少子高齢化が年々進み、今後さらに生産年齢人口の減少が見込まれている。そんな中で、働く人がそれぞれの事情に合わせた多様な働き方を選択できる社会を実現し、労働生産性を向上させることを目的とした働き方改革が進められている。
政府は2018年に長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保などを目的とし、「働き方改革関連法」を公布。1947年に制定された労働基準法を70年ぶりに大きく見直した。
史上初めて労働時間に上限規制を設けたり、有休取得を義務化したりするなど、改革は順次施行され、国を挙げて労働環境改善に取り組んでいるところだ。
そんな中、昨年末頃からさまざまなメディアで「2024年問題」が取り沙汰されるようになった。これは2024年4月から、働き方改革関連法の適用範囲が拡大することによって生じる諸問題を総称したもので、とりわけ物流・運送業界、建設業界、医療業界に大きな影響をもたらすことが危惧されている。
なぜこれらの業界だけに影響が及ぶのか。その背景事情と課題、各社で講じている解決策について解説していく。本記事では特に物流・運送業界についてまとめる。
働き方改革関連法のうち「時間外労働の上限規制」はもっとも早期に実施され、大企業は2019年4月1日から、中小企業も2020年4月1日から適用されている。
しかし、このとき一部業種では業務内容の特性上、長時間労働になりやすい業態であることから是正には時間がかかると判断され、時間外労働の上限規制適用が5年間猶予されていた。その一部業種こそ「物流・運送業界」「建設業界」「医療業界」だ。
これらの業種に対する適用猶予期限は2024年3月31日までであり、4月1日以降は他業界と同様に、時間外労働時間の年間上限が制限されることとなった。
いずれも長時間労働が常態化している業種であるから、労働時間の上限規制はドライバーや建築作業員、医師などにとって労働環境改善につながるはずだ。しかし、労働者一人一人が合法的に働ける時間が減ってしまうことにより、同じ業務量や売り上げを維持しようとするなら、事業者側はこれまで以上に多くの人員を確保しなければならなくなる。
影響は人手不足に苦しむ事業会社のみならず、物流の停滞や建設工期の遅れ、公共交通の路線網廃止、医療提供体制の弱体化など、社会構造自体にも及ぶため、社会全体で働き方を問い直すことが求められそうだ。規制の時間数や例外規定は業種により異なる。
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