短編 怪談

無性に塩分が摂りたい~コンビニ店員シリーズ02【ゆっくり朗読】371

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10月中旬にちょっとした事があって、高校生(以下M)と少し親しくなった俺。
まあそのちょっとした事はおいといて、
11月初旬、つい最近に、精神的にも肉体的にもちょいショッキングな事があったんでこっちを。

10月末から同僚(こっちは男/同い年)がやたら遅刻や無断欠勤をするようになって、
そんな日は一人で早朝勤務をこなすようになった。
教習所に通い始めたのもあって疲れが溜まるし、遅刻しても謝らん同僚にイライラする俺。
Mはその頃から、俺に「つかれてんな」言うようになってた。
どっちの意味かは知りたくも無かったので放置。っつーか敬語使え。

そんで、無性に塩分が摂りたくなっていた。
ほら、突然ポテチとかカップ麺食いたくなることあんだろ?
あんな感じをもっと強くしたもんだと思ってくれればいいかも。
最初はポテチやらカップ麺食ってたんだが、物足りなくて、
アタリメやらつまみのイカそうめんをかなりの量食ってた。
そのうちそれでも足りなくなって、マヨネーズとか醤油とか塩を、家族の目盗んでは口にしだして、
ストレスから来る偏食かと不安になった。Mは「つかれてんな」としか言わないし。

11月入って、初めて塩のみで過ごした次の日、
いつものようにパックジュース一つでレジに並んできたMが、急に真顔になって言った。
「T(俺の名前)さ、最後に水飲んだのいつ?」
まあ当然(゚д゚)ハア?ってなって、そんな事聞かれたってとっさに出てこない。

というか思い出せない。一昨日の晩ご飯のように出てこない。
いや、一昨日はうどんだった。そうじゃなくて。

倒れはしなかったものの、レジ続行は不可能だと判断し、
呼び出しボタン連打でバックルームに居る店長を召喚して、
「吐きそうなんですマジやばいんです」っつってトイレに駆け込む俺。
頃合を見計らって早退し病院に直行。即点滴。脱水症状起こしていたらしい。
医者にも水分いつとったか聞かれて首を捻る俺。
「マジわかんねーしww」っつったら怒られた。
食生活は流石に全部は言えんかったが、それでも怒られて帰宅。

帰宅後もやたら塩が欲しくなって、PCのスイッチ入れた直後にフラフラ台所へ。
そんで塩舐めてたら、PCのフリメにMからメールが(携帯教えるのが嫌だった)。
いつもはメールを滅多にしない上に、してきても長文で怖い話ばっか送ってくるMがたった一行、
『窓開けんな』
意味分からんが、前回で学習した俺は、
窓を開けずに色サイト巡りでもするかな、なんて呑気に構えていたその時だった。
ドン
窓に何かがぶつかる音。
ヤバイヤバイなんかキター(゚∀゚;)?!と思って、おっかなびっくり振り返ると、愛猫が外から帰ってきた模様。
しかし、開けるなというMからのメール。
どちらをとるべきか悩んで、とりあえずMにメールを返信。
(内容は、『猫入れるんもダメか?』とか、そんなだったと思う)

数分猫と見つめあってるうちに、Mから返信。
『ドアから入れたらいかんのか』
お前頭いいなーっつか、ドアはいいんかい。

猫を入れて身体を拭いてやり、課題を始めて数十分。
学校に向かう時間になったので、洗濯物を取り込んで・・・って、窓開けないといかんがな。
入れ忘れたことにして妹にメールで頼むかな、と思ってたら嫌な音が。
雨だ。しかもかなり大粒。迷っている暇はない!
近所に聞こえても構っていられるかと、色ゲソングを大声で口ずさみ、
思い切って窓を開けて洗濯物を入れ込む。

家族が多い分、量があるので時間がかかり、入れ終わる頃にふと気付いた。雨が降っていない。
大粒の雨の音がいくつかしたはずなのに、道路にも屋根にもその跡すら見当たらない。
気のせいさ!そうだそうだ!気のせいだ!早く学校に行こう!
と笑顔を引きつらせながら室内に入ろうとしたが、無茶苦茶冷気を感じて入れない。

こりゃーもうベランダから飛び降りるしかないかな!とか思ったけど、
ベランダから下は、隣とうちの間にある塀かコンクリのドブなので、下手したら大怪我。
びくびくしながら室内を窺うが、何も見えないようなので、
ダッシュで入って窓を閉めて、財布と携帯だけ持って家の外へ。

