★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ブライアンが亡くなったって?冗談だろ?(300)

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ブライアンの悲報に接し沈痛な表情を浮かべるリンゴ、ジョージ、ジョン

1 誰もが激しく動揺した

(1)警察への通報を遅らせた

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アリステア・テイラー(右側の男性)

ビートルズは、ウェールズ北西部のバンガー(バンゴール)にいましたが、そこへ、マネージャーのブライアン・エプスタインが亡くなったという知らせが届きました。彼らは、急遽ロンドンに戻ることにしました。彼らより先にブライアンのアシスタントのアリステア・テイラーが到着しました。

ブライアンの遺体を発見した人々は、まだショックを受けたままで、気持ちを落ち着かせようとブランデーを飲みに書斎に向かいました。彼らは、まず家の中に違法薬物がないことを確認するために、警察への通報を遅らせたのです。もし、そんな物が発見されでもしたら大変なことになりますからね。幸いなことに、何も見つからなかったのでしょう。ただ、ビートルズのメンバーの話によれば、ブライアンもすでに薬物を摂取していたようです。

(2)警察より先に新聞記者が来た

「警察に通報している間の数分間にドアベルが鳴った。知り合いの記者だった。彼は、私を見るなりこう尋ねた。『ここで何をしているんだ?ブライアンが病気だと聞いて来たんだよ。』」

私はこう応えた。「いいや、彼は元気さ。外出しているんだよ。彼が私を電話で呼んだんだ。彼がどんな人か知ってるだろう?いつもの彼だったよ。私は、日曜の朝に訪ねて来たんだが、彼は、車で外出してしまった。」

「私は、車庫のシャッターが閉まっているのかどうか気になった。もし、車がそこに駐車してあったら、記者が『どの車で外出したんだ?』と聞くだろうから。このニュースが報道される前に、どうにかしてブライアンの母親のクィーニーを見つけなければいけないと思っていたんだが、見つからなかった。」*1

テイラーは、ブライアンが亡くなっていたことを知っていたのに、なぜとっさにウソをついたのでしょうか?おそらくこの記者に本当のことを言うと、あっという間に他の新聞記者が押しかけてきて、現場が大混乱に陥ることを恐れたのでしょう。車で出かけたと言ったって、ブライアンの車がガレージに置いたままならすぐにウソだってバレてしまいますから、動揺していたにしてもとんでもないウソをついてしまったものです(^_^;)

彼は、マスコミにかぎつけられるより先に、ブライアンの母親に連絡しようとしたのですが、なかなか彼女は捕まりませんでした。それにしても、警察より先に新聞記者が来るとは彼も予想しなかったでしょう。本当に今も昔もマスコミの情報をかぎつける能力はすごいですね。

 

2 ビートルズはバンガーにいた

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バンガーに到着したビートルズとヨーギー

その日、ビートルズは、バンガーに滞在していて、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーから超越瞑想マントラを伝授されていました。

「ヨーギーからマントラを伝授してもらった時のバンガーでの儀式は良かった。我々は、マハリシが一人ずつに儀式をしてくれたので、前の人が終わるまで部屋の外で待って、それが終わってから中に入ったんだ。部屋にはたくさんの花が敷き詰められ、カーテンも少し引かれていた。お供え物として切り花をマハリシに持って行かなければならなかった。彼は、数多くの花に囲まれていたが、花はその時代の象徴だったから、手に入れるのはとても簡単だった。花を手に持って靴を脱いで、マハリシがいる暗い部屋に入った。それは、とても刺激的だった。ブラックプールのジプシー・ローズ・リーのテントを思い出したよ。」*2

マントラとは、サンスクリット語で宗教的な意味を持つ短い単語を抽象的に表した言葉です。日本語では「真言」と翻訳され、特に密教で良く使われます。儀式のときに唱えられる不思議なパワーを与える言葉とされています。おそらく、ヨーギーがマントラを唱えながらビートルズに霊験を与える儀式を行っていたのでしょう。

その後、ビートルズは、日曜日に遅めの昼食をとった後、バンガーにある大学のキャンパス内にいたのですが、その時、寮に設置されていた公衆電話の呼び出し音が鳴りました。しばらく電話が鳴り続け、当時、ポールの恋人だったジェーン・アッシャーが中に入って電話に出ました。ブライアンのアシスタントのピーター・ブラウンは、ジョージの妻のパティから電話番号を教えてもらっていたので電話したのです。彼は、すぐにポールと話をさせてくれと伝えました。

 

3 ビートルズに激震が走った

(1)冗談だろ?

