電気自動車と太陽光発電で進化中!〜鶴之湯旅館復活プロジェクトを応援しました

2020年7月の九州豪雨で被害を受けた熊本県の老舗『鶴之湯旅館』が、電気自動車と太陽光発電、V2Hシステムを導入して災害に強い地域拠点として復活するプロジェクトのクラウドファンディングを行っています。私たちEVsmartブログメンバーも、個人的に支援しました。

読者のみなさまにお願い「鶴之湯旅館復活プロジェクト」を成功させたい!

エアコンもテレビもない球磨川沿いの温泉宿

熊本県八代市、球磨川温泉の『鶴之湯旅館』は、創業が昭和29年(1954年)、木造三階建、地下一階で、旅館の公式サイトを見ると「日本で一番新しい木造三階旅館。エアコンはなく夏は蚊帳、冬は火鉢と昭和の生活そのままです。もちろん、テレビもありません」と紹介されています。

現在のご主人である土山大典(だいすけ)さんが、「曾祖父が創業して、両親が必死に守ってきた歴史的な価値のあるこの旅館を残していきたい」と、2006年から休業していた旅館を四代目として受け継いで再開したのは2016年のこと。宿の窓から見下ろす球磨川で自分で捕ってきた鮎料理などが好評で「少しずつ宿泊に来られる方も増えて」いたそうです。

ちなみに、土山さん手作りの「鮎ずし」は、霧島酒造が九州の味を特集するウェブサイトでも紹介されていました。

球磨川の氾濫で一階が壊滅状態に

記事中写真は鶴之湯旅館の公式サイト、およびクラウドファンディングのプロジェクトページから引用。

ところが、2020年7月3日、九州豪雨で球磨川が氾濫。一階部分が壊滅的な被害を受けてしまいました。新型コロナの影響に追い打ちを掛ける被害。電気や水道などのライフラインも止まり、一時は復旧作業もままならぬ状態でした。

そんな中、知人の紹介でこの旅館の被害を知った「日産自動車の日本EV事業部の部長である小川隼平さんが」電気自動車(日産リーフ)の無償貸与を手配。「小川さんがすぐに現地の営業拠点と調整して、熊本日産自動車さんがものすごいスピードで対応してくださり、相談してからわずか1日で車両が届き」電気が使えることでボランティアのみなさんによる復旧作業の環境が激変したそうです。

『READYFOR』プロジェクトページ

今、土山さんはクラウドファンディングのREADYFORで『九州豪雨:災害に強い地域の拠点へ。鶴之湯旅館復活プロジェクト』を立ち上げて、10月23日午後11時までに目標金額500万円を目指して支援を募っています。

【関連ページ】
九州豪雨:災害に強い地域の拠点へ。鶴之湯旅館復活プロジェクト(READYFOR)
鶴之湯旅館ウェブサイト

詳しくはクラウドファンディングのページをご覧いただくとして、目指しているのは「大きな被害を受けた一階部分を修復」し、「太陽光発電(再生可能エネルギー)と電気自動車、V2H機器を活用して、災害に強い地域の拠点とする」こと。さらには「鶴之湯旅館の建物を有形文化財として登録することに挑戦」するという目標です。

私も、そしてEVsmartブログチームリーダーの安川さんも、微力ながらリターンを購入させていただきました。プロジェクトが成功し、レジリエントな地域拠点として旅館が復活した際には、取材がてらぜひ一度伺ってみたいと思っています。

9月10日11時現在、集まっている支援総額は193万8000円。目標金額を達成した場合のみ支援金を受け取ることができる「All-or-Nothing方式」なので、プロジェクト成功のためにはあと300万円以上が必要です。EVsmartブログ読者のみなさんにも、ぜひ支援していただければと思います。

エネルギー独立化を目指すシステムは?

復旧作業でご多忙であることは承知の上で、9月10日、土山さんに連絡していくつかお話しを伺いました。

まず、現在は「ようやく一階の土砂出しが終わり、これから乾燥、消毒、洗浄を数回繰り返してから復旧の工事に入ることができる」状況とのこと。

地域の拠点としてどのような施設となることを想定しているのかについては「現在も30人ほどのボランティアの方に協力をいただいています。今後も、旅館の空間をそうしたボランティアの食事や休憩場所、また支援物資の保管場所として提供したいと思っています」というお話しでした。

質問の意図としては、たとえば一階のフロントやロビーの空間に、電気自動車から電気を供給できる電源設備を備えたり、地域の方の避難場所としても機能するように、といったお答えを期待してもいたのですが、なんというか、無事だった二階や三階は現在もすでに地域のボランティア拠点として活用中。将来についても、今まさに積み重ねているノウハウを活かしたプランを想定されているのだと推察します。

太陽光発電と電気自動車、V2H機器を組み合わせた「エネルギー独立化」のシステムは、具体的には「中古の『e-NV200』に太陽光発電とV2H機器を組み合わせた総額約370万円くらいの見積で検討中」とのこと。日産をはじめ支援メンバーのアドバイスで「およそ50%程度は補助金が使えるように計画中」なので、クラウドファンディングからこうした設備に充てるのは約180万円程度を想定しているそうです。

完全なオフグリッドではないにせよ、こうしたエネルギー自給の仕組みについてノウハウをもった建築会社などはまだ少ないのも実情です。大きなお世話かなと思いながら「大丈夫ですか?」と伺うと、「日産からご紹介いただいた、日本エコライフの辻さん(プロジェクトメンバーにお名前が紹介されていました)にプランニングをしていただいています」とのこと。はい、ほんとに大きなお世話でした。

さらに「もともとエアコンもテレビもない宿なので消費する電力は旅館としては少ないんです。また、新たに薪ストーブや薪ボイラーを導入して、よりサステナブルな旅館に進化させているところです」と土山さん。ますます素敵です。

ちなみに、9月7日に九州地方に接近、大規模な停電などをもたらした台風10号。鶴之湯旅館ではボランティアのみなさんとともに3日がかりで一階部分の壁にコンパネを立てるなどの対策を行い、思ったよりも風なども強くなかったこともあり、今回は大きな被害はなかったとのことです。

クラウドファンディング、そしてプロジェクトの成功を応援しています!

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. ほうほう、いい話じゃあーりませんか。
    ここに限らず地域の防災減災拠点にもなる旅館が増えるといいのですが。

    今年の水害は各地で甚大な被害がありましたよね。岐阜県も国道寸断などヒドかったですが。
    自身それ以前にも岐阜県下呂市の長期停電話を飛騨小坂の鄙びた温泉宿で聞かされ、ソーラーパネル+EV+V2Hで乗り切れると話しましたが…電力や通信など電気のありがたみを知っていながら技術のある方がいない地域性と理解できたのが電気工事士だけという体たらくでした。背景には電気屋をテーマにしたカルチャー作品がないのも痛かったり。
    ただでさえ化学物質過敏に悩まされる僕、いち早く地方の廃旅館や将来閉館しそうな宿を手に入れ、そこにソーラー発電やV2Hなどもつけて災害時の緊急避難所も兼ね備えようと考えています。当然妻子に120%反対されるでしょうが…医師の診断書が出ればホントに実行するかもしれません(深刻)

    それにしても意思ある方々の行動力は早い!!それにひきかえロクな救済措置もなく二進も三進もいかない政府与党なんざ腐ってるとしか言いようがないですね!!(爆)これ以上は控えますがそれが本音です。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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