2021年02月02日
ルックスザットキル - 新種牡馬辞典'21
新種牡馬辞典、第十九弾は*ルックスザットキル。とにかくスピードに任せてハナに立ち、そのまま押し切るというスタイルの快速馬で、優駿スプリント、習志野きらっとスプリント、そしてアフター5スター賞と1200m以下の南関重賞を3勝しました。スタミナが切れてしまえばはいおしまいという馬で惨敗も多いタイプでしたが、父が北米の新種牡馬として初年度の最多勝ち上がり記録をマークした Wildcat Heir であり、仕上がりの早さと短距離向きのスピードがうまく伝われば地方向き種牡馬として十分通用しそうな気がします。まずは得意の2歳戦で数少ない初年度産駒が活躍し、その名前を売っておきたいところですね。
*ルックスザットキル
米国産 2012年生 鹿毛 父系:ストームキャット系
<血統構成> Northern Dancer 5×5 Mr. Prospector 5×3 Raise a Native 5×4 Stavroula = Nashua 5×5
父 Wildcat Heir は米GIフランク・J.ド・フランシス・メモリアルダッシュS(D6F)など全6勝を6ハロン戦であげたスプリンターで、種牡馬としてビングクロスビーSの Wild Dude 、ラブレアSの*ヘアキティーなど複数のGI馬を送り出しており、初年度に北米の新種牡馬としては最多となる39頭の勝ち馬を送り出した。日本ではほかにシンザン記念5着の*シゲルアセロラなどを出している。
母 Carol's Amore は米国未勝利。母としてほかに米リステッド勝ち馬 Ju Jitsu Jax を出している。
祖母 Lady Bering は米国産馬で、米国7勝。米リステッドで2着に入っている。母としては目立った産駒を残していない。
<競走成績>
米国で12万ドルで落札された同馬だったが、2歳9月に大井でデビューし、2連勝を果たす。その後は1400m以上のレースで3戦したが未勝利だった。3歳になって1200m戦を3連勝すると、大外から強引に行った優駿スプリントトライアルこそ失速し9着に敗れたが、続く優駿スプリント、習志野きらっとスプリントを連勝し、その快速ぶりを見せつけた。その後は交流重賞や中央遠征なども行ったが、さすがにここではハードルが高く東京スプリント5着以外はすべて二桁着順に沈んでおり、古馬になってからはアフター5スター賞勝ちが目立つ程度であった。
<供用実績>
引退後はイーストスタッドにて種牡馬入り。オーナーである田記氏が所有する牝馬を中心に毎年10頭前後の牝馬を集めているが、地方重賞しか実績がなかったことを考えるとまずまずの頭数が集まったと言えるだろう。父 Wildcat Heir は非常に産駒の勝ち上り率の高い種牡馬で、さらに2歳戦を非常に得意としており、短距離向きのスピードを持っている。それで種付け料15万円というのは非常に魅力的で、知名度さえ上がれば地方向け種牡馬としてやれる可能性は十分あるだろう。
<注目の産駒>
キスイットベターと*ソーメニーティアズの母は*ルックスザットキルのオーナーであった田記氏の持ち馬。*ルックスザットキルはじめ洋楽のタイトルから馬名をつけることが多く、これらもそれにちなんだ名前を付けられるのだろうか。スターレットやテイタニアビコーはやや遠いながらも一族からGIウイナーが出ている牝系で、意外な一発がないだろうか。トレンドエッセンスは半兄に3歳ダートオープン入着馬リアルプロジェクトがおり、中央でもそれなりにやれそう。
<傾向> 芝:○ ダ:◎ 距離:短 2歳:◎ 3歳:○ 古馬:△
自身はダートにしか使われていないが、Wildcat Heir 産駒としては*シゲルアセロラが中央芝で4勝をあげており、芝をこなす産駒が出てきてもおかしくはない。ただいずれにしても距離に注文が付くタイプで、ベストは1200m以下。1400mを超えてくると厳しくなってきそう。また父、母父ともに仕上がりの早さに定評のある種牡馬であり、2歳戦を最も得意とするだろう。反面成長力にはあまり期待できないかもしれない。
