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彼は小さな会社を経営している。
最近、嫌な事件に連続して見舞われた年があったのだそうだ。
その年の暮れ、仕事納めを終えて、一人ため息をついている時のこと。

親戚が、小さな門松を持って挨拶に来た。
その人の山に、昔から聖域と見なされている場所があり、そこの竹林で取れた竹で
作った門松だということだ。
縁起担ぎのつもりで受け取り、事務所内の机の上に置いて帰ったそうだ。

年が明け、事務所に顔を出した彼は驚いた。
青々としていた門松が、茶色くしなびていた。
気がつくと、事務所の空気が心なしか、幾分軽くなったような気がしたという。
門松は仕事始めの前に燃やしたが、真っ黒で異臭を放つ煙が出たそうだ。
思わず手を合わせてしまった、と彼は言っていた。

それ以降、会社の不運が嘘みたいに去ったのだという。
親戚には厄落としが効いて良かったな、と喜ばれたそうだ。