そんで前回同様、早いけどまあいい!学校行こう!とチャリに乗ったが動かない。
あれ、俺鍵抜いたっけ?ボケてんな。と思ってポケットを探すが見当たらない。
抜いたら大体ポケットに入れてるんだが・・・
家の中か?入りたくねえなあと思いながらも、恐る恐るドアを開く。で、閉じた。

ななななな何かいる!ハッキリ見えんが(見たくない)、確実に俺が出る前に居なかったものが居る。
一瞬で閉じたので、見えたのはせいぜい、
黒くて、サッカーとかバレーのボールくらいの大きさって事しかわからなくて、
人間の頭ってあれくらいだっけとか、嫌な想像が浮かんでくる。
過去に妹が乗っていた、ちょいちっちゃいチャリで行くしかねえと俺は決めた。

駅に着くまでも、目の端にチラチラ黒い丸いものが入ってきたが、とにかく無視。
神社の鳥居の上、電信柱の陰、民家の塀の中、郵便局の屋根の上、信号の上、所々に現れては消える。
しかもものすげえ嫌な感じ。
うまく表現できないけど、見てるだけでオエってしそう。
ついでに言うと、まだ塩分が摂りたいのは変わらなくて、
途中でバイト先ではないコンビニで、塩のポテチを買って食ったが足りなかった。

駅に着いたのは夕方で、丁度高校生の帰宅ラッシュ。
ああ居るなと思ったMはやっぱり居て、俺の顔を見るなり、
「開けるなって言ったのに馬鹿だな」なんて言いやがった。
「もっと分かりやすく言え!」と怒ると、いきなり俺の背後を指差した。予想はついた。
“アレ”が居るんだろう。最早生首決定していた俺は、絶対振り向かねえと断固拒否。
しかしMは、「いいからいいから」っつって、振り向かせようとする。
見たくないんだよ、馬鹿かこの高校生。
何を言っても聞く気はないらしく、とにかく振り向けの一点張り。
振り向けば直るのかと聞いても答えない。
しかし、ここで押し問答をするわけにも行かないし、
駅前で言い争って交番に呼ばれたくも無い。
大人な俺は(周りに人が大勢いたのもあって)振り返ってやった。

俺の目の前1メートル前後にあった黒い塊は、生首ではなく大量の虫だった。とにかく虫、虫、虫。
種類なんか判別できんほど、びっちりびっちり虫がくっつきあって、犇めき合って、
バレーボール大くらいの大きさになっている。
俺は虫苦手じゃないが、流石に飛びのいた。
咄嗟に「殺虫剤とか効くのか」とMに聞くが、Mは笑って「効くわけないじゃん馬鹿だな」と言う。
Mが宙に浮いたままの塊をしっしっと手で払うと、一瞬でバラけて何もなかったかのように消えた。
何だったのかと聞いてもMは答えない。
猫が狩ってきた虫か?とか、今まで殺した蚊か?とか聞いても、
「馬鹿だな」と言うだけで肯定はしない。
ただ、「あれと塩は関係あるのか?」と聞いたら、
「しお?」と聞き返して、少し悩んでから「ああ、塩ね。あるよ」と肯定した。

簡単な説明してもらって駅で別れて、電車に乗ってから数分後に、ものすごい喉の渇きに襲われて下車。
売店で水を二本買っていっき飲み。
治った事を実感しつつ、そういや3回馬鹿って言われた事を思い出して頭に来た。

Mの説明は分かりにくかったが、つまり虫の幽霊(生霊?)みたいなものらしい。
それの一部体の中に入ると、とにかく何か偏ったものが摂りたくなるとか。
ドアからは入らないが、窓からは本体?みたいなモノが狙っていて危ないとか、胡散臭い説明だった。
「本体に接触したらどうなるんだ」と聞いたら、
「明日は会えなかったなあ」とか、意味不明な事を遠い目で呟くので、それ以上は聞かなかった。
「説明がよくわからん」と文句を言うと、
「まあアレは、世の中にあるうちのほんの一部だから」と、自分の説明下手を誤魔化しやがった。
というか、あんなんが世界中にうじゃうじゃ居たら困るわ。
そう言うとMは、
「人間も虫も大差ねえよ」と笑った。
つまりそれは、人間にもあんなのがいるって事だろうか。
そしたらそれは、サッカーボールとかの比じゃねえのか。
とはさすがに聞けなかった。

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