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水素エンジン開発はトヨタだけではない、欧州のエアバスが開発する3つの水素燃焼ゼロエミッション航空機

エアバスが開発する水素燃焼エンジン搭載の旅客機。最大100席のブレンデッド・ウィング・ボディデザイン

水素燃焼エンジンに挑戦するトヨタ

 トヨタ自動車が開発する水素燃焼エンジン搭載のカローラ(以下、水素カローラ)が7月31日~8月1日、スーパー耐久第4戦オートポリスに参戦する。この水素カローラは、内燃機関として水素を燃焼燃料として使うエンジンを搭載し、従来の内燃機関の技術を活かしてカーボンニュートラルを実現しようとするものになる。

 現在、クルマのカーボンニュートラル化の選択肢としては、外部電力で充電したバッテリの電力で走るBEVがクローズアップされることが多い。とくに、世界各国ではこの分野に関する発表が相次いでおり、カーボンニュートラル=BEVという捉え方をしがちで、トヨタが開発に取り組むグリーン水素によるカーボンニュートラル化を疑問視する声が聞こえてくるのも事実だ。

 では、トヨタのチャレンジは、そんなに可能性のないものだろうか?

 確かに自動車という分野に限ってみれば、大々的に水素燃焼エンジン開発に取り組んでいるメーカーを現在は見ることができない。ただ、モビリティいう分野まで視界を広げてみると、水素燃焼エンジンに取り組んでいるメーカーがある。それが、アメリカのボーイングと並ぶ大手航空機メーカーのエアバスだ。

 エアバスはフランスやドイツなど欧州各国が共同で設立した航空機メーカーで、旅客機の分野ではボーイングと世界市場を2分している。日本においても、日本航空がエアバス A350-900型機を導入するなどおなじみの航空機メーカーといえる。

 主な旅客機はジェットエンジンを搭載して飛んでいるが、このジェットエンジンで使われている燃料はケロシンと呼ばれる灯油系の燃料になる。つまり化石燃料を用いており、自動車と同様に将来的にカーボンニュートラル化が求められている。

 その解決方法として、自動車同様にバッテリで飛ぶ電動航空機なども研究・開発されているが、ジェット燃料に比べ重量エネルギー密度が圧倒的に不利で、なおかつ燃料と異なり電力を消費しても軽くならないバッテリでは洋上の長距離飛行が要求される旅客機にはなかなか難しい面がある。さらに定速飛行が求められることから、自動車では使える回生エネルギーによるリチャージという技も使いにくい。

エアバスが発表した3つの水素燃焼旅客機コンセプト

 そのような中、エアバスが2020年9月21日に発表したのが3種類のゼロエミッション航空機「ZEROe」。いずれもコンセプトとなるが、水素を燃料にする水素燃焼エンジンを搭載してカーボンニュートラルの目標達成を目指している。

 最大100席のブレンデッド・ウィング・ボディデザインは、主翼が機体と一体化しており、胴体が非常に幅広いため水素の貯蔵や供給方法における多様な選択が可能なもの。航続距離は2000海里以上で大陸間飛行が可能としている。

 最大120~200席のターボファンデザインは、ブレンデッド・ウィング・ボディデザインと同様2000海里以上の航続距離を持ち、大陸間飛行が可能。ジェット燃料ではなく水素を、改良したガスタービンエンジンで燃焼して動力を得るとしている。液体水素は、後部圧力隔壁のうしろに設置されたタンクを使用し貯蔵・供給されるため、胴体後方の窓がないデザインとなっている。

最大120~200席のターボファンデザイン

 最大100席のターボプロップデザインは、ターボファンの代わりにターボプロップエンジンを使用。改良したガスタービンエンジンで水素を燃焼し動力を得るとしている。航続距離は1000海里以上、近距離飛行に最適なデザインとなる。

最大100席のターボプロップデザイン

 これらの航空機はコンセプトとしているものの、2035年の実用化を目指すとしており、欧州の巨大メーカーであるエアバスは水素燃焼に取り組んでいく。エンジンメーカーにおいても水素ジェットエンジンの開発表明をしているところがあり、水素燃焼は注目されている技術になる。

 自動車という分野だけで見るとトヨタの水素燃焼エンジンへの挑戦は難しいものに見えるが、視野を少し広げるだけで欧州も水素燃焼にかけていることが分かる。

 グリーン水素燃焼によるカーボンニュートラル社会が実現するかどうか分からないが、ビジョンを掲げて挑戦しているのが、トヨタでありエアバスであるのは間違いない。

トヨタが開発する水素エンジン搭載カローラ