした。しかし、「Tutti Frutti」がリリースされたとき、いくつかのラジオ局は、こういったギンギンの曲を放送する時代が到来したと考えました。ここから、ロックンロールの快進撃が始まったのです。

激しいシャウト、派手な衣装、そして陽気で性別を超えた人格を持つロックンロールの創始者であるリトル・リチャードは、新しい芸術の精神とサウンドを体現した存在でした。彼は、1956年の「Tutti Frutti」を皮切りに、同年の「Long Tall Sally」「Rip It Up」、1957年の「Lucille」、そして1958年の「Good Golly Miss Molly」と、シンプルで跳ねるように生き生きとしたピアノの演奏、ゴスペルの影響を受けたヴォーカルの絶叫、そして性的な感情を誘いあるいはほのめかした歌詞を原動力としてヒット曲を連発しました。

彼のビートルズに対する影響はとても大きかったので、もう少し彼のお話を続けます。

 

(参照文献)RollingStone, The New York Times, Pat DiCesare, GRIN

(続く)

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