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トヨタ RAV4 アドベンチャー新車試乗記(第845回)

Toyota RAV4 Adventure

(2.0L直4・CVT・4WD・313万7400円)

3年ぶりに国内復活!
5代目に進化した、
世界のベストセラーSUVに
凱旋試乗!

2019年06月07日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

5代目は約3年ぶりの国内復活


新型RAV4
(写真:トヨタ自動車)

初代RAV4(ラヴフォー)は1994年、FFベースのモノコックシャシーを使った乗用車タイプのSUVとして登場。クロカンSUVとは異なる、今でいうところのクロスオーバーSUV市場を開拓した画期的なモデルだ。

それから約四半世紀。海外では2018年末に、日本では2019年4月10日に発売された新型は、日本投入が見送られた4代目を含めると5代目にあたり、国内では約3年ぶりの復活となる。

新型のプラットフォームは、現行カムリやレクサスESと同じGA-K。メカニズム面のトピックは、新4WDシステム「ダイナミックトルクベクタリングAWD」(世界で初めて前後ラチェットシフト式ドグクラッチで駆動力の伝達を切断するディスコネクト機構を採用)など。また、先進安全装備「トヨタ セーフティ センス」やコネクティッドサービスなども採用し、RAV4の魅力をあらためて日本市場でアピールする。

 

新型RAV4
(写真:トヨタ自動車)

昨年2018年だけでも世界180ヶ国で80万台以上を販売したベストセラー車ゆえ、生産は海外でも行われるが、日本向けは先代でも輸出分を担ってきたトヨタ自動車の高岡工場(愛知県豊田市)と豊田自動織機の長草工場(愛知県大府市)が供給する。

販売チャンネルは、全国のトヨタカローラ店、ネッツ店、およびトヨタ モビリティ東京で、月販目標は3000台。

立ち上がりの受注台数は、発売から約一ヶ月の5月15日時点で、目標の8倍となる約2万4000台。4月の国内販売ランキング(登録車)は3136台で22位に、5月は6817台で7位にランクインしている。6月6日時点での納期は、ガソリン車が2ヶ月程度、ハイブリッド車が3~4ヶ月程度とのこと。

 

価格帯&グレード展開

2.0Lガソリンが260万8200円~、ハイブリッド車が320万2200円~


新型RAV4(ハイブリッド)
(写真:トヨタ自動車)

国内向けは、レクサスUX200で採用された2.0L直4ガソリンエンジン車と、カムリに採用されている2.5L直4ハイブリッド車の2本立て。それぞれにFF車と4WD車がある。

価格は、ガソリンのFF車が260万8200円、同4WD車が283万5000円~320万2200円。専用外装でオフロードイメージを強調したほか、新しい4WDシステム「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を搭載した「アドベンチャー」(試乗車)が313万7400円、同4WDシステム搭載の「G“Zパッケージ”」が334万8000円。

 

RAV4 ハイブリッド4WD車(E-Four)のパワートレイン
(写真:トヨタ自動車)

そしてハイブリッドのFF車は320万2200円、同4WD車(プリウスなどと同じ電気式4WD「E-Four」)は345万0600円~381万7800円。

FFと4WDの価格差は約23万~25万円とリーズナブルで、初期受注の約9割が4WDだという。ちなみにRAV4の「4」が意味するのは、今も昔も4WD(4-wheel-Drive)だ。ガソリン車とハイブリッド車の価格差は約60万円と大きく、同じく初期受注ではガソリン車が約55%、ハイブリッド車が約45%とのこと。

 

メーカーオプションのサンルーフは2種類。上級グレードのGとアドベンチャーには電動サンルーフと固定式ガラスルーフを組み合わせた「パノラマムーンルーフ」を用意する
(写真:トヨタ自動車)

なお、最新のトヨタ車らしく、車載通信機DCMは全車標準で、T-Connectサービスが3年間無料で提供。24時間365日のオペレーターサービスのほか、緊急時のヘルプネットなどにも対応している。

 

パッケージング&スタイル

モチーフは八角形(オクタゴン)

外観は、デザインコンセプト「アドベンチャー&リファインド」に基づき、SUVらしい力強さと都会的な雰囲気を合わせ持ったもの。スタイリング全体の造形テーマは、幾何学形状の八角形(オクタゴン)2つを90度ずらしてはめ合わせた「クロスオクタゴン」だという。加えて外観のあちこちで多角形のモチーフが繰り返されている。

