自動運転AIとデータの関係性は?データマネジメントの重要性(特集:自動運転車1台あたり2ペタバイトの衝撃 第3回)

効果的な収集・蓄積・処理のために



自動運転システムの根幹をなす技術として真っ先に挙げられるAI(人工知能)。自動運転における「脳」の役割を担い、自動車制御に関わるあらゆる判断を下す。

判断に要するデータは非常に多岐に渡り、膨大なデータを効果的かつ効率的に高速処理する能力が問われることは言うまでもないことだが、では、AIは実際にどのようなデータを扱っているのか。また、AI開発においてもどれほどのデータを用いているのか。

主力となるセンシング領域を中心に、AIとデータの関係を明らかにし、データマネジメントの重要性に触れていく。

■自動運転システムの仕組み

自動運転システムは、LiDAR(ライダー)やカメラなどのセンサーが取得したデータをもとに車両の周囲や進行方向の道路状況や障害物などを認識するパーセプション、GPSなどGNSS(衛星測位システム)や車両の角速度・加速度を検出するIMU(慣性計測装置)などによって自車位置を推定するローカライゼーション技術を核に、自動車をどのようにコントロールすべきかを判断し、目的地に向けどのような経路をたどるかといったプランニングに基づいて車両を制御し、走行させる。

こうした一連の作業の核となるのが、自動運転車における「脳」となるAIだ。センサーに映った物体が何かを瞬時に解析し、その動きを予測しながらハンドルやアクセル、ブレーキといった制御指示を車両に下す。また、高精度三次元地図とセンサー画像の照合やGPSなどの情報によって自車位置の推定・特定を行い、センシングされた情報と合わせながらより正確な制御を行う。

さらに、路車間通信(V2I)や車車間通信(V2V)などによって得られる情報や、タイヤやモーターなど車両を構成する各部位の異変に関する情報、乗員からの要望などもその都度加味し、安全運転能力を高めていくのだ。

自動運転に関するさまざまな情報・データを収集・照合・突合させ、個々の判断から最終的な判断に至るまですべての司令塔としての役割をAIが担うことになる。

■自動運転のカギを握るAIの強化
AIのトレーニングが自動運転システムの高度化を支える

自動運転システムのさまざまな場面で活躍するAIだが、求められる役割の多さに比例して取り扱うデータも膨大な量となる。

また、AIがさまざまな情報・データを自動で分析する上で重要となるのが「AIのトレーニング」だ。自動運転システム開発各社が最も力を入れている部分と言っても過言ではないだろう。

AIのトレーニングは、「機械学習(マシンラーニング)」が主流となっている。付与された膨大なデータからルールやパターンなどを見つけ出す技術で、データから発見した特徴や法則などを新しいデータに適用することで、新しいデータの予測や分析などを可能にする仕組みだ。

また、AIが判断を下す際、各選択肢にあらかじめリワード(報酬)を付与し、このリワードを最大化する行動を試行錯誤しながら学習していく「強化学習」や、数理モデルに人間の脳神経回路を模した多層のニューラルネットワークを適用した「深層学習(ディープラーニング)」など、さまざまな手法が開発されている。

こうしたさまざまな手法が近年のAI技術の進化を支えており、自動運転をはじめとした最先端分野への道を切り開いたのだ。自動車業界におけるAIについては、データ管理大手の米ネットアップ(NetApp)が公表しているホワイトペーパー「自動車業界のAI」でも詳しく説明されている。

自動運転におけるユースケースや導入課題のほか、MaaSにおける活用方法、AIを強化するためのデータの取り扱いなどについても説明されているので、「自動車×AI」に関心がある人は必読だ。

終わりのないAI開発

自動運転分野では、特にセンシングにおける認識・解析能力を高めるAI開発が熱を帯びており、自動運転システム開発企業をはじめセンサー開発企業、AI開発企業らが続々と参戦している。

センシングにおいては、センサー画像・映像が映し出した周囲の車両や歩行者、信号、道路標識、白線などを正確に特定する必要がある。例えば「人」を特定する場合、歩いているケースや立ち止まっているケース、しゃがんでいるケースなどさまざまで、見る角度によってもそのシルエットは変化する。また、大人と子どもによるサイズ違いや服装による色の違い、大きな荷物を持っているケースなど、色や形状は千差万別である。

こうした多岐に渡るさまざまなパターンの「人」のサンプル画像をAIに付与し、その特徴を学習させることで、AIは「人」を推定することが可能になる。サンプル画像が多ければ多いほど推定能力を高めることができるため、より正確に「人」を判別するAIを開発するためには膨大な「人」のデータを与えなければならない。

自動運転システムでは、この作業をさまざまな車両や自転車、バイク、信号、道路標識など、あらゆるものを対象に行う必要がある。また、天候などの気象条件や順光・逆光、日中・夜間など、さまざまなシーンにおいて判別可能にする学習も必要となる。

さらに言えば、こうした推定は100%に至らないと考えるのが一般的である。未知の要素の存在を完全否定できないからだ。このため、システムは便宜上99.9%で実用化される。開発企業によっては99.0%かもしれない。

誤解のないように、自動運転システムは不完全だと言いたいわけではない。重要なのは、実用化後も引き続きデータを収集し、99.9%を99.99%にしていく努力が必要な点だ。公道実証走行などで積み重ねたデータに加え、実用化後の走行における膨大なデータも処理し続けてこそ自動運転システムは進化するのだ。

■【まとめ】大量のデータを効率良く活用する重要性

自動運転AIの開発段階での実走テストなどでは膨大なデータが発生する。そしてこの膨大なデータを使ってAIの精度をさらに高めていくには、大量のデータを効率良くAIのトレーニング環境に引き渡し、かつ迅速にトレーニング用データセットを作成することが重要となる。

そんな中、米ネットアップは、大容量のデータを効率良く、かつ容量を消費しないコピー(データのクローン)を作成する技術でAIのトレーニング用データセットを作成する技術を有している。

こうした技術を活用し、限られた「ヒト」「モノ」「カネ」のリソースでAIのトレーニング用データを何パターンも作成し、AIのトレーニングを加速することが自動運転AI開発では重要となる。

NetAppの「ウェビナー」でもこうした点やデータマネジメントについて触れられているので、関心がある人は視聴してみてはいかがだろうか。

>>特集目次

>>特集第1回:自動運転実証が国内外で活発化!データマネジメント上の課題は?

>>特集第2回:自動車会社はコネクテッドカーで集めたデータを、どう活用している?

>>特集第3回:自動運転AIとデータの関係性は?データマネジメントの重要性

>>特集第4回:【インタビュー】自動運転実証、NetAppがデータマネジメントを下支え

>>特集第5回:「自動車×AI」をEブックで一挙解説!

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