令和が発表された日のこと
新元号は何になるんだろう。
普段は全然元号のことなんて気にしていなくて、むしろ元号なんてなくなれって思っていた。しかしここ2~3日は元号のことばかりが気がかりになり、いてもたってもいられなくなってしまった。
新元号が発表される日の当日。僕はジムに行った。ジムにはテレビがある。ソワソワしすぎて、一人で元号発表の速報を見るのがイヤだったのだ。
10時頃のジムはいつも通りの風景。しかし元号発表の11時半が近づくと、テレビの前に人がわらわらと何十人も集まってきた。もはやジムがジムとして機能していない。
そりゃ元号だもんな……。そうでなくちゃ……。
そう思っていたのだが、ジムの奥の方にあるフリーウェイトコーナーには、元号の発表など意にも介さずひたすらに筋肉を鍛えている猛者も確実に存在していた。
元号よりも筋肉である。マッチョはすごいな……。
テレビに官房長官が映ると、テレビを見ている人達から「ワーッ」という嬌声がのぼっていた。マイケルジャクソンの伝説のライブを彷彿とさせる(動かなかったやつ)。誰か失神するものすら出てきそうだ。僕の緊張もマックスだ。
そして掲げられる「令和」。
ジムのテレビの前に集まった人達の雰囲気は「はあ?」という感じ。
実際にこんな声が聞き取れた。
「なんだそれ」
「わかっちゃったらなんてことないわね」
「なんかなあ」
みんなしらけていたのである。
そしてみんなものすごい早さで、各自のトレーニングに戻っていった。あの熱気の高まりがまるで嘘だったみたいだ。
でも僕は「令和」という元号がかなりイケているように感じられて、興奮がとまらなかった。
R音から始まるのがかっこいい。スタイリッシュな見た目もいい。特に画数が少ないのがイケている。由来になっている万葉集の歌もなかなかよかった。
ツイッターを見ても「いい」と言っている人が多かったように思う(このへんツイッター世論と、リアルな世論の開きの一つかもしれない)。
僕はなにか特別なことがしたいと思い、イトーヨーカドーに向かって、ちょっといいパック寿司を買った。900円くらい。それを家で一人で食べた。令和決定のお祝いである。
令和は絶対にいい年にしような。