「アドベンチャー」はオフロード志向

 

試乗した「アドベンチャー」は、専用フロントグリル、フロントスキッドプレート、フロントバンパー、専用デザインの19インチアルミホイール等を装備し、オフロードイメージを強調。さらにアドベンチャーには、専用ボディカラーの新規開発色アーバンカーキや、ルーフ用の新規開発色アッシュグレーメタリック(白に見える)を組み合わせたツートーンカラー4色を用意している。

 

試乗車はそのうちの一つ、シアンメタリックというパキッとした青色との2トーン。新型RAV4のデザインやイメージにも合っており、試乗中いろんな人に褒められた。

 

インテリア&ラゲッジスペース

良好な視界。充実の収納スペース

オレンジの差し色が楽しい「アドベンチャー」の内装。運転席からの視界は、高さを抑えたインパネ、室内から見えないように設計されたワイパー、ドア付のドアミラー、三角窓によって、まずまず。また、斜め後方の視界も、大きめのリアクォーターガラス、Cピラー断面の小型化、そして流行りのデジタルインナーミラー(オプション)などでソツなく確保されている。

 

また、インパネの運転席側、助手席側、およびセンターコンソールには、小物を簡単に置けるオープントレイを配置。充電用USB端子も各席で使えるよう、コンソールボックス内部に2個、後端部にも2個、標準装備されている。

アドベンチャー専用合皮シートを採用

アドベンチャーの電動シートは、このクラスでは珍しく表皮全面に合成皮革を使ったもの。触感はけっこうリアルで、最初は合皮っぽい本革かな?と思ったほど。オプションでシートヒーターとベンチレーション機能も装着できるので(7万9920円)、真夏でも蒸れにくいのでは。ポジション調整幅はとても広く、小柄な人でもベストポジションを見つけられるはず。ちなみにアクセルペダルは、トヨタ車でもすっかりおなじみになったオルガン式だ。

後席は広く、乗降性もまずまず

後席は、高めの室内高を活かしたパッケージングで広々としており、フットルームにも余裕がある。ただし、後席の背もたれを出来る限り水平に倒すためなのか、あるいは乗降性に配慮したのか、後席のヒップポイントはフロアに対して低く位置し、座面クッションは平板で、足を前に投げすような着座姿勢になる。こうした作りに、北米向けSUVっぽさが感じられる。

 

後席の乗降性は一長一短で、総合的にはまずまずといったところ。フロアや敷居(サイドシル)が高めで、乗り込む際に足を意識して持ち上げる必要がある一方で、足の通りはよく、また前述の通り座面が低いところにあるので、お尻は乗せやすい。弟分とも言えるC-HRと比べると、乗り込む際に頭をかがめる必要がない点だけでも後席乗員フレンドリーと言える。C-HRは、後席での見晴らしや閉塞感も気になる部分だが、RAV4ならその点で悩む必要はない。

荷室容量や使い勝手にも配慮

荷室容量は、後席使用時でクラストップレベルの580L。さらに後席の背もたれを6:4分割で倒せば、ほぼフラットな床面が広がるし、2段デッキボードで床面の高さを2段階で調節することもできる(と言っても、高低差は55mmしかないが)。

 

背もたれを倒した時は、190cmほどの奥行きが生まれ、大人が足を伸ばして寝ることができる。後席の背もたれはわずかに斜めだが、クッションなどで調整すれば、車中泊も快適にできそうだ。なお、トノボードは片側がカーペット、片側が防水樹脂のリバーシブルで、状況に応じて使い分けられる。

 

荷室床下には、パンク修理キットやちょっとした収納スペースがある。写真はガソリン車だが、ハイブリッド車でも荷室まわりの作りはほぼ同じだ。

なお、スマートキーを携帯していれば、リアバンパーの下に足を出し入れするだけでバックドアが自動開閉する「ハンズフリーパワーバックドア」もオプションで設定されている。国内向けトヨタブランド車では初採用らしい。

 

基本性能&ドライブフィール

ガソリン車の「アドベンチャー」に試乗

新型RAV4のパワートレインには、2Lガソリン車と2.5Lハイブリッド車の2種類があるが、試乗したのはガソリン車の4WDしかない「アドベンチャー」。車両価格は313万7400円。試乗車はオプション込みで384万9660円。

