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クボタ新春オンラインイベントで北尾裕一社長「地ベタのGAFAを目指す」 2022年の新商品群も続々

2022年1月20日 開催

新春オンラインイベント「GROUNDBREAKERS―日本農業の未来へ―」に出席した株式会社クボタ 北尾裕一社長

“命を支えるプラットフォーマー”を目指す

 クボタは1月20日、新春オンラインイベント「GROUNDBREAKERS―日本農業の未来へ―」を開催した。2021年に続き、2回目の開催となる。

 クボタでは、土と作物に向き合い農業に挑み続ける人たちを「GROUNDBREAKERS(先駆者)」と呼んでいる。今回のイベントでは、GROUNDBREAKERSである農業経営者や農業従事者、農業に関連する企業や団体に勤めている人たち、農業に関心のある人などを対象に、今後の農業経営のヒントが見つかるイベントと位置付けた。

 クボタの北尾裕一社長は、「コロナ禍でも農家の方々とつながり、課題解決の役に立ちたいと考えて開催している。大きな逆境の中でも前に進み続け、日本の農業を支えているGROUNDBREAKERSの挑戦を支える存在として選ばれる企業になるため、課題に真摯に向き合い、ソリューションを開発、提供していく。GROUNDBREAKERSの皆さんとともに、よりよい農業、よりよい社会の実現に貢献したい。日本の食の未来を支えていく」と、イベント開催の主旨と今後の意欲を述べた。

 クボタは1890年の創業以来、食料、水、環境の領域で、社会になくてはならない製品、サービスを世に送り出し続けてきたとする。また、2021年には長期ビジョン「GMB(Global Major Brand)2030」を発表し、その中で「豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”」を目指すことを掲げている。

「クボタの原動力になっているのは社会の課題、地域の支える人たちの想いなどの声である。持続可能な社会の実現には、さまざまな課題が山積している。課題に直面している人たち、壁にぶつかりながらも未来を描き、前に進もうとしている人たちの声に応え、期待以上のものを生み出すことがクボタの役割である。『壁がある、だから行く』という精神で、新たなイノベーションを生み出し、100年先の地球のためにより多くの社会貢献を果たしていく決意である」と北尾社長は語った。

北尾社長は「『壁がある、だから行く』という精神で、新たなイノベーションを生み出し、100年先の地球のためにより多くの社会貢献を果たしていく」と語った

 また、「日本の農業の課題は農家戸数の減少、高齢化によって、後継者不足や担い手不足が生まれている点である。その解決のためには、農業機械による省力化、自動化が必要になり、新規参入者に対してもデータを活用して儲かる農業を実現するスマート農業を提案していく必要がある。未来の農業を考えていきたい」としたほか、「クボタは食料の生産現場から、お客さまに届けるまでの間をITでつなぐアグリプラットフォームを構築しようとしている。これにより必要なものが、必要な時に、必要な量だけ届けることができるようになる。フードロスをなくし、地球環境問題やカーボンニュートラルにも貢献したい」と語った。

 さらに、「農家の農業経営の中心は機械ではなく、作物や家畜をいかに育てるかである。農業機械は、必要な時に、必要な機能を発揮してこそ経営に役立つ。それが一番重要である。お客さまの立場になって考える『On Your Side』にクボタ全体で取り組みたい」としたほか、「社会の課題が多様化し、さまざまな技術革新が起こる中、農業ソリューションを提供する会社を目指す。『地ベタのGAFA』を目指したい。クボタは日本の農家に育ててもらった。日本の農業が一番の基盤である。クボタが世界で培った開発力、調達力、供給能力を活用し、日本の農家にソリューションを提供したい」と語った。

フードロスをなくし、地球環境問題やカーボンニュートラルにも貢献したいとした

 また、2017年からクボタのブランドパートナーを務めている長澤まさみさんがスペシャルゲストとして登場。GROUNDBREAKERS(先駆者)の意味に照らし合わせながら、「進むことを、止めないことを意識している。1つのことをクリアしても、人生は続いていく。歩みを止めないことが、私の座右の銘。自分が取り組んでこなかったことに果敢にチャレンジしていきたい」などと述べた。

