飼っていた猫が外のガレージで仔を産んだ。 
そのガレージは山に面した奥側にあり、家族の他は誰も入らない。 

猫好きとしては是非抱き上げたかったが、母猫を刺激するのも良くないと考えて、 
仔猫がしっかりするまで、あまり近よらないことにした。 

そんなある晩、不穏な叫び声で目を覚ました。 
猫だ。母猫が興奮していきり立った鳴き声を上げている。 
ガレージに駆け付けると、山側の窓が破られ、そこから黒くて細い物が侵入していた。 
何というか、特撮のストップモーションみたく、カクカクとした不自然な動きだった。 

「仔猫を獲りに来たのか!?」 
側にあった鉈を手にし、必死でそれに叩き付ける。 
何度も斬り付け、半ばから切り落とすと漸く、それは外の闇へ引き上げていった。 
明かりを点けて残骸を確認する。 

ガレージに残されていた物はすべて、細く拗くれた柳の枝だった。 
摘み上げてみたが、先程の騒ぎが嘘のように、ピクリとも動かない。 
「古柳ってのは化けたりするのかねぇ。 
 家の近くには、柳なんてどこにも生えてないんだけどな。 
 まぁ、仔猫が攫われなくて良かった良かった」 

ちなみに現在、猫は屋内の納戸で仔を産むようになっているそうだ。