直噴+ポート噴射「D-4S」を採用した自然吸気の2L直列4気筒「ダイナミックフォースエンジン」と、発進用ギアを備えた無段変速機「ダイレクトシフトCVT」のセットは、半年ほど前に試乗したUX200と同じ。走り出すと、まず発進加速時のエンジン音が格段に静かなことに気付く。この差はたぶんプラットフォームの違いによるものだろう(UXはGA-C、RAV4はGA-K)。

また、この2.0Lガソリン車の指定燃料は、RAV4がレギュラー、UXがハイオクで、最高出力もRAV4が171ps、UX200が174psと若干チューンも異なる。

ガソリン車はアイドリングストップなし


UX200とほぼ同じ2Lエンジンだが、プラットフォームが格上のTNGA-Kゆえ、エンジンルームには余裕がある。

この2Lエンジンは意外にスポーティで、アクセル全開時の加速は鋭い。UX200より100kg以上重い1640kgのボディを軽々と俊敏に走らせる。発進加速にギアを使うダイレクトシフトCVTも効いている。

一方、一般道を50~60km/hで淡々と走る時は、アイドリングより少し高いだけの1000rpm程度で走って燃費を稼ぐ、環境エンジンらしい一面も当然ある。

ところが、そんな最新パワートレインなのに、アイドリングストップ機能がないのは、また意外なところ。最近の国産車では、新型ジムニー以来の経験だ。

また、欲を言えば、この2Lエンジンは車重1630kg(試乗車)に対して少し地力に欠けるようで、微妙にアクセルを踏み増しただけでも、すぐに回転を跳ね上げてしまう。トルクの不足分を回転上昇で補うのだが、理想を言えばもう少しトルクが欲しい。

などと思いながら米国仕様のスペックを見たら、ガソリン車はすべて2.5L直4と8速ATの組み合わせだった。日本仕様にはあえて燃費や車両価格、税制面で有利な2Lを選んだのだろう。

気持ちのいいハンドリング

試乗車を借り出した直後は、1865mmの全幅(アドベンチャー以外は1855mm)や5.7mの最小回転半径(17/18インチタイヤ装着車は5.5m)に気を使ったが、1時間もすれば慣れてくる。たぶん、見晴らしがいいせいだろう。

ハンドリングもさすがTNGAシャシー、ワインディングを走っても破綻なし。ボデイ剛性は先代比40%アップとのこと。SUVっぽい外観とは裏腹に、スイスイと気持ちよくコーナーをクリアしていける。

試乗車が履いていたヨコハマ「AVID GT BluEarth」は、もともと米国向けの銘柄とのことで、19インチ(235/55R19)のオールシーズンタイプ(マッド+スノー)。負荷をかけると、主にFFで走るエコモード時は当然ながらFFっぽい挙動を見せるが、積極的に4輪で駆動するノーマルモードやスポーツモードではグイグイ走れる。何となくスバルのフォレスターを思い出してしまった。

4WD方式は全部で3種類

新型RAV4でユニークな点の一つが、一つの車種でガソリン車用に2種類、ハイブリッド車用に1種類と、計3種類の4WD方式があること。

まず、ハイブリッド車の4WDシステムは、後輪を電気モーターで駆動する「E-Four」の改良新型。従来のE-Fourに比べて、後輪の最大トルクを増加させ、前後輪トルク配分を100:0~最大20:80まで変更可能な新制御を採用した。リアモーターは最高出力54ps、最大トルク121Nm(12.3kgm)とこれだけでも走れそうなくらい強力だ。これによってドライ路面での操縦安定性のほか、雪道などでの登坂発進性能を向上させたという。

 

「アドベンチャー」の最低地上高は200mm。リアサスはダブルウィッシュボーン。

ガソリン車の方は「G」「X」グレード用に、リアデフ直前に電子制御多板クラッチを備えた、ごく一般的な方式の「ダイナミックトルクコントロール4WD」を採用。

そして「アドベンチャー」と「G “Zパッケージ”」には、新開発の「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を採用する。似たような名称でややこしいが、こちらは後軸の左右に電子制御多板クラッチを各1基、計2基装備することで、左右独立で駆動力を100:0~0:100まで制御する「トルクベクタリング機構」を備えたもの。要は、2010年に発売された日産ジュークのターボ4WDモデル「16GT Four」のトルクベクタリング4WDに近いもの、と考えていいだろう。どちらも電子制御クラッチ部分はジェイテクト製だ。