日本の地方ダート向け種牡馬というのはどちらかというと息の長い活躍をしてコツコツ実績を積み上げたタイプが多く、2歳戦が主戦場となるような種牡馬は少ない。もちろん地方馬のオーナーとしてはタフにしぶとく走ってくれるほうがありがたいという思惑もあるのだろうが、2歳の4月から始まる新馬戦をフルに活用しない手はないだろう。欧州や豪州には2歳戦に特化した血統もあるくらいだから、安い種付け料で2歳戦をメインとする種牡馬が出てきても面白いのではないだろうか。
米国産 2012年生 鹿毛 父系:ストームキャット系
<血統構成> Northern Dancer 5×5 Mr. Prospector 5×3 Raise a Native 5×4 Stavroula = Nashua 5×5
Wildcat Heir USA 鹿毛 2000 | Forest Wildcat | Storm Cat |
Victoria Beauty | ||
Penniless Heiress | Pentelicus | |
Royal Ties | ||
Carol's Amore USA 鹿毛 2001 | Two Punch | Mr. Prospector |
Heavenly Cause | ||
Lady Bering | Lord Gaylord | |
Bering Sea |
父 Wildcat Heir は米GIフランク・J.ド・フランシス・メモリアルダッシュS(D6F)など全6勝を6ハロン戦であげたスプリンターで、種牡馬としてビングクロスビーSの Wild Dude 、ラブレアSの*ヘアキティーなど複数のGI馬を送り出しており、初年度に北米の新種牡馬としては最多となる39頭の勝ち馬を送り出した。日本ではほかにシンザン記念5着の*シゲルアセロラなどを出している。
母 Carol's Amore は米国未勝利。母としてほかに米リステッド勝ち馬 Ju Jitsu Jax を出している。
祖母 Lady Bering は米国産馬で、米国7勝。米リステッドで2着に入っている。母としては目立った産駒を残していない。
<競走成績>
年 (歳) | 戦 | 勝 | 主な実績 |
---|---|---|---|
2014年 (2歳) | 5 | 2 | 1着 JRA指定(大井) D1200 1着 2歳新馬(大井) D1200 |
2015年 (3歳) | 9 | 5 | 1着 優駿スプリント(大井) D1200 1着 習志野きらっとスプリント(船橋) D1000 1着 3歳(大井) D1200 1着 3歳(大井) D1200 1着 3歳(大井) D1200 |
2016年 (4歳) | 8 | 2 | 1着 アフター5スター賞(大井) D1200 1着 ゆりかもめオープン(大井) D1200 5着 東京スプリント(GIII) D1200 |
2017年 (5歳) | 1 | 0 | |
計 | 22 | 9 |
米国で12万ドルで落札された同馬だったが、2歳9月に大井でデビューし、2連勝を果たす。その後は1400m以上のレースで3戦したが未勝利だった。3歳になって1200m戦を3連勝すると、大外から強引に行った優駿スプリントトライアルこそ失速し9着に敗れたが、続く優駿スプリント、習志野きらっとスプリントを連勝し、その快速ぶりを見せつけた。その後は交流重賞や中央遠征なども行ったが、さすがにここではハードルが高く東京スプリント5着以外はすべて二桁着順に沈んでおり、古馬になってからはアフター5スター賞勝ちが目立つ程度であった。
<供用実績>
年度 | 種付料 | 種付数 | 生産数 | 登録数 | 供用場所 |
---|---|---|---|---|---|
2018 | 15万円 | 12 | 6 | 6 | イーストスタッド |
2019 | 15万円 | 10 | 5 | 4 | 〃 |
2020 | 15万円 | 9 | − | − | 〃 |
2021 | 15万円 | − | − | − | 〃 |
引退後はイーストスタッドにて種牡馬入り。オーナーである田記氏が所有する牝馬を中心に毎年10頭前後の牝馬を集めているが、地方重賞しか実績がなかったことを考えるとまずまずの頭数が集まったと言えるだろう。父 Wildcat Heir は非常に産駒の勝ち上り率の高い種牡馬で、さらに2歳戦を非常に得意としており、短距離向きのスピードを持っている。それで種付け料15万円というのは非常に魅力的で、知名度さえ上がれば地方向け種牡馬としてやれる可能性は十分あるだろう。
