●65年ぶりに相続税が改正された。
相続税とは、親が亡くなった時に、
その子供が親の財産を受け継ぐ時に係る税金だ。
その相続税のルールが去年12月、65年ぶりに変わったのである。
そのルールを知るには、
まず、今の相続税のルールを知っておく必要がある。
まず、相続税の大原則を言うと、
夫が死んだ場合、妻が1人だけなら、
3600万円までは、非課税である。
つまり、夫の財産が3600万円以下なら、
相続税を払う心配は無い。
次に、夫が死んだ場合、妻と子供なら、
相続人(子供)が1人増えるので、
非課税枠に600万円たされ、
3600万円+600万円=4200万円までが非課税となる。
つまり、夫の財産が4200万円以下なら、
相続税を払う心配は無い。
次に、夫が死んだ場合、妻と子供が2人なら、
相続人(子供)が2人増えるので、
非課税枠に600万円X2がたされ、
3600万円+1200万円=4800万円までが非課税となる。
つまり、夫の財産が4800万円以下なら、
相続税を払う心配は無い。
つまり、相続人が1人増えるごとに600万円非課税枠が増えるシステムだ。
ここまでは、夫や妻が亡くなった直後の相続であるが、
人が亡くなると、亡くなった後に発生する相続財産がある。
それを、みなし相続財産と言う。
みなし相続財産は、大きく2つある。
①■死亡生命保険金。 死亡した時におりる保険金だ。
②■死亡退職金(弔慰金)。死亡した時に勤めていた会社から出る退職金だ。
これにも相続税が係ってくるが、同時に非課税枠もある。
その非課税枠が、1人につき各500万円である。
例えば、
夫が死んだ場合、妻が1人だけなら、
3600万円までは、非課税である。ここまでは前回説明した。
これに、①■死亡生命保険金があれば、500万円分が非課税になり、
②■死亡退職金があれば、500万円が非課税になる。
つまり、この場合夫の財産3600万円+1000万円の4600万円分は
相続税を払う心配は無い。
夫が死んだ場合、妻と子供1人なら、
相続人(子供)が1人増えるので、非課税枠に600万円たされ、
3600万円+600万円=4200万円までが非課税となる。
これに、①■死亡生命保険金があれば、
500万円X2人分の1000万円が非課税になり、
②■死亡退職金があれば、500万円X2人分の1000万円が非課税になる。
つまり、この場合夫の財産3600万円+2000万円の5600万円分は
相続税を払う心配は無い。
つまり、相続人が1人増えるごとに①■死亡生命保険金。500万円、
②■死亡退職金。500万円の合計1000万円非課税枠が増えるシステムだ。
と、ここまでが相続税の基礎控除である。
もし貴方が配偶者の場合、配偶者控除(正式名は配偶者の税額軽減)を選択でき、
その場合、配偶者が相続した財産のうち課税対象となるものの額が、
1億6,000万円(もしくは法定相続分)までであれば、
配偶者に相続税が課税されない。
実は、ここまでは、今回の改正では変わらない。今まで通りだ。
では、相続税のルールのどこが今回変わったかと言うと、
生前贈与の部分である。
財産が多いと、相続税を払いたくないから、
親が死ぬ前に、子供に財産分与する事がある。これを生前贈与と言う。
なぜなら、毎年子供に110万円贈与する分には税金がかからないのだ。
子供が5人なら、毎年550万贈与すれば、かなりの節税になる。
10年で5500万円も税金を払わず贈与出来るからだ。
国は、ここに目をつけた訳である。
実は、今までも、この生前贈与の悪用を規制してきた。
悪用とは、どういう事かと言うと、
例えば、夫が交通事故で即死したとしよう。
その場合、交通事故で即死したので、もう手の打ちようが無い。
しかし、病死の場合はどうだろうか?
明日が峠とか、もう2日もつかもたないか。と、
夫の死期が近づいているのが分かる事がある。
その場合、急いで110万円生前贈与の手続きをすれば、
遺産相続から110万円分、節税出来ると考えるだろう。
今日明日じゃなく、人によってはガンになり、
余命3年という言われる場合もあるだろう。
その場合、急いで3年間110万円づつ生前贈与の手続きをすれば、
遺産相続から330万円分、節税出来ると考えるだろう。
国は、それを生前贈与制度の悪用と考え、こういうルールを作った。
それは、
夫が亡くなった日から3年前をさかのぼった生前贈与は認めない。
つまり、3年前までの生前贈与は、遺産相続財産に足され、
合計した金額に相続税をかける。としたのである。
さて、そこで今回のルール改正はどこかと言うと、
その3年を7年にしたのである。
つまり、7年前までの生前贈与は、遺産相続財産に足され、
合計した金額に相続税をかける。としたの今回の改正である。
(ただし、延長した4年分については総額100万円まで相続財産に加算しない)
最後に、
知っておくと良いという3つの特例をご紹介して終わりにします。
①■未成年者の税額控除。
これは、相続人が未成年者の場合、
その人が満20歳になるまでの年数×10万円が非課税になる。
例えば、相続開始の日に未成年者が10歳である場合、
20歳までは10年ありますから、
10年×10万円で100万円が非課税となります。
②■障害者の税額控除。
これは、相続人が障害者の場合、
その人が満85歳になるまでの年数×10万円が非課税になる。
例えば、相続開始の日に障害者が35歳である場合、
85歳までは50年ありますから、
50年×10万円で500万円が非課税となります。
(特別障害者の場合は、年数×20万円が非課税になる。)
③■相次相続控除。(そうじそうぞくこうじょ)
これは、一次相続と二次相続が相次いで発生した時の控除です。
法律書を読むとそんな様な感じで書いてありますが、難しいですよね。
簡単に説明すると、
例えば、貴方のお祖父さんが亡くなりました。
そこで貴方のお父様が、5億円の遺産を相続したとしましょう。
当然、1億円以上の相続税を払った事でしょう。
ところが、遺産を相続したばかりの貴方のお父様が、
お祖父さんを追う様にすぐに亡くなりました。
貴方はお父さんの遺産をもらう訳ですが、
よく考えてみると、お祖父さんが亡くなった時に1億円の相続税を払って、
また父親の遺産相続ですぐに多額の相続税を払わないといけません。
これって、なんか理不尽ですよね。
そこで、相次相続控除の制度が設けられたのです。
つまり、最初の相続から10年以内にまた相続が発生したら、
1年につき10%の税金を控除してくれるのです。
私の友人は、この制度を利用したら、
相続税が1500万円も通常よりも安くなったそうですよ。
知っていると、得ですよね。
ただし、
相続税の申告期限は死亡の翌日から10カ月以内と意外に早いの注意しましょう。
END