日経平均良ければ政治に沈黙 「分散」投資が政権支えた

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 16日発足した菅義偉政権は「安倍政権の継承」を掲げ、各メディアの世論調査では高い内閣支持率が伝えられている。戦後最長の安倍晋三政権はなぜ支持され続けたのか。政治思想史が専門の重田園江・明治大学教授は、看板政策のアベノミクスによって株高が続くなか、政治的に沈黙したまま「投資する」人々に着目する。

 おもだ・そのえ 1968年生まれ。専門は政治思想史・現代思想。著書に『フーコーの風向き』『統治の抗争史』『社会契約論』など。

 私たちの経済活動は、知らないうちにその人の思考と行動を変えるのではないか。そして安倍晋三政権の強さとされたものは、政治的には沈黙したまま「投資する」人々に支えられていたのではないか。これらのことについて考えたい。

 9月8日に行われた自民党総裁選の所見発表演説会で、菅義偉氏は概(おおむ)ね現政権のやり方を継承するとした。とりわけ経済再生に関しては、アベノミクスの成果をいわば「自賛」し、政権発足前は1ドル70円台、日経平均株価8000円台だったのに対し、1ドル100円超え、株価は2万円超えがつづく現状を、バブル崩壊後最高の経済状態だとしている。

 だが、円安・株高を経済にとって最も重要な指標であるかのように語ること自体、特定の価値観に基づいている。もちろん菅氏は就業者数の増加にも言及する。しかし、非正規雇用問題、過労死や長時間残業、外国人技能実習制度の問題、看護・介護・保育・教育などエッセンシャルジョブの低賃金には触れない。地方の地価が27年ぶりに上昇したとするが、山積する地方問題と止まらない東京一極集中を考えると、これはいかにも楽天的な話しぶりだ。

 安倍政権はコロナで風向きが…

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