あのお金で何が買えたか!? 新車販売ランキング上位モデルと同じ価格帯で買える中古車を検証
2021.12.06 デイリーコラムヤリスの敵は1シリーズ?
筆者の見立てによれば、クルマ好き界隈(かいわい)は「クルマを買うなら新車に限る。中古車なんてもってのほか!」と考える一派と、「中古車、全然悪くないじゃん?」と考える一派に分かれている。そしてその中間に、というか中間に見えて実は新車派寄りの位置に、「中古車も“認定中古車”なら悪くないよね。街場の中古車屋で買う気はないけど」とうそぶく派閥が潜んでいる。
この争いはほとんど宗教戦争のようなものなので、「絶対新車派」の諸君を折伏(しゃくぶく)しようとは思わない。だが、主には「中古車、全然悪くないじゃん?」と考える各位に向け、そして新車派に近い「認定中古車ならOKでしょ派」の各位にも少しだけ向けて、「新車販売ランキングの上位モデルと同じ価格帯で買える中古車」のプロモーションを行いたい。
なおwebCGから原稿料は出るが、中古車業界からの宣伝料みたいなものは特にいただいていないことを、あらかじめお断りしておく。
さて、日本自動車販売協会連合会が発表している「乗用車ブランド通称名別順位」によれば、2021年上半期(1~6月)の販売台数第1位は「トヨタ・ヤリス」であった。これは「ヤリス クロス」や「GRヤリス」も含んでの成績だが、まぁめんどくさいので「全部ヤリスだった」ということにすると、その代表的なグレードは「ハイブリッドG」。新車価格は213万円である。
そして213万円前後の車両価格で狙える、ヤリスよりもちょっとあるいはグッといい感じのBセグまたはCセグ中古車といえば……まずは先代の「BMW 118i Mスポーツ」が、新車ヤリスに対する有力な対抗馬となるだろう。ちなみに車両価格210万円ほどで、走行2万km前後の認定中古車を見つけることができる。
選択肢はさまざま
トヨタ・ヤリスもいいクルマであることは間違いないが、筆者が考える難点は「乗り心地がイマイチ」ということと「内装デザインがあまりカッコよくない」ということだ(後席が狭いのはどうでもいい)。
それに対してBMW 118i Mスポーツは乗り心地が(ヤリスと比べれば)良好で、インテリアデザインもBMW風味がさく裂していてなかなかカッコいい。そしてFRならではの甘美なステアフィールや、BMWならではのシュンシュン回るエンジンの気持ちよさもある。ヤリス ハイブリッドに比べて「燃費は断然劣る」という難点と、「中古車である」という重い病は抱えているが、総合力では思いっきり上回っていると思うのだが、どうだろうか。
また新車のヤリス ハイブリッドGに対しては「プジョー308 GT BlueHDi」(走行2万km台の2018年式が200万円前後)や、先代「アウディA3スポーツバック1.4 TFSI」(走行1万km台の2018年式が210万円前後)、あるいは現行型「スバル・インプレッサスポーツ2.0i-L EyeSight」(走行1万km台の2018年式が200万円前後)などが、筆者にとっては「中古だけど、ヤリス ハイブリッドの新車以上に魅力的では?」と思える一群だ。
ライバル不在(?)のルーミー
2021年上半期(1~6月)の新車販売台数第2位は「トヨタ・ルーミー」であった。1リッター直3の自然吸気、またはターボエンジンを搭載する、カーマニアからはまったく評価されていない小型トールワゴンである。代表的なグレードである「G」(自然吸気エンジン)の価格は174万3500円。
で、車両価格170万円ぐらいで狙える中古車で、新車のルーミー以上の満足が得られるトールワゴンないしはそれに近いボディー形状のクルマなど、簡単に見つかるだろうと思った筆者である。なぜならば、敵はカーマニア的にも評価が高い「スズキ・ソリオ」ではなく、ルーミーだからだ。
……だがこの戦いは、意外にも苦戦した。「これぞ!」という中古車がなかなかないのだ。
いや、例えば車両価格170万円ぐらいで買える2016年式の「アウディA1スポーツバック1.0 TFSI」は、走りに関してはどこからどう見てもトヨタ・ルーミーより断然上だが、そんなところで比較するのはひきょうというものだ。「手ごろな価格」と「スペース効率」が売りのルーミーさんに対して「質感」が売りの(でも狭い)アウディをぶつけて「勝った勝った!」とはしゃいだところで、意味がないのである。
そう考えると……新車のトヨタ・ルーミーといい勝負ができる類似カテゴリーの中古車は、せいぜい「ホンダ・フリード+」(走行3万km台の2018年式「1.5G Honda SENSING」が170万円前後)ぐらいだろうか。そしてこの「(スズキ・ソリオ以外は)ライバル不在である」という点が、カーマニアからは評価されないトヨタ・ルーミーというクルマが、世の中ではバカ売れしている理由なのだろう。
孤高のアルファード
新車販売ランキングの3位に移ろう。2021年上半期の3位は「トヨタ・アルファード」であった。オラオラ顔と、ごく一部のオーナーのオラオラ運転により、カーマニアからは「不倶戴天(ふぐたいてん)の敵」とされている一台だ。グレード数は多いが、新車価格は純ガソリンエンジン(3.5リッターV6)の「GF」が520万2600円で、2.5リッター直4ハイブリッドの「G“Fパッケージ”」が557万3000円だ(どちらもFF)。
で、不倶戴天の敵ゆえに成敗してくれようと類似の中古車を探してみたのだが――これまたルーミーと同様、これぞという競合が見当たらない。「メルセデス・ベンツVクラス」(走行1万km台で2019年式の「V220dスポーツ」が530万円前後)では、いささか弱いと思われるのだ。
ミニバンではなく「3列シートのSUV」でもよしとするならば「メルセデス・ベンツGLS」(走行8万km台の2016年式「GLS550 4MATIC」が510万円ぐらい)と、「ボルボXC90」(走行3万km台の2018年式「T5 AWDモメンタム」が540万円ぐらい)は、存在感と走りの質においてトヨタ・アルファードを上回るだろう。だが、2列目シートの圧倒的な安楽性を中心とする「アルファードならではの魅力」を、メルセデス・ベンツGLSとボルボXC90の両3列シートSUVが明確に打ち負かしているかといえば、答えは微妙だろう。
2021年上半期1位だったトヨタ・ヤリスは比較的御しやすい相手であり、紙幅の関係で省略した4位の「トヨタ・カローラ」(のなかで一番売れてる「カローラ ツーリング」)も、「フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント」(ゴルフ7ベース)や先代「BMW 3シリーズ ツーリング」をぶつければ、普通に勝機は出てくる。
だが、カーマニア的な評価軸において「大したことない」と思い込んでいたルーミーとアルファードが超強力な敵であったのは意外であり、己の勉強不足をここに恥じるものである。どうもすみません。
(文=玉川ニコ/写真=トヨタ自動車、BMWジャパン、グループPSAジャパン、アウディ ジャパン、スズキ、本田技研工業、メルセデス・ベンツ日本/編集=藤沢 勝)
玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。