<注目の産駒>
母名 | 性 | 備考 |
---|---|---|
キスイットベター | 牝 | サカイファームの生産馬。母はメイショウボーラー産駒で、地方未勝利。3代母*パルムドールIIは仏GIIIフロール賞(T2100)の勝ち馬で、近親に中央で4勝をあげ、関東オークスでも4着に入ったローザノワールなどがいる。田記正規氏の預託生産馬である。 |
スターレット | 牡 | 谷川牧場の生産馬。母は*ブライアンズタイム産駒で、中央未勝利。半兄エンテレケイアは中央1勝。3代母*ミドルフォークラピッヅは米GIIIモンロヴィアH(T6.5F)の勝ち馬で、近親に米GIハリウッドスターレットS勝ち馬*キラーグレイシスがいる。 |
*ソーメニーティアズ | 牡 | アフリートファームの生産馬。母は Mizzen Mast 産駒の米国産馬で、地方未勝利。近親に加GIIニアークティックH(T6F)勝ち馬 I Thee Wed 、米GIIフィリップ・H.アイズリンH(D9F)勝ち馬 Broken Vow などがいる。田記正規氏の預託生産馬である。 |
テイタニアビコー | 牝 | オギオギ牧場の生産馬。母は*ノーザンテースト産駒で、中央未勝利。半兄ゼンノカヴァルリーは地方9勝。近親にモーリスドゲスト賞(T1300)勝ち馬 Garswood 、英GIIサマーマイルS(T8F)勝ち馬 Mutakayyef 、仏GIIIカルヴァドス賞(T1400)勝ち馬*クイーンビーIIなどがいる。 |
トレンドエッセンス | 牝 | 原ファームの生産馬。母は*コマンダーインチーフ産駒で、中央未勝利。半兄に端午Sで4着、鳳雛Sで5着に入ったリアルプロジェクト、いとこにベテルギウスSや門司Sで3着に入ったサトノギャロス、おじに巴賞2着のドラゴンマンボなどがいる。 |
キスイットベターと*ソーメニーティアズの母は*ルックスザットキルのオーナーであった田記氏の持ち馬。*ルックスザットキルはじめ洋楽のタイトルから馬名をつけることが多く、これらもそれにちなんだ名前を付けられるのだろうか。スターレットやテイタニアビコーはやや遠いながらも一族からGIウイナーが出ている牝系で、意外な一発がないだろうか。トレンドエッセンスは半兄に3歳ダートオープン入着馬リアルプロジェクトがおり、中央でもそれなりにやれそう。
<傾向> 芝:○ ダ:◎ 距離:短 2歳:◎ 3歳:○ 古馬:△
自身はダートにしか使われていないが、Wildcat Heir 産駒としては*シゲルアセロラが中央芝で4勝をあげており、芝をこなす産駒が出てきてもおかしくはない。ただいずれにしても距離に注文が付くタイプで、ベストは1200m以下。1400mを超えてくると厳しくなってきそう。また父、母父ともに仕上がりの早さに定評のある種牡馬であり、2歳戦を最も得意とするだろう。反面成長力にはあまり期待できないかもしれない。
日本の地方ダート向け種牡馬というのはどちらかというと息の長い活躍をしてコツコツ実績を積み上げたタイプが多く、2歳戦が主戦場となるような種牡馬は少ない。もちろん地方馬のオーナーとしてはタフにしぶとく走ってくれるほうがありがたいという思惑もあるのだろうが、2歳の4月から始まる新馬戦をフルに活用しない手はないだろう。欧州や豪州には2歳戦に特化した血統もあるくらいだから、安い種付け料で2歳戦をメインとする種牡馬が出てきても面白いのではないだろうか。
この記事へのコメント
1. Posted by ななし 2021年02月03日 07:28
戦績を眺めていたらスパロービートを思い出しました。
2歳戦に特化するとなると、マイルまでは持たせたいですね。
2歳戦に特化するとなると、マイルまでは持たせたいですね。
2. Posted by Organa 2021年02月04日 19:29
まさにスパロービートを彷彿とさせるような馬ですね。スパロービートは産駒の平均勝利距離が1000mを切りそうな状況で今一つ伸び悩んでいますが、マイルまで持つようならかなり使い勝手がよくなりそうです。
3. Posted by Kssky 2021年02月05日 00:16
最近は地方の2歳戦の賞金は結構高いですね。中央の未勝利で燻るよりそちらで稼ぐ方が地味ですが堅実かもしれません。そういうところを生き残りの活路とするモデルケースになって欲しいです。