 CM撮影の際に、ドイツではクボタで一番大きなトラクターを運転したエピソードに触れながら、「女性の農業従事者が大きなトラクターに乗って、颯爽と農作業するシーンを想像するだけで格好いいと思った。また、自動運転トラクターにも乗ったが、自分が運転しなくても勝手にトラクターが耕してくれる様子にはかわいいという感情も芽生え、さらに未来を感じた。CMの中では未来が見える女性という設定だが、すでに未来がやってきていることを感じている」と述べた。

 そして、「日本の農業と豊かな食を支えることを考えているクボタとGROUNDBREAKERSの存在は、1人の生活者として心強い」としたほか、「さまざまな問題がある中で、当たり前に食をいただけていることに尊さを感じる。その豊かな食を日々支えている農家の取り組みに感謝の気持ちで一杯。おいしいご飯が食べられることは幸せだと感じている、これからも日本の食をお願いします」と語った。

2022年の新商品群を紹介

 オンラインイベントの中ではクボタの2022年の新商品群も紹介。その中でスマート農業を実現する製品群について説明した。

 クボタでは、ロボット技術やICTを活用したスマート農業商品を発売。作業の効率化、省力化、生産性向上に貢献することが、就農人口の減少と大規模化が進む日本の農業において不可欠な取り組みだと位置付けている。同社ではアグリロボシリーズを展開。トラクター、田植機、コンバインの3製品において、自動運転を実現しているのはクボタだけだという。アグリロボでは、自動運転用のマップを作成すれば、それに伴って自動で効率的な作業を行なうのが特徴だという。

 ここではいくつかの新製品を紹介した。新製品であるトラクターのMR1000A KVT仕様は、自動運転時の適応インプルメントの拡充、オートステア機能の向上、KVT(クボタバリアブルトランスミッション)機能を搭載したのが進化したポイントだ。従来モデルでは、耕うん、代掻き、粗耕起、肥料散布、播種の作業に使えるインプルメントを、安全性の観点から7型式に限定していたが、作業幅の任意設定ができるようになったことから、幅広いインプルメントでの自動運転を可能にした。

 また、直進のオートステアに加えてバックオートステア、ルートオートステアを追加。KVTによってきめ細かな車速制御が可能になり、自動運転作業やオートステア作業における適応車速が広がったという。誤差数cmのRTK-GPSと、機体の傾きを検知するIMUによって正確に機体の位置を把握し、無駄のない作業が行なえるのも特徴であり、熟練農家が操作する以上の精度を目指して進化を遂げているという。

トラクターのMR1000A KVT仕様

 田植機のNW8SAでは全面匠植えによる自動田植えを実現。コンバインのDR6130Aでは作業面積と収量をリアルタイムで計測して、最も効率的な動作を行なう匠刈りを搭載。いずれも自動運転での高精度な作業の実現にこだわって開発したという。

 さらに、営農支援システムのKSASについては、アグリロボとの連携により「生産性向上による儲かる農業」「軽労化や省人化による農作業の働き方改革」「肥料や薬剤の最適量散布による環境負荷低減を実現」でき、「持続可能な明るい未来の農業を可能にする」と述べた。

田植機のNW8SA

 また、WATARASは、労働時間の3割を占めると言われる稲作における水管理を行なうシステムで、約8割の労働時間を削減し、用水量は約5割を削減。データを活用し、収量向上につながった例もあり、スマート農業の実現において重要な役割を果たしているという。これまでの通信集約型に加えて、直接通信型を開発し、2022年1月から販売。離れた場所に圃場があったり、無線が届きにくい中山間地の圃場でも使用できるようになる。

WATARASは直接通信型を発売

 農業用ドローンでは、大型モデルの「T30K」およびスタンダードモデルの「T10K」を2022年2月に追加発売する。薬剤散布や肥料散布で作業を効率化できるのが特徴であり、KSASとの連携で防除作業のデータも自動で残すことも可能だ。

 同社では、昨年度は年間800台の農業用ドローンを販売しており、累計出荷台数は2000台に到達。身体への負担がなく、防除適期に素早く作業を終わせることができる点が評価されているという。「ドローンは農作業における産業革命である。防除は夏場での過酷な作業が多く、身体への負担が大きかったが、ドローンにより楽に、効率的に防除を行なってもらえる」としている。

農業用ドローンの大型モデル「T30K」

 また、ラジコン草刈機「ARC-501」では、斜面に立つことなく、安定した場所から機体の操作が可能であり、快適に草刈作業ができる。農家に限らず、草刈作業で困っている人にも適しているという。