「僕らは、バンガーでブライアンが亡くなったという話を聞いた。混乱し、その情報が信じられずに『悪い冗談はよせよ!』と思って打ちひしがれた。人って聞きたくないことを耳にすると、考えることを止めちゃうんだ。それをどう処理したらいいのか分からなくなる。当時撮影された写真に映った僕らの顔を見ると、『これは何なんだ?どういうことなんだ?友人がいなくなってしまった。』という感じだよね。何よりも『大切な友人が亡くなってしまった。』という感じだった。我々は、みんな取り残されてしまった。僕らは、希望と花を持ってバンガーに到着したのにこんな結末だった。そして、みんなそこから立ち去った、本当にノロノロとね。」*3

(2)マスコミが殺到した

ブライアンの死を取り巻く状況は不透明でしたが、彼が亡くなったという情報はすでにイギリスのマスコミに届いていました。記者たちは、ビートルズにインタヴューしたいと熱望して、大学の門の周囲に集まり始めていました。

「誰かが表に出てきて声明を出すまで、マスコミは立ち去りそうになかった。関係者全員が私たちの部屋に来て、代表として誰が話すべきかについて話し合った。ジョンは、自分がやると言って出ていき、レンズの大群に取り囲まれ、質問攻めに合った。」*4

インタヴューは、ホールの外で行われました。ポールは、一足先にロンドンへ向かっていましたが、ジョン・ジョージ・リンゴはプレスに短時間で応えました。ジョンは、最初にこう語りました。「何と言ったらいいのか分からない。僕らはさっき聞いたばかりで、言うべき言葉が見当たらない。ただ、彼は…彼は温かい仲間だった。それがこんな酷いことになるなんて。」

ジョンは、ビートルズのリーダーとしての責任感から、インタヴューを受けたのでしょう。しかし、いかに彼といえども、悲報を耳にして駆けつけたばかりで、ショックを受けて頭が混乱している状況でしたから、ただただ悲しみを表明するしかありませんでした。リンゴとジョージもインタヴューに応えました。ジョージは、こう応えました。「死などというものは存在しないんだ。肉体が滅んでも、人の生命はどこにでも存在して、どこまでも続くんだよ、本当に。ブライアンがそうであることを知っていることで慰められる。」

 

4 ニューフィールドの回想

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警官の到着を不安げに見つめる近所の人々

ブライアンの遺体を最初に発見したジョアン・ニューフィールドは、ジェフリー・エリスとピーター・ブラウンがチャペル通りに到着した時の反応に驚きました。

「ピーターと私は仲良しで、彼には本当に戻ってきてほしいと思っていたの。私が彼に最初に聞いたのは、なぜブライアンはキングスレーヒルから戻ってきたのか、ということだったと記憶しているわ。二人ともそれには応えず、ただ、階段を登り始めた。変だな、何かおかしいと思ったのを覚えている。」

「彼らが悲嘆に暮れているだろうと思ったけど、そんな風には見えなかった。ピーターがハグしてくれると期待していたんだけど、そんなことはしてくれなかった。彼は、あくまで冷静だったし、ショックを受けていたのかどうかは分からない。私は、キングスレーヒルで何があったのか、何度も自問自答してみたの。でも、それって、ブライアンの死について私が持った疑問の一つに過ぎなかったわ。」*5

ニューフィールドは、エリスとブラウンが冷静だったことを意外に思ったようです。少なくとも親しいブラウンは、ショックを受けている自分をハグして、慰めてくれるだろうと期待したのに、何もしてくれませんでした。彼らが本当に冷静だったのか、それともあえてそれを装っていたのかは分かりません。

ニューフィールドは、なぜこんなことになってしまったのか、どうして自分たちがブライアンの死を防げなかったのか、そのことが頭を離れなかったのでしょう。もちろん、彼らには何の責任もありません。彼らが酔い潰れたブライアンを路上に放置した結果、彼が車に轢かれて死んだというなら話は別ですが。彼は、自宅で彼らの手の届かないところにいたのですから。ただただ不運だったというしかありません。

5 300回を迎えて

余談ですが、このブログもついに300回を迎えました。私としては一つの通過点と思っていますが、それでも感慨深いものがあります。読者になってくださっている方もじわじわと増えており、本当にありがたいことだと感謝しています。とっくにネタが尽きてしまうかと思いきや、まだまだ先は長そうですね。偉大なビートルズの伝記作家マーク・ルーイスン先生と、どちらが長く書き続けられるかの勝負になりそうです(笑)私が先生に勝てるとすれば、そこだけです。

 

(参照文献)ザ・ビートルズ・バイブル

(続く)

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*1:アリステア・テイラー「ブライアン・エプスタイン物語」デボラ・ゲラー

*2:ポール・マッカートニー「メニー・イヤーズ・フロム・ナウ」バリー・マイルズ

*3:リンゴ・スター「アンソロジー

*4:シンシア・レノン「ジョン」

*5:ジョアン・ニューフィールド「ブライアン・エプスタイン物語」デボラ・ゲラー