 

さらに、新型RAV4のダイナミックトルクベクタリングAWDには、もう一つ新アイテムが採用されている。それは、4WD走行が不要な時に後輪への駆動力伝達をドグクラッチで切り離して燃費向上を図る「ディスコネクト機構」。これをトランスミッション直後のトランスファー部分とリアデフ部分の2ヶ所に設けることで、4WD走行が不要な時にプロペラシャフトへの伝達を切り離すと同時に、トルクベクタリング用に左右2組ある多板クラッチの引きずり損失も無くす、というのが狙い。

また、こうした4WDシステムとは関係なく、すべての4WD車には、4WD統合制御「AWD Integrated Management(AIM)」も採用されている。これは、路面や運転状況に合わせて、センターコンソールのダイアルで走行モードを変更できる機能だ。

先進安全装備は一通り装備

100km/h巡行時のエンジン回転数は、約1400rpmと低く、そのあたりの速度域で淡々と巡行すれば燃費はかなりいい。ただし、登り坂ではトルク不足を補うため、やはり回転を高めに保とうとする傾向がある。

それ以上に気になったのは、速度に比例して風切り音が目立ってくること。パワーウインドウを閉め忘れたかと思うような(実際、何度も閉め直して確認してしまった)、密閉感の無さが気になった。資料によると遮音はかなり入念に行ったようなのだが……。それに対して、ロードノイズや巡行時のエンジン音はほとんど無視できるほど静かだった。

予防安全パッケージ「トヨタ セーフティセンス」は全車標準装備。歩行者検知(昼間・夜間)、自転車運転者検知(昼間)を行う「プリクラッシュセーフティ」のほか、180km/hまで設定可能なレーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)、同一車線内中央を走行するように操舵を支援する「レーントレーシングアシスト(LTA)」、ハイビームとロービームを自動で切り替える「オートマチックハイビーム(AHB)」、先行車が発進したことをドライバーに知らせる「先行車発進告知機能」など、一通りの機能が備わるが、これについては後の総評で詳しく触れる。

試乗燃費は10.3~12.3km/L。WLTCモードは15.2km/L【ガソリン4WD車】

今回は約300kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、一般道や高速道路などいつもの区間(約80km)が10.3km/L。一般道を普通に走った区間(約30km×3回)が10.8km/L、11.8km/L、12.3km/L。高速道路では、区間が短い上に巡行速度が一定しなかったので同じく参考値だが、14.2km/Lだった。

なお、試乗したガソリン・4WD車のWLTCモード燃費は、15.2km/L。少なくともモード燃費は、前回試乗した三菱eKクロスのターボ4WD車と大差ないのが面白い。車重は約1.7倍、排気量や馬力は約3倍もあるのだが。

一方で、燃料タンク容量は、eKクロスの27Lに対してほぼ倍の55L。このあたりはグローバルカーらしくガソリンスタンドの少ない僻地に対応するものだろうし、昨今ガソリンスタンドが減っている日本でも嬉しい部分。指定燃料は前述の通りレギュラーだ。

ちなみに、ハイブリッド・E-Four車のWLTCモード燃費は20.6km/L(市街地は18.1km/L、郊外は22.4km/L、高速道路は20.7km/L)と優秀で、特に市街地燃費は抜群。ただ、高速道路など、車速の高いステージではガソリン車の2~3割良好といった程度で、意外にその差は小さいとも言える。

ここがイイ

デザイン、走り、使い勝手と、三拍子そろった商品力

SUVとしてはライトなイメージで登場した初代RAV4だが、都市型クロスオーバーSUVが多数派となった今は、相対的にクロカン寄りのSUVとなり、スタイリングもかつてのハイラックスサーフ風になって、なかなかカッコよい。それでいて中身は本格的な4WD車あり、ハイブリッドあり、先進安全装備ありと「今のクルマ」。オンロードでの走りもいいし、快適性もまずまず。流行りのグランピングにも出かけたくなるオシャレ感や積載性もある。RAV4という車名に備わるイメージの良さもあり、今どき珍しく老若男女から好かれそうなクルマだ。