ラジコン草刈機「ARC-501」

 そのほかの2022年の新製品についても紹介した。

 2019年から販売を開始したREXIAは、大規模な稲作、畑作、酪農の現場で利用されているトラクターで、80馬力から105馬力の4モデルに加えて、2022年2月に発売する製品として60馬力、65馬力、70馬力を追加して、フルラインアップを完成。無段変則のKVTを搭載し、自動車のオートマチックのような運転のしやすさで作業性を向上させているという。また、キャビンには大型液晶ディスプレイ付きメーターパネル、チルト・テレスコ付きハンドル、エアサスペンションシート、LED作業灯など、オペレータの負担軽減につながる機能や装備を充実させ、長時間作業も快適に行なえるようにした。

 さらに、REXIAシリーズに搭載できるGPSガイダンスシステム「KAG2」では、GPSによって作業跡を精度よく把握し、重複して作業する無駄をなくすことができる。代掻きや肥料散布、防除作業など、作業跡が見えにくい場合に効果的だ。KAG2は2022年1月に発売する。「REXIAは、経営規模が拡大する担い手農家の人材不足、オペレータの負担増加などの課題解決に貢献できる」としている。

REXIAシリーズ

 GRANFORCEシリーズのFT240SPは、24馬力のホイールマニュアルシフト仕様に、要望が多かった2駆4駆レバーを標準装備しながら価格を据え置いた製品で、圃場の作業は4駆で行ない、移動で道路を走行する際には2駆とすることで、タイヤの摩耗低減に有効だという。

GRANFORCEシリーズのFT240SP

 田植機であるNAVIWELシリーズのNW5N仕様は、標準機に搭載しているICT機能、株間・肥料量キープ機能を取り外したもので、購入しやすい価格設定とともに、アンテナがないために車高が約1m低くなり、納屋や倉庫に収納しやすい。

 また、コンバインのRACLEADシリーズは、今年からKALWAYシリーズにモデルチェンジ。準備が簡単な楽刈ボタン、気軽に刈れる全面楽刈、レバー操作が減る楽刈フィットを継続的に搭載するとともに、もみシャッターや大型燃料供給台を標準装備。運転席まわりの装備も充実させた。工具なしで刈取部の詰まりを解除する機能や手こぎ安心機能を新たに搭載した。「これらは、個人農家、兼業農家に、楽しく、快適に、安全に農業を続けてもらうという思いを込めた新製品である」とした。

 なお、直進をアシストするGS機能を搭載した田植機の累計販売台数が1万台を突破したという。記念の特設サイトを用意し、試乗体験も受け付けるという。

2022年1月発売の新製品

 野菜関連製品としては、2022年5月に発売するたまねぎ調製機「KOC-10」では、収穫したたまねぎをコンテナから供給し、高速、高精度で根切りや茎葉処理が可能であり、適応外のたまねぎは再調製部に搬送され、調製漏れが抑えられる。また、2022年3月に発売するたまねぎディガーは、たまねぎの根切りや掘り取り作業の軽労化や効率化に貢献するという。

たまねぎ調製機「KOC-10」
たまねぎディガー

 2021年8月に発売したえだまめコンバイン「EDC1100」は、引き抜きから搬送、脱莢、選別、収納が可能であり、楽々操作や簡単排出などにより、オペレータの負担を軽減でき、作業時間を30%削減できた例もあるという。

えだまめコンバイン「EDC1100」

 2021年6月に発売したにんじん収穫機「NS1450」は、掘り取り、茎葉切断、収納、運搬までが1つの工程で行なうことができ、クラッチレバーによる4つの操作や、各種の自動化機能により快適作業をアシストするという。「野菜作農家の負担軽減や人手不足に解決できる製品」とした。

にんじん収穫機「NS1450」

 草管理商品では、畦畔草刈機の最上位機となる「GCM750-FC」を2022年2月から発売。サイクロン式エアクリーナーを搭載し、上面刈幅750mmを実現する。緑地管理に最適化した乗用モーアでは2機種をモデルチェンジ。「T2090BR-J」は、馬力向上と旋回性能の向上を図ったコストパフォーマンスを追求したモデルとして登場。「G231HD-J」は刈り取り、焦草、排出を行なう1台3役のプロモデルとなっている。「夏場の草刈りは重労働であり、その負担を軽減することができる」としている。

畦畔草刈機の最上位機「GCM750-FC」