株式会社を設立する時や資本金を増加する時に、

現金以外の財産を出資することを、現物出資といいます。

 

現物出資は、動産、債権、不動産、等幅広く認められていますが、

実務上よく見かけるのは「会社に対する貸金債権」ではないでしょうか。

 

これは一般的に「DES」と呼ばれます。

会社に対する債権を、株式に振り替える手続で、

会社の債務を減らしたい場面で利用することが多いと思います。

 

 

現物出資をする場合は、現金出資の場合と異なり、

その価値が客観的に分かりづらいため、

原則として、「検査役」を選任して調査してもらう必要があります。

 

ところが、検査役の関係する手続は手間と費用が大きいので、

会社側としては、できることなら省略したいですよね。

 

ということで、以下のA~E場合には、

「検査役による手続は省略できる」と定められています。

(会社法第207条9項)

 

A:引受人に割り当てる株式の総数が、直前の発行済株式総数の10分の1以下である場合 

 

B:現物出資財産につき、設立時定款又は募集株式発行の募集事項の決定の際に定められた価額の総額が500万円以下である場合

 

C:市場価格のある有価証券につき募集事項の決定の際に定められた価額の総額が、①その決定日における最終市場価格(決定日に取引がない場合等にあっては、その後最初にされた売買取引の成立価格)又は、②公開買付等に係る契約における価格のうちいずれか高い額以下である場合

 

D:現物出資財産につき、設立時定款又は募集株式発行の募集事項の決定の際に定められた価額が相当であることについて、弁護士、公認会計士、税理士等の証明(不動産については、更に不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合

 

E:会社に対する弁済期到来済みの金銭債権につき募集事項の決定の際に定められた価額が、会社における負債の帳簿価額以下である場合

 

 

DESの場合、500万円以下なら省略可能なので、

500万円を超える場合に、DまたはEを検討する流れになります。

 

※商業登記法第56条の規定により、登記申請の際には、

 Dの場合には「税理士等が発行する証明書」及び「その附属書類」、

 Eの場合には「当該金銭債権の存在を確認できる会計帳簿」、

 を添付する必要があります。

 

※現物出資する債権の個数が多い場合や、

 借入と返済を繰り返していて債務状況が分かりにくい場合は、

 Dの証明書の発行を税理士さんにお願いするケースが多いです。

 

 

 

先日、税理士作成の証明書を添付して申請したところ、

「附属書類も添付して欲しい」と法務局から指摘を受けました。

 

この「附属書類」ですが、

実はこれまで一度も添付したことはありませんでしたし、

そのことを法務局から指摘されたこともありませんでした。

 

※たしかに条文には「附属書類」と書いてありますが、

 会計帳簿を添付できないから税理士の証明書を添付しているわけで…

 「附属書類」は附属書類がある場合の話だと考えていました。

 

 

法務局と相談した結果、

「債権者、貸付の日付、貸付金額が分かる元帳の”コピー”」

を添付することで決着したのですが、

 

当該債権が出資時に残っていたかどうかまでは疎明不要だそうで、

そうなると、これが本当に提出する必要があった資料かどうかは

やっぱり疑問に感じてしまいました。

 

 

司法書士としては、もともと、

現物出資する財産を特定するための情報は、

なんらかの資料で確認しているので、

 

もし、法務局から資料を求められた場合でも、

そこまで事務負担が増えるような話ではありませんが、

 

法務局に何をどこまで提出するかについては、

お客様に説明する必要が生じますので、

今後は気を付けようと思います。

 

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司法書士 黒川雅揮

司法書士黒川雅揮事務所HP⇒https://k-legal.jp/

 

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