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「牛肉はA5ランクが美味しい」は間違い!牛肉ランクの正しい見方

「今日は焼肉にするぞ!」とスーパーに行くと、国産牛、アメリカンビーフ、オージービーフなど、いろいろあって迷いますよね。  そして、国産牛だけに「A5ランク」、「A4ランク」というラベルが貼ってあることも。だいたいA5ランクが一番高いですが、高くてもあえて選ぶほど美味しいのでしょうか? また、美味しそうに見えても、格付がついていない場合もあったりと、いまいちルールがわかりませんよね。 スギアカツキ牛肉_1 そこで今回は、「牛肉の格付」がどのようにされているか、美味しさとどのくらい関係するのかについて調べてみることにしました。

牛肉の格付は、必ずしも美味しさとは連動しない

 牛肉に見られる格付のような暗号は、(社)日本食肉格付協会が「国産牛」に対して決めている取引規格のこと。「アルファベットA~C」と「数字1~5」の組み合わせによって分類されています。
黒毛和牛A5ランクの枝肉

このように等級表示される

(1)アルファベットA~C 「歩留等級」を表す。歩留とは、市場で競りにかけられる枝肉の重量に対して、実際にどのくらいの肉が得られるか?の数値。算定するための計算式があり、「標準がB」、「標準より良いのがA」、「標準より劣るのがC」となる。 (2)数字1~5 「肉質等級」を表す。「サシの入り具合(霜降りの度合い)」をベースに、「肉の色つや」、「肉の締まり具合・きめ細やかさ」、「脂の色つや・質」を加味して評価する。No.1が1等級、No.2が2等級、No.3~4が3等級、No.5~7が4等級、No.8~12が5等級で、霜降りが多いほど数値が大きくなる。
スギアカツキ牛肉_3

サシの入り具合を測る牛脂肪交雑基準(B.M.S.)※(社)日本食肉格付協会HPより

 これ以上の専門的な内容は省略しますが、ここで重要なのは、格付は、輸入牛肉は対象外であること、霜降りの度合いに大きく影響を受けるということなのです。つまり、どんなに美味しくても、赤身であれば格付が低くなってしまうということ。
スギアカツキ牛肉_4

某スーパーで購入した4等級

 例えば、超高級ステーキとして珍重される「シャトーブリアン」は、脂が少ないヒレ肉の中心部のことですが、格付に従うと、おかしな事になってしまいそう。  そもそも「霜降り」は、世界的には珍しく、黒毛和牛などの和牛品種に見られる特有の肉質。ヨーロッパで最高級とされる品種には赤身肉が多いですし、肉の美味しさは、「香り」、「旨味」、「食感」などの他、食べ方や嗜好によって総合的に評価されるものですから、「格付」は一つの指標に過ぎないのかもしれません。また、歩留については、加工されたものを購入する消費者からすると、美味しさには直接的に関係ないということになります。

「国産牛=和牛」ではない

 もう一つ知っておくと便利なのが、「国産牛」と「和牛」の違い。実はこれら、イコールではないんです。国産牛のうち和牛と呼べるのは45%程度。和牛とは、食肉として食べる「肉専用種」で、黒毛和種、日本短角種、褐毛和種、無角和種の4品種か、それら4品種間の交雑種のみ。乳用の品種と和牛を交配させた「交雑種」や、乳牛の役目を終えた「乳用種」の一部は、「国産牛」として出荷されています。親切なスーパーでは「交雑牛」などと明記している場合もありますから、用途によって賢く選ぶのが良いでしょう。 <文/スギアカツキ>
スギアカツキ
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12
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