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推理小説読後感その1(ネタバレなし)〜「密室大図鑑」「花の棺」

2021年08月06日 | ミステリー小説

    

 有栖川有栖氏の「密室大図鑑」(創元推理文庫)という書がある。前書きによると「ビギナーにもマニアにも楽しめる密室のガイドブックで、読んでも見ても楽しい本」がコンセプトである。「見ても」というのは磯田和一氏による密室の見取り図中心のイラストが載っていること。国内外から厳選された40作品が紹介された、まさに図鑑と呼べる一冊だ。

 推理小説、特に密室ものが大好きな私はかつて「完全版密室ミステリの迷宮」監修・有栖川有栖(洋泉社)をここで紹介したことがあるが、同じ有栖川氏による本書に掲載されている作品も魅力にあふれた面白そうなものばかりである。その中で特に読んでみたい作品をいくつか入手してみた。軽く読後感を記載しようと思う。

 まず国内からは山村美紗の「花の棺」(光文社文庫)。作者は女優の山村紅葉さんの母上で、よく2時間サスペンス・ドラマの原作者になっていることは知っていた。しかし、これほど本格的な推理小説を書く人だとは知らず新たな発見であった。本作品は後にシリーズ化するアメリカ副大統領の娘キャサリンとそのエスコート役の浜口一郎のコンビが探偵役である。そして京都と華道界という純日本的な世界が舞台となる。この「日本的」というのが、茶室内で起きる密室殺人謎解きのキーワードともなっている。

    

 この作品を読んで山村美紗という作家はトリックメーカーだと知ることとなった。そのため他の作品にも興味がわき読んだのが「京都・十二単殺人事件」(講談社文庫)である。これはキャサリン&浜口が活躍する短編集だが、冒頭の「女富豪密室殺人」が文字どおり密室もの。どちらかというと心理的トリックの作品かもしれないが、キャサリンの解決は鮮やかであった。

    

 そして両作品には私の大好物の見取り図が挿入されている。「密室大図鑑」では二次元に加えて三次元の図も描写されている。あくまでも磯田氏の想像を具現化したものと言うが、作品のさらなる理解の助けとなる。明るいキャサリンと実直な浜口のコンビも捨てがたいキャラで、作品が愛される要素になっていると思う。

 一番面白いトリックの内容に触れることができないので、言葉足らずではあるのだが「密室大図鑑」掲載の作品を今後何点か紹介したい。



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