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三菱自動車、2022年度第3四半期決算発表 販売台数5万7000台減の63万台も、営業利益174.7%増の1537億円、当期純利益192.3%増の1308億円を実現

2023年2月2日 開催

三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏

 三菱自動車工業は2月2日、2022年度 第3四半期決算を発表。第3四半期累計(2022年4月1日~12月31日)の売上高は前年同期(1兆4161億3100万円)から27.5%増となる1兆8053億2000万円、営業利益は前年同期(559億4400万円)から174.7%増の1536億9900万円、営業利益率は8.5%、当期純利益は前年同期(447億3700万円)から192.3%増の1307億5400万円。また、グローバル販売台数は前年同期(68万7000台)から5万7000台減の63万台となった。

2022年度 第3四半期の業績サマリー

 オンライン開催された決算説明会では、第3四半期の決算内容について三菱自動車工業 代表執行役副社長(CFO)池谷光司氏が説明。

 池谷氏は依然として出口の見えないロシア・ウクライナ情勢、これに伴う物流の混乱やエネルギー価格の上昇、ここ数十年見られなかったレベルでのインフレの広まり、インフレ対策となる急激な金利上昇、世界的な景気後退の懸念など、経営環境は不確実性を増す状態となっていると分析。

 三菱自動車の業績は2022年末にかけて為替レートが円高に推移したものの、販売の質向上や“手取り改善活動”などを引き続き推進したことなどによって前年同期比で大幅に改善することができたと紹介した。

 559億円の前年同期から978億円増の1537億円となった営業利益では、為替の変動が最も大きく影響して802億円の増益要因となり、545億円の減益要因となった資材費/輸送費を上まわっている。しかし、これ以外にも主力地域であるアセアンなどの販売台数増、各国での売価改善活動などの積み重ねも効果を発揮して、為替影響の追い風を除外した場合でも180億円近い増益を果たしているという。

2022年度 第3四半期累計9か月における営業利益の増減要因
第3四半期3か月で見た営業利益の増減要因
2022年度 第3四半期のグローバル販売台数と市場別の内訳
アセアン市場での販売動向
豪州・ニュージーランド市場での販売動向
北米市場での販売動向
日本市場での販売動向

 なお、通期業績見通しについては基本的に前回発表の数値を据え置き。卸売り台数の見直しと連動し、売上高のみ2兆5300億円から2兆4800億円に引き下げている。

2022年度通期の業績見通し。売上高を2兆5300億円から2兆4800億円に下方修正
2022年度通期の販売台数見通し
対前年度比の営業利益見通し変動要因
前回公表値からの営業利益見通し変動要因。販売台数の減少と為替レートの影響を販売対策費の抑制効果でカバーする

「eKクロス EV」がカー・オブ・ザ・イヤー三冠を達成

「eKクロス EV」が「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」「2022~2023日本自動車殿堂カーオブザイヤー」「2023年次RJCカーオブザイヤー」の三冠達成

 2022年度 第3四半期のビジネスハイライトでは、2022年5月に発売した軽自動車タイプの新型BEV(バッテリ電気自動車)「eKクロス EV」が、「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」「2022~2023日本自動車殿堂カーオブザイヤー」「2023年次RJCカーオブザイヤー」の三冠を達成したことを紹介。

 これについて池谷氏は「当社が長年に渡って培ってきた電動化技術とクルマ造りの底力が評価された証」だと述べ、カーボンニュートラルの実現に向けて三菱自動車らしい環境に優しいクルマ、安全・安心で快適なクルマを提供し続けることで持続可能な社会の実現に貢献していくとした。

アジアクロスカントリーラリー2022で「トライトン」が総合優勝

 また、2022年11月にカンボジアで開催された「アジアクロスカントリーラリー(AXCR)2022」に2台の「トライトン」が初参戦。エンジンや足まわりなどを中心にチューニングを施した比較的市販車に近い仕様のマシンながら、総合優勝、総合5位という結果になったと説明。この参戦を通じて得たノウハウを市販車の開発にフィードバックして、これまで以上にタフで力強く、頼もしい“三菱らしさ”を具現化したクルマ造りを目指していくと語った。

「デリカミニ」はすでに約4000台を受注している

 このほか、1月に開催された「東京オートサロン2023」に参考出品した新型軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」について触れ、「デイリーアドベンチャー」をデザインテーマとしたデリカミニはSUVらしい力強いボディが与えられ、アウトドアレジャーの人気が高まっている日本社会でデリカシリーズの世界観を継承。5月からの発売に先駆け、1月31日までに約4000台の受注を得たと好調な滑り出しをアピールした。

 最後に池谷氏は「新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから3年が経過しましたが、ワクチン接種率の向上などもあってようやく終息に向かいつつあるようです。日本を含む各国の行動制限も順次緩和されてきました。一方で、解決のめどが立っていないロシア・ウクライナ情勢、それにより急速に上昇しているエネルギー価格、原材料価格の高騰やかつてない水準でのインフレと、これを抑制するための急激な金利上昇、将来の景気後退懸念など、われわれを取り巻くマクロ環境の不透明感は増しております」。

「また、自動車業界を取り巻く環境も日々変化しております。引き続き楽観視はできませんが、半導体の供給体制も徐々に整備されつつある一方で、世界的な船舶不足は終息の兆しが見えておらず、車両供給不足の解消には一定の時間がかかりそうです」。

「こういった環境下で、当社の業績は昨年来進めてまいりました“手取り改善戦略”の成果が顕在化し、息の長い改善フェイズにあります。われわれを取り巻く環境は日々変化して舵取りが難しい状況ではありますが、収益力のさらなる向上を図り、本中期経営計画の最終年度となる本年度の収益目標を達成すべく、引き続き全力を尽くしてまいります」と締めくくった。

質疑応答

三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長(営業担当)矢田部陽一郎氏

 説明会の後半に行なわれた質疑応答では、バッテリ材料をはじめとする原材料価格、輸送費などを含む全般的なコスト上昇を理由に2月1日付けで「アウトランダー」とeKクロス EVの価格を値上げしたことに関連し、一方でテスラでは「モデル 3」「モデル Y」の価格大きく引き下げ、日本市場では販売されていないものの、フォードでもBEVの値下げを行なったことを引き合いに出し、BEVの価格戦略をどのように進めていくかという質問が出た。

 これについて、三菱自動車工業 代表執行役副社長(営業担当)矢田部陽一郎氏は「そのクルマごとの価値をしっかりと価格に反映して、結果的に当社としてもしっかりと利益が上がるような形で販売していくということが当社の基本的な考えになります。現時点ではこの考えを変えるつもりはございません」と回答。BEVでも販売台数や市場シェアを拡大するために、車両1台あたりの利益を圧迫するような戦略は採らないことを改めて強調した。

 また、半導体不足の問題が落ち着いてきたことを受け、軽自動車を生産している三菱自動車 水島製作所の稼働には好影響となっており、まだ制約はあるものの、輸出するための船舶不足の影響がある他地域と比較して回復基調にあるとのこと。納期は現在、おおむね3~4か月ほどになっていると説明された。