ここがダメ

1850mmを超える全幅。もう少しトルクが欲しいガソリン車。一部オプションとなる先進安全装備

意外に運転しやすい新型RAV4だが、だからといって全幅1855~1865mmがどうこうなるわけではなく、狭い日本の駐車場や裏道ではやはり困ることがありそう。こういった点をはじめ、新型RAV4には、やはり基本的には海外向け、特に北米向けに開発されたクルマなんだな、と思わせる部分があちこちにある。いい部分でもあるが。

今回試乗したのは2Lのガソリン車だが、あえて贅沢を言えば、もう少しトルクが欲しかった。本文にもあるように米国仕様のガソリン車は2.5L直4の8速AT。これならたぶん、こうした不満はなかったと思われる。ただし、現状でもパワー不足と言う気は決してなく、むしろかなり「速い」クルマだ。

一方で、今回試乗しなかった2.5Lのハイブリッド車も気になるが、価格が約60万円も高くなるし、素敵な2トーンカラーを選べないのが残念なところ。

デジタルインナーミラーは、いわゆるワイドミラー的な視野角を持つ広角レンズを使っているようで、かなり横方向までカバーするが、おかげで遠くの車両は小さくしか映らないし、少なくとも今回のタイプは解像度がいまいちで(当たり前ながら鏡の方が圧倒的に鮮明)、車種の判別がつきにくい。車種の判別とは、例えば、クラウンとかマークXとか、ある種の業務で好まれる車種かどうかの判別など。もちろん、デジタルで見にくい場合は、鏡に切り替えれば済む話だが、今後はもっと解像度を上げるとか、ズーム機能をつけるとか、ディスプレイをもっと大きくするとかの工夫が欲しい。

また、RAV4の場合は、デジタルインナーミラーがかなり顔に近いところにあるため、老眼や視界障害などで近くが見えない人は、ピントが合いにくい。もっと位置が遠ければいいのだが、、、、。

先進安全装備は一通り揃っているが、試乗した「アドベンチャー」など一部グレードではメーカーオプションとなるものがある。これについては以下で触れる。

総合評価

先進安全装備は、全グレードに標準装備すべき

スタイルはいいし、まあ、走りにも不足はない。新築マンションなどでは立体駐車場も2000mm幅となっているから、全幅も問題なくなりつつあるし、アメリカでベストセラーというあたりもウリになりそうだから、これは当たるのではないかなと思っていた。実際売れているようだし、まだC-HRに1年も乗っていない知り合いからも買い替えたいという声を聞いたくらいで、またまたトヨタのヒット車両となりそうだなあ……。

そう思いながら資料をながめていて、アレっと気づいたこと。今回試乗したRAV4の「アドベンチャー」では「踏み間違い時サポートブレーキ(インテリジェントクリアランスソナー)」が標準装備ではなく、メーカーオプションとなっている。

トヨタの先進安全装備であるトヨタセーフティセンスは、

・プリクラッシュセーフティ【ぶつからないをサポート】
・レーントレーシングアシスト【高速道路のクルージングをサポート】
・レーダークルーズコントロール【ついていくをサポート】
・オートマチックハイビーム【夜間の見やすさをサポート】
・ロードサインアシスト【標識の見逃し防止をサポート】

という5つの機能から成り、「踏み間違い時サポートブレーキ(インテリジェントクリアランスソナー)」は、そこには含まれていない。

 

RAV4の場合、踏み間違い時サポートブレーキ(インテリジェントクリアランスソナー)は、ベーシックグレードのXと試乗したアドベンチャーでは2万8080円のメーカーオプションとなっている(Gには標準装備)。これは「前後進行方向にある壁などの静止物を検知している場合、発進時にエンジン出力/ハイブリッドシステム出力を抑制し、さらに距離が縮まると自動(被害軽減)ブレーキをかけます」というものだから、コンビニ駐車場から店内へ飛び込むようなペダル踏み違い事故も防げそうな装置だ。

さらにもう一つ、Xとアドベンチャーでは「リヤクロストラフィックオートブレーキ(パーキングサポートブレーキ<後方接近車両>」も、「ブラインドスポットモニター」とセットで6万6960円のメーカーオプションになる(こちらもGには標準装備)。これは「駐車場からバックで出ようとした時に左右から近づいてくるクルマを検知して、ドアミラー内のインジケーター点滅とブザーにより知らせ、ぶつかりそうならブレーキをかける」というもの。これら2つの安全装備は、Xとアドベンチャーではなぜかオプションとなっている。

