愛知県ITS推進協議会、令和元年度総会・講演会を開催

カテゴリ:講演・セミナー / 2019年08月01日

 
 
 

愛知県ITS推進協議会は2019年8月1日、アイリス愛知(名古屋市中区)にて令和元年度総会を実施すると共に、講演会を開催した。

今回の講演会1部では、国立情報学研究所・総合研究大学院大学 教授、東京工業大学の特定教授で、昨年6月まで人工知能学会で会長を務めた(現在は顧問)山田誠二氏が登壇し、「AIの現状とオートモーティブへの応用」をテーマに語った。

AIは「古くからあるが、枯れていない技術」

山田氏は冒頭で、人工知能、すなわちAI(Artificial Intelligence)とは何かについて、基本から解説。AIとは、人間のような知的な処理をコンピューター上で実現するものであり、初めて概念が提唱されたのは約60年前の1956年に米国ダートマス大学で行われたダートマス会議で、決して新しい考え方ではないと紹介。

そしてAIには、魅力的ながら実現が難しい「強いAI」(人間と同等の能力)と、「弱いAI」(人間をサポートする程度の能力)の二つがあり、現実には長い間、弱いAIを研究する時代が続いたが、昨今はビッグデータが手に入るようになったことや、計算機のパワーが向上したことで、強いAIがブームになっていると説明。その意味でAIは「古くからあるが、枯れていない技術」だとした。

ただし、2045年に人類を超えるAIが出現するという「シンギュラリティ(技術的特異点)」問題については、長年AIを研究してきた立場として、AIは会話や言語理解など、まだほとんどのことが出来ず、二歳児程度のレベルであり、30年ほどで人間を超えるようになるとは想像しにくいと断じた。

第三次AIブームで「ニューラルネットワーク」が復権

AI研究には、これまで3回のブームがあり、1960年代の第一次AIブーム、そして日本でも研究が盛んになった1980年代の第二次AIブーム、そして2010年代の第三次AIブームがあるとした。

そして第三次AIブームの背景には、前述のビッグデータや計算機パワーの向上があり、統計的機械学習や、ニューラルネットワーク(脳の神経細胞をモデル化したもの)の復権、そしてディープラーニング(深層学習)が特徴だとした。

また、ニューラルネットワークやディープラーニングによって最も成功しているのが画像分析であり、現状においてAIが得意としているのは、静的(スタティック)で閉じた(クローズドの)世界の空間データ分析であるとした。例として、囲碁や将棋などの完全情報ゲーム(すべての情報が公開されている状態のゲーム)、屋内空間、サイバー空間を挙げた。

AIが不得意とするものは「常識」や「屋外」

一方で、AIの不得意分野は、動的(ダイナミック)で開いた(オープンな)世界のほか、コンテクスト(文脈)によって変化する「常識」(社会通念、モラルなど)、あるいは、書き尽くすことのできない膨大な情報世界であるとし、例として行動経済学や認知バイアス、物理世界、そして屋外環境だとした。また、その実例として、学習済みのAIでも、画像分析において人間ではあり得ない誤認識を行うことを紹介した。

こうしたAIの特性から、自動運転に関しては、テスラの車両が2016年に起こした最初の人身事故(ハイウェイで直進中、正面を横切った大型トレーラーの側面に衝突)も例に挙げて、現実世界の複雑な道路状況では、AIではまだ事故を防ぎきれないとし、レベル3やレベル4の自動運転でも課題は多く、「レベル5(完全な自動運転)の実現はなかなか難しい」と指摘した。

人の気持ちが分かる自動車の実現

そして、車社会へのAIの応用については、限定条件下での自動運転(レベル3の自動運転)の普及、意思伝達ができる自動車、AIによる交通最適化、そしてMaaS(サービスとしての移動)のAI化であろうとした。

意思伝達ができる自動車とは、「自動運転の課題は人間(歩行者)」という考えから、高度の環境認識や意思伝達ができる自動車が重要だというもの。ドライバーが周囲にいる歩行者や他のドライバーの様子をうかがいながら運転するように、AIが人間の意図を理解する、いわば「人の気持ちが分かる自動車の実現」が必要になるとした。

また、交通最適化については、米国ペンシルバニア州ピッツバーグにおける、信号機管理AIの実証実験を紹介。AIで制御された信号機により、車の移動時間が25%短縮され、アイドリング時間が40%減少するなどの効果があり、これにレベル3やレベル4の自動運転が加わると、さらなる効果が見込めるとした。

AIと相性がいいのはMaaS

最後に、自動運転よりもAIと相性がいいものとして、MaaS、つまりICTを利用して、クルマから公共交通機関まですべての移動手段をシームレスにつなぐ新たな移動サービスが持つ可能性を紹介。すでに実用化されている料金や時間といった基準以外にも、快適性や楽さなど、各ユーザーの好みを加味したパーソナライズをAIが行ったり、入力されたスケジュールと連動してAIが移動手段の予約や決済を行う「専属AI秘書」、交通機関のトラブルに迅速に対応して再プランニングする機能、さらにはAIが旅行や出張をプランニングし、予約や決済を自動的に実行することも可能になるとした。

 
 
 

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