続き…

 

この行列は誰かに発見されると姿を消すようだ。

 

過去に僕らが遠目に校舎を眺めていたとき、あの用務員は校舎内にこの行列を発見していたのかもしれない。だからあの時、行列が廊下からフッと姿を消したのだ。

 

 

また、この行列には定められた手順があるようだ。

 
発見された相手に対して、その後、手紙やメールなどの手段を用いてコンタクトを計る。その疑問文のようなメッセージに、肯定的な返事をしたら……どうなる……?
 
想像の域を出ないのだが、その末路こそ、あの用務員なのではないか?
 
つまり用務員はメッセージを返したのだ。
 
どのような手段を用いたのかはわからないが……。


…くそ、無害だと……?そんなわけがない!あれは邪悪で、これ以上ないほどに有害だ!何とかしないと…

 

 

僕は必死に頭を回した。実際に亡くなったのかはわからないが、それがあの用務員の供養になるんじゃないかという思いで……。

 
 
ほどなくして、僕に妙案が浮かんだ。


手紙から迷惑メールへ変貌……か。だが……、時間と共に変貌を遂げたのはあいつらだけじゃない……。あとは……どうやって誘きだすか……だが…
 
僕はメールの受信ボックスに来た、迷惑メールのアドレスを確認してみた。

…それは一通一通、異なるアドレスからのメールだったが、その全てがはね返り、返信が出来なかった。

…これじゃダメだ……。返信できない…

それから僕は、あれこれと返信手段を考えたが、上手い手段が見つからないまま、翌日、出勤時間となった。
 
ぼんやりとした頭のまま閉店セール、最後の灯火を掲げるショッピングモール脇の道を通り過ぎようとしたとき、

 

これは……

と、頭に閃くや否や、僕はバイクを駐輪場に向けて進ませていた。

そして目的を済ませ、足早に塾へと向かい、一枚のルーズリーフに


『あなた方を歓迎いたします。○月△日の午後三時に、私のところに来ていただけますか?』

と、丁寧な文を書き、それを小さく折り畳んだ。

そして……、先刻に閉店セールで配られていた、今時珍しい
『風船』にそれをくくりつけて飛ばしたのだ。

久しぶりに見た風船に、しっかり浮くのか、と心配だったが、都合よく吹いた一陣の風に舞い上がり、それは街の空に消えていった。

…これで上手くいくだろうか…?

そんな一抹の不安を投影したように、空は赤く染まりはじめていた。


その翌日、僕は塾の郵便ポストに、萎びた風船を発見し目を見開いた。

その風船の糸には、乾いた茶色の紙が絡まるように結び付いている……。

…まさか……

無言でそれを確認すると、


『必ず参ります』

という、たった一文だけの恐ろしい返信が結び付いていた。

意思とは無関係に震えていた僕の手とは対照的に、僕にはほんの少し

…あとは、当日……きっと上手くいくはずだ…

という自信にも似た感情が芽生えていた。

 

 

 

続く…