なぜオプションなのか。合計で10万円近い価格アップとなるのは確かだが、もう標準装備でいいのではないだろうか。特に、踏み間違い時サポートブレーキ(インテリジェントクリアランスソナー)はわずか2万8080円なのだし。調べてみると、これはプリウスでも、S“ツーリングセレクション”、S、Eにはメーカーオプションになっている(上位のAグレード以上には標準装備)。早く全車種、全グレードに標準装備するべきだと思う。

サポカーとヒューマンエラーの話

こうした「踏み間違い時加速抑制装置」に特に力を入れているのが、経産省だ。打ち出しているのがサポカーという規格。『政府は高齢運転者の交通事故防止対策の一環として、被害軽減(自動)ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置等を搭載した車(安全運転サポート車)に「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」の愛称をつけ、被害軽減(自動)ブレーキを搭載した車「セーフティ・サポートカー(サポカー)」とともに、官民連携で普及啓発に取り組んでいます。』という。

まず、被害軽減(自動)ブレーキ(対車両)を装備したものを「サポカー」と呼ぶ。そして低速対応の被害軽減(自動)ブレーキに、踏み間違い抑制装置を加えれば「サポカーSベーシック」になり、被害軽減(自動)ブレーキを全車速対応にして「サポカーSベーシック+」、被害軽減(自動)ブレーキの対象を車両だけでなく歩行者にも拡大し、さらに車線逸脱警報、自動切り替え型先進ライトを追加すると「サポカーSワイド」となる。

サポカーSは、このように都合3つの区分となる。試乗したRAV4アドベンチャーの場合、メーカーオプションをつければサポカーSワイドになるが、つけないと、被害軽減(自動)ブレーキ(歩行者対応)、車線逸脱警報、自動切り替え型先進ライトがあるのに、ただのサポカーに格下げとなってしまう。

このように経産省のサポカーSは、踏み間違い抑制装置の装備を強調しているが、トヨタ車の場合、これとは別に「ドライブスタートコントロール」というものが装備されている。これは『後退時に衝突して慌てたドライバーが、アクセルを踏み込んだままシフトを「R」から「D」へ変更した際、表示で注意を促すとともに、エンジン出力/ハイブリッドシステム出力を抑えます。』というもので、シフト操作ミスによる急発進、急加速を防ぐものだ。これはペダルの踏み間違いを防ぐのに効果的な装備と評価していいだろう。

 

ただし、前方に何もなく、Dにシフトしたまま、ブレーキペダルと間違えてアクセルを全開にすれば、前方に何かが登場するまで加速を続けることは確かで、速度ができるだけ低いうちに何かを見つけてプリクラッシュセーフティが働くことを祈るしかない。とはいえ、これで事故の被害が軽くなる可能性は高いから、世のクルマの全車種がサポカーSワイド相当となってくれるのを期待するしかないだろう。

ところで、取扱説明書からプリクラッシュセーフティに関する警告部分を引用してみると、

・作動により車両が停止した時は二秒後に解除されるので運転者がブレーキをかけること。
・運転者がアクセルを強く踏んでいたり、ハンドル操作したりしていると、回避操作とシステムが判断して作動しない場合がある。
・作動中にアクセルを強く踏んだり、ハンドル操作したりすると、回避操作とシステムが判断して解除されることがある。
・ブレーキを踏んでいる時は回避操作と判断して作動開始タイミングが遅れることがある。

とされている。つまりアクセルを踏み続けているとプリクラッシュセーフティが作動しないことも考えられるだけに、ペダル踏み違い問題は深刻だ。ヒューマンエラーに対して根本的解決を考えるべき時にきているのでは。

免許を返上する前に

ほんのわずかなカタログ値の差を競う燃費競争なんかより、先進安全性の差で競う時代が早く来るべき、と書いたのはもう何年前のことだったか。最新のクルマは確かに安全になってきたが、それでもまだまだ課題は多い。さらに世の中には、10年、15年前の安全装備がないクルマが数多く走っており、特に高齢者は乗り慣れたそういうクルマに乗っていることが多く、事故を起こすと被害を大きくしているようにも見える。このところは先進安全装備がクルマ選びのかなり重要な部分を占めてきてはいるが、いまだ消費者は正確にその機能や性能を認識していないし、すべての新車が標準装備しているわけでもない。ここを早く改善するべきだろう。

高齢者の事故はネタとして大流行りで、マスコミも取り上げまくるわけだが、こうした事故は高齢者ばかりではない。また、ネットでは「プリウスロケット」なる単語まで登場して面白がっている風潮は、クルマ好きとしては怒りすらこみ上げてくる。現実には交通事故死者数はどんどん減ってきている。それはメーカーによる安全への取り組みの成果と評価すべきだ。悲惨な事故をゼロにできるのはまだずいぶん先だと思うが、その歩みをさらに進めて(安全装備は全て標準装備にして)もらいたいし、ユーザー側も先進安全装備への理解をもっと深めるべきだろう。特に高齢者は比較的お金があると思われるので、免許を返上する前に、まずは安全なクルマに乗り換えてみてはどうかと思う。それは低迷する日本経済の向上に少しは寄与するはずなのだし。

 

熟年層のクルマというとセダンと思われがちだが、SUVは「ヨンク」のイメージもあってけして不人気ではない。RAV4は60代以上の人にも認知度の高いクルマだし、十分人気が出そうだ。ということでサポカーSワイド仕様のRAV4に乗って、いずれ来るもっと安全なクルマを待つというのはいかがだろう。燃費は普通に走れば10km/Lを切ることはないという点で優秀だし、ガソリン車で、アイドリングストップしない仕様があるというのも、いまどき貴重。熟年層にも違和感のないクルマだと思う。

 

試乗車スペック
トヨタ RAV4 アドベンチャー
(2.0L直4・CVT・4WD・313万7400円)

●初年度登録:2019年3月
●形式:6BA-MXAA54-ANXVB
●全長4610mm×全幅1865mm×全高1690mm
●ホイールベース:2690mm
●最低地上高:200mm
●最小回転半径:5.7m
●車重(車検証記載値):1630kg(940+690)
●乗車定員:5人

●エンジン型式:M20A-FKS
●排気量:1986cc
●エンジン種類:直列4気筒DOHC・4バルブ・筒内直接噴射+ポート噴射(D-4S)・横置
●ボア×ストローク:80.5×97.6mm
●圧縮比:-
●最高出力:126kW(171ps)/6600rpm
●最大トルク:207Nm (21.1kgm)/4800rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●アイドリングストップ機能:有り
●使用燃料:レギュラーガソリン
●燃料タンク容量:55L

●トランスミッション:ダイレクトシフトCVT(ギア機構付 無段変速機)

●JC08モード燃費:-km/L
●WLTCモード燃費:15.2km/L
●市街地モード(WLTC-L):11.5km/L
●郊外モード(WLTC-M):15.3km/L
●高速道路モード(WLTC-H):17.5km/L

●駆動方式:電子制御4WD(電子制御多板クラッチ式)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):ダブルウイッシュボーン+コイルスプリング
●タイヤ:235/55R19 (Yokohama Avid GT BluEarth)

●車両本体価格:313万7400円
●試乗車価格:384万9660円(オプション込み)
※オプション合計:71万2260円
※オプション内訳:ボディカラー(アッシュグレーメタリック×シアンメタリック) 5万4000円、デジタルインナーミラー 4万3200円、インテリジェントクリアランスソナー 2万8080円、リアクロストラフィックオートブレーキ+ブラインドスポットモニター 6万6960円、本革巻ステアリングホイール+ステアリングヒーター+本革巻シフトノブ+快適温熱シート+シートベンチレーション 7万9920円、ハンズフリーパワーバックドア 7万5600円、T-Connectナビ9インチモデル(販売店オプション) 23万9760円、バックカメラ 2万7000円、アクセサリーコンセント 8640円、カメラ一体型ドライブレコーダー(販売店オプション) 2万1060円、ETC2.0ユニット 3万2400円、フロアマット(ラグジュアリー、販売店オプション) 3万5640円
●ボディカラー:アッシュグレーメタリック×シアンメタリック(2トーン)

●試乗距離:約300km
●試乗日:2019年5月
●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
 
 
 
 
 
 

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