【河村康彦 試乗チェック】ホンダ・シビック 6MTはマニアックな仕上がり

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今後のクルマづくりにも影響を与えそうな各部のこだわり

数あるホンダ車の中にあっても、初代モデルの誕生が1972年にまで遡る長い歴史の持ち主がシビックだ。全長が3.7mにも満たず全幅も1.5mそこそこに過ぎなかった2ボックス・スタイルのそんな初代モデルとはもちろん、数えて11代目となった最新モデルがネーミング以外に直接の関連性を持っていないことは当然だ。

1972年発売のシビック初代モデル
11代目まで進化したシビック

さらに、販売の軸足も海外に移って久しいと思っていたシビックだが、それでも登場したばかりの最新モデルの日本国内販売状況が、「意外にも若い購入者が多く、全体の4割ほどがMT仕様で売れている」と聞いて、ちょっと驚かされることに。さらに「従来型の実績でもMT車の販売比率が3割ほどだった」と聞いて、認識を新たにすることを余儀なくされた。

というわけで、フロント・パワーシートやゴージャスな12スピーカーのオーディオの有無など、一部の装備に差が設けられたふたつのグレードが用意をされるものの、ターボ付きの1.5リッター直噴エンジンや、大型のハッチゲート付き4ドア・ボディなどには選択の余地がないシンプルな設定の新型シビックを、まずは例のMT仕様を選んで走りはじめてみると、改めて驚きを禁じ得ないことに。

大型のハッチゲートを持つ4ドア

というのも、そのMTの操作感が何ともレーシーでマニアック。縦方向にも横方向にも剛性感にあふれ、しかも操作ストロークが短くて済むことに、「これは単に従来型のアイテムをキャリーオーバーしただけではなく、”真のクルマ好き”が拘りに拘り抜いてチューニングを行ったナ」と心底実感させられるものであったからだ。

何とも操作感がマニアックな6速MT

そのように考えて乗っていると、際立って高い高速走行時のフラット感の演出や、いわゆる”ラバーバンド感”をほとんど意識させないセッティングのCVT、そしてこのクラスのモデルでは例外的なほどに小さいロードノイズ等々と、各部分に拘りをもって開発が行われてきたことが連想できるようになったのがこのモデルの走りのテイスト。「SUV全盛の今というタイミングにこうしたモデルを出しても、”勝ち目”は少ないのではないか!?」という当初抱いていた斜めな見方も、乗れば乗るほどに改められることになったのは本当だ。

新しいシビックは、ホンダ車としては珍しく(?)今後のクルマづくりにも長らく影響を与えて行きそうなマジメさを実感させられた仕上がりの1台。この出来ばえを知ったからには「今後のホンダ車からは目を離せない」と、そんなフレーズを語りたくなったのだ。

(河村康彦)

(車両本体価格:319万円~